[FT]米施設火災とロシア供給削減、二重苦の欧州ガス調達

[FT]米施設火災とロシア供給削減、二重苦の欧州ガス調達
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB160T10W2A610C2000000/

『欧州の天然ガスの調達が14日にダブルパンチに見舞われた。米テキサス州の液化天然ガス(LNG)プラント「フリーポート」が少なくとも3カ月間の稼働停止を発表したのに加え、ロシアがドイツ向けの天然ガスの供給量を減らすと表明したためだ。

煙をあげる米テキサスの大規模LNGプラント「フリーポート」=ロイター

フリーポートを運営する米フリーポートLNG社が取り扱うLNGは、米国のLNG輸出量の約2割、欧州の輸入量の約1割を占める。同社は14日、8日の爆発および火災で破損した設備の修理が2022年末までかかる可能性があり、90日後に部分的な稼働再開を予定していると発表した。先週の段階では7月上旬の稼働再開を示唆していた。

同じく14日、ロシア国営ガスプロムはバルト海底経由でドイツに天然ガスを送るパイプライン「ノルドストリーム」の供給量を約4割減らすと発表した。ガスプロムはドイツ重電大手シーメンス・エナジーによる設備の重要部品の修理が遅れているためだと説明しているが、シーメンスによればカナダ政府の対ロシア制裁によって部品の供給ができなくなったという。

あらわになった欧州の脆弱性

ロシアがウクライナ侵攻を開始した2月以降、欧州はロシア産天然ガスへの依存を減らそうとしている。そのさなかに欧州の天然ガス輸入を襲った二重の衝撃は、供給の混乱に対する欧州の脆弱性を浮き彫りにした。

欧州で指標となる天然ガス相場は15%以上上昇して1メガワット時当たり99ユーロ(約1万4000円)、英国の天然ガス相場(7月渡し)は25%急騰して1サーム(約29.3キロワット時に相当)当たり1.97ポンド(約320円)をつけた。今後数カ月は供給が厳しくなるとみられたためだ。

一方、米国の天然ガス先物は火災の報道を受けて15%以上下落し、米国のガス価格指標「ヘンリーハブ」先物の期近物は100万BTU(英国熱量単位)当たり約7.20ドル(約970円)となった。主要な供給元であるフリーポートからの供給停止が想定より長引く点が考慮された。

ロシアが侵攻前から天然ガスの供給を絞り始め、供給の混乱への懸念が高まったことで、欧州の天然ガス価格は21年に急騰し、多くの国でインフレや生活費上昇の危機を引き起こした。

欧州連合(EU)はロシア依存の軽減を図る一方で、侵攻前は調達量の4割を占めていたロシア産天然ガスを直接の制裁対象としないようにしてきた。
カナダの対ロシア制裁がネックに

ところが、ドイツのシーメンス・エナジーは14日、ノルドストリームでガスを圧縮するのに使われるタービンをカナダのモントリオールにある工場で修理したものの、カナダ政府の制裁措置によりロシアのガスプロムに供給することができなくなったと表明した。カナダ政府は8日、ロシアに対する制裁措置を拡大し、新たにロシアの石油、天然ガス、化学の各産業に対する技術的サービスの提供を禁止していた。

シーメンス・エナジーは「カナダが科した制裁措置により、シーメンス・エナジーは現在、整備したガスタービンを顧客に届けることができない」と発表した。「当社はカナダとドイツの両政府に情報を提供し、実現可能な解決策に取り組んでいる」

急騰した欧州の天然ガス価格は、タンカー輸送によるLNGの追加調達でここ数カ月は一旦安定を取り戻していた。そのため天然ガスの備蓄量も冬に備えて再び増えていた。

フリーポートは当初、火災が発生したプラントの稼働を3週間停止すると発表していた。フリーポートの天然ガスの生産能力は年間204億立方メートルで、米国全体の液化能力である年1180億立方メートルの約17%、米国全体の天然ガス生産能力の2%を占める。
米国からの追加供給で合意したが

米国のバイデン大統領とEUのフォンデアライエン欧州委員長が3月に発表した合意の下で、米国は22年に150億立方メートルの天然ガスをEUに追加供給すると約束した。EUは30年までに米国産LNGの年間調達量を500億立方メートル増やすことを目指すと表明した。

天然ガスはタンカーに載せて世界各地に輸送する前に液化する必要がある。

ガスプロムは欧州向けの輸出の大部分を継続しているが、ポーランドとブルガリアが新たなルーブル決済の仕組みの利用を拒否したため、両国の顧客への供給を停止した。他の欧州諸国と同じくドイツの公共サービスは、供給停止による経済の影響を恐れ、ルーブル決済を受け入れている。

ドイツ政府は14日、4月に傘下に収めたガスプロムの元ドイツ子会社、ガスプロム・ゲルマニアに対し、最大100億ユーロの救済を行うことも明らかにした。同政府は「(ドイツの)エネルギー安全保障の危機を防ぐ」ために、貯蔵施設を運営し、ガス供給会社、ウィンガスの子会社を通じてガスを供給する部門に資金を提供する必要があるとしている。

By David Sheppard, Derek Brower and Joe Miller

(2022年6月14日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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