アフリカ開発、多国間主義で アフナ・エザコンワ氏

アフリカ開発、多国間主義で アフナ・エザコンワ氏
国連開発計画(UNDP)総裁補兼アフリカ地域局長
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD0768R0X00C22A6000000/

『8月に開催される第8回アフリカ開発会議(TICAD8)は多国間主義の重要性を改めて示し、国際社会の連帯を重ねて表明する貴重な機会となるだろう。TICADは日本とアフリカ各国だけではなく、国連や国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アフリカ連合(AU)委員会が共同で開催するユニークな枠組みだ。ウクライナの戦闘が直ちにガンビアの日常生活に影響を及ぼす時代であるがゆえに、多国間主義でアフリカ開発を推進しなければならない。
 Ahunna Eziakonwa ナイジェリア出身。国連ではエチオピアやウガンダなどの常駐調整官を歴任。2018年から現職。

TICADが初めて開催された1990年代のアフリカは(国際社会にとって)援助の対象でしかなかったが、もはやチャリティーの場所ではなく、真剣にビジネスを展開する場所に変わりつつある。かつての日本や韓国もそうだったが、経済発展のある時期には国際支援が欠かせないし、そうした援助が永久に続くというわけでもない。アフリカはビジネスパートナーとしてみなされるべきで、TICADでそれを国際社会に訴えてほしい。アフリカを植民地にした歴史がない日本だからこそ果たせる役割だと思う。

アフリカ経済は海外に大きく依存している。新型コロナウイルスの感染拡大による影響をみて私自身も驚いた。世界中に資源や原材料を供給しながら、その一方で医薬品やワクチンは輸入に頼り切っており、自分たちが食べる食料さえ満足に生産できていない。

ロシアによるウクライナ侵攻でアフリカ経済の脆弱性はさらに増している。実に15カ国以上が小麦の輸入の半分以上をロシアとウクライナに依存し、全54カ国の半数近くが小麦の3分の1以上を輸入しているためだ。供給制約と急激な物価上昇で、このままだとアフリカは再び飢餓と貧困に直面するだろう。

近年のアフリカ各地での干ばつや洪水も農業に深刻な打撃を与えている。アフリカの温暖化ガスの排出量は世界全体の4%未満だが、気候変動による悪影響は不釣り合いなほどに大きい。もともと農業の近代化が遅れ、生産性も極めて低い。日本の優れた技術を導入できれば、農業生産の可能性は大幅に高まると思う。

いま最も注目してほしいのはアフリカの若者たちと彼らのデジタルビジネスだ。アフリカは人口の約60%が25歳以下で、デジタル技術の活用に優れている。社会のニーズを把握し、デジタル技術を使って課題を解決し、そこに自分たちの可能性を見いだそうとしているのが特徴だ。アフリカの(貧困や感染症、気候変動などの)社会課題は世界が抱える問題でもある。イノベーションの発信基地になるだろう。

若い起業家たちには才能はあるが(スタートアップ支援の)エコシステムが必要だし、創業初期段階のリスクマネーも要る。UNDPはトニー・エルメル財団と提携して、起業家に最大5000ドル(約67万5000円)の資金を拠出するほか、ビジネストレーニングや市場開拓のためのネットワーキングの機会を提供するプログラムを運営している。

投資資金ばかりではなく、テクノロジーや技術力も必要になる。もし日本企業がアフリカのスタートアップとの連携を考えてくれたら、そこで奇跡が起きるだろう。アフリカの起業家は単にお金を稼ぎたいというのではなく、社会に対して新たな価値を提供しようとしている。起業家によるビジネスを創出し、自信を持って(日本企業などに)事業連携してもらうためにUNDPは役に立ちたい。

TICADは民間企業や市民社会など非政府アクター(主体)の価値観を認めている。90年代の国際会議から進化しなければならない。政府と企業が同じ部屋に入って、互いに連携しながら、新たな会話を始める必要がある。(談)

経済自立に支援を

13億人超の人口を抱えるアフリカは「最後の成長フロンティア」といわれる。その人口は2050年には25億人近くに増え、世界人口の25%を占める。しかも中央年齢は20歳未満と、日本の48歳に比べて圧倒的に若い。消費意欲が高い巨大市場としてのポテンシャルに注目が集まっている。

光が強ければ影もまた濃い。経済発展を伴わない人口の増加は新たな貧困や飢餓を生む。今でさえ若者の失業率は国によっては40%を超える。ロシアによるウクライナ侵攻で両国産の安価な小麦の輸入に頼るアフリカでは政情不安の懸念さえある。このままなら国際社会に求められる援助は将来的に増え続けるだろう。

アフリカ開発でしのぎを削ってきた日本と中国。インフラ開発と引き換えにアフリカに巨額の債務を抱えさせ、影響力を強める中国のやり方に持続性はあるまい。ならば日本にはアフリカに経済的な自立を促すための支援が求められる。日本企業によるスタートアップ投資をサポートするなど、TICADのあり方を再考する時期ではないか。(編集委員 下田敏)』