米株急落、個人投資家を襲う三重苦(NY特急便)

米株急落、個人投資家を襲う三重苦(NY特急便)
米州総局 野村優子
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN13CZN0T10C22A6000000/

『13日の米国株式市場でダウ工業株30種平均は急落した。下落幅は一時1000ドルを超え、終値は前週末比876ドル(3%)安の3万0516ドルだった。止まらないインフレに加え、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めを警戒した売りも膨らみ、米国株は「弱気相場」入り。こうした中、押し目買いに積極的だった個人投資家にもインフレ・株安・仮想通貨安の三重苦が襲い、下支えが期待できなくなるとの見方が出ている。

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13日のダウ平均は全面安の展開となり、前週からの4日間の下落幅は2600ドルを超えた。機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数は1月初旬につけた最高値からの下落率が2割を超え、「弱気相場」入りの水準となった。

「直近の大幅下落で、個人投資家がきびすを返している」。米証券ミラー・タバックのマシュー・マリー氏は個人の投資心理悪化を指摘した。「インフレが実際にガソリンや食品価格の高騰という形で自身の生活に影響を及ぼす中、個人は(物価高と景気後退が同時に進む)『スタグフレーション』への懸念を一層強めている。押し目買いに消極的になり、需給面でマイナスに働きそうだ」と話す。

個人投資家の買い意欲は、年初からの株価下落の中でも堅調だった。米調査会社バンダリサーチが5月下旬に公表したデータによると、2022年に入ってから個人投資家のポートフォリオは平均32%のマイナスで、8年前に調査を始めて以来最も悪化したという。それでも過去3カ月の1日あたり株式購入額は13億ドル(約1740億円)と過去最高水準で、押し目買いに積極的だった。しかし、こうした個人にも変化が出ているとの見方だ。

個人投資家の心理を冷やすのは、株安とインフレだけではない。個人が好んで売買してきた暗号資産(仮想通貨)の急落も追い打ちをかける。ニューヨーク市在住の30代の男性会社員は「株価下落時に買いを入れてきたが、その余力もなくなってきた。先月の急落時に買い増したビットコインも塩漬けとなりそうだ」と肩を落とす。

情報サイトのコインマーケットキャップによると、世界の仮想通貨の時価総額は13日に一時1兆ドルを割り込んだ。代表的な仮想通貨ビットコインも一時2万3000ドルを下回り、およそ1年半ぶりの安値をつけた。大手融資サービスのセルシウス・ネットワークや交換業大手バイナンスが、仮想通貨の出金や送金などの一時停止を発表したことが下落を後押しした。

米ブライトン証券のジョージ・コンボイ会長は「長期的にみれば一部仮想通貨の見通しは良好だが、しばらくは売りが売りを呼ぶ展開となり、一段と下落する可能性が高い。特に出金一時停止の動きは、個人投資家の信頼を損なうだろう」とみる。

米国株の売買高に占める個人投資家の割合は2割程度と、存在感が高まっていた個人だが、下支えはしばらく期待できなさそうだ。米オアンダのエドワード・モヤ氏は「インフレ圧力が続けば、個人が株に投じる自由な資金は少なくなっていく。押し目買いに動く個人は限られ、売り圧力の収束にはまだ時間がかかるだろう」と話していた。

(ニューヨーク=野村優子)』