メキシコでホテル投資1兆円、ヒルトンなど需要増にらむ

メキシコでホテル投資1兆円、ヒルトンなど需要増にらむ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN240Q70U2A520C2000000/

『メキシコでホテル各社が積極投資に乗り出している。メキシコ観光省によると、2月末時点で計画されている観光事業の投資総額は2155億ペソ(約1兆4000億円)にのぼり、そのうち76%をホテル関連が占める。新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んだ観光産業は回復傾向にあり、国内外のホテル事業者が膨らむ需要をつかもうと備えている。

4月の稼働率80%超

2022年に入り、開発の動きが顕著だ。米ヒルトン・ワールドワイド・ホールディングスは22年にメキシコで15軒のホテルを建設する予定だ。メキシコのホテル大手グルポ・ポサダスは23年ごろまでに国内に21軒のホテルを開業する。米ハードロック・インターナショナルなどもホテルの新規計画を発表しており、環境当局の認可を待っている。

特に需要拡大が見込まれるのがリゾート地カンクンがある南東部キンタナロー州だ。地元紙によると、カンクンのホテルゾーンでは客室数が計2947室、投資総額4億5000万ドル(約600億円)の新規開発案件が進んでいる。ビーチリゾートのリビエラマヤでは22年度にヒルトンなどが手掛ける3軒のホテルが開業する予定だ。

ホテルの稼働率は回復している。カンクンとリビエラマヤのホテルの稼働率は21年12月がいずれも76%と、前年同月比でそれぞれ29ポイント、46ポイント高まった。米国などから多くの観光客が訪れた4月はいずれも稼働率は80%を超えた。
外国人観光客の収入、今年3兆円超

背景にあるのはインバウンドを中心とした観光需要の回復だ。メキシコ観光省によると、22年1~3月にメキシコに入国した外国人旅行者数は1493万人と前年同期比で3割増えた。19年1~3月(2460万人)比では6割の水準にとどまるが、回復は鮮明だ。

メキシコは新型コロナ禍でも隔離などの入国制限を設けていなかった。それでもメキシコ国内での感染者数の増加と各国の規制強化を受け、メキシコを訪れる外国人の数は大幅に落ち込んでいた。メキシコを訪れる外国人観光客がもたらす収入は22年に246億ドル(約3兆3000億円)とコロナ前の19年の水準を上回る見通しだ。

メキシコの観光業界では雇用も回復しつつある。メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)によると、飲食・宿泊業での就業者数は22年1~3月期に約434万人と前年同期比で15%増えた。地元紙によると、キンタナロー州では新型コロナ禍で約10万人が仕事を失ったが、すでに93%の雇用が回復しているという。

観光業の回復はメキシコ経済に恩恵をもたらしている。INEGIによると、1~3月期の実質国内総生産(GDP)の確定値は、前四半期比で1%増となった。分野別では文化イベントなどの娯楽業界が前年同期比で63%増、宿泊・飲食業界が同43%増だった。観光省によると、観光関連のGDPは21年10~12月に前年同期比で19%増えた。

地元紙によると、レジャー施設運営のグルポ・シカレは19年に約9000人だった従業員数を22年に約1万3000人に増やした。同社が運営するホテルの稼働率は足元で約90%とコロナ前の19年の水準を上回っているという。シカレは観光需要増を見込み、新たにカンクンの離島での体験プランを提供する方針だ。
国内需要は回復鈍く

メキシコ政府も南東部での観光業を後押ししている。ロペスオブラドール大統領は肝煎り政策としてカンクンを起点とした観光鉄道「トレン・マヤ」の建設を進めており、23年末までの完成をめざしている。現在は車でしか移動できない広大なユカタン半島の観光名所を公共交通機関でつなぎたい考えだ。

「トレン・マヤによってユカタン州の(観光業の)条件は改善するだろう」。ユカタン州のマウリシオ・ビラ知事は地元紙の取材に対してこう述べた。トレン・マヤは投資に見合う利用が見込めないと疑問視する声も国内からあがっているが、地元政府としては歓迎する姿勢を示した。

課題は国内需要の回復だ。INEGIによると、国内の観光消費額は21年10~12月に前年同期比で9%増にとどまり、2倍に増えたインバウンド消費に比べて回復のペースが大幅に遅れている。メキシコの観光消費額のうち8割は国内消費が占める。メキシコの観光業が力強さを取り戻すには、国内需要の回復が欠かせない。

(メキシコシティ=清水孝輔)』