海自インド太平洋派遣、最大級 4カ月半で12カ国・地域

海自インド太平洋派遣、最大級 4カ月半で12カ国・地域
中国を意識 ソロモン諸島を初訪問
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA074K00X00C22A6000000/

『海上自衛隊のインド太平洋地域を巡る長期の部隊派遣が13日に始まった。期間や訪問国、参加人数ともに過去最大規模になる。中国の海洋進出を意識し、米欧やインド、東南アジア諸国と共同訓練を予定する。中国と安全保障協定を結んだソロモン諸島も訪れる。

「Indo-Pacific Deployment(IPD)」と呼ぶ同じ枠組みの派遣は今回が6回目になる。当時の安倍晋三首相が「自由で開かれたインド太平洋」を提唱した翌年の2017年から毎年実施している。

岸田文雄首相は10日、シンガポールで開いたアジア安全保障会議(シャングリラ会合)の講演で「海洋秩序の実現に貢献するため、部隊を派遣する」と説明した。

6月13日~10月28日の138日間かけて護衛艦、潜水艦、航空機の各部隊がインド太平洋地域をまわる。98日間だった21年と比べ、期間を1カ月以上延ばす。

派遣人数はあわせて1000人ほどになる。護衛艦は事実上の空母に改修する「いずも」に加え、「たかなみ」「きりさめ」が参加する。潜水艦やP1哨戒機、US2救難機といった航空部隊も投入する。

インド太平洋はアジアの安保の要だ。日本はロシアのウクライナ侵攻を踏まえ、中国の力による一方的な現状変更の試みに結びつきかねないと警戒する。海自部隊が沿岸国をまわり、各国の海軍との信頼関係づくりを目指す。

岸信夫防衛相は12日、シンガポールで中国の魏鳳和国務委員兼国防相と会談した。日中防衛相の対面の協議は19年12月以来2年半ぶり。中国による南・東シナ海などでの「力を背景とした一方的な現状変更の試み」に懸念を伝えた。

大洋州のオーストラリア、ニュージーランド、フィジーとの防衛相会談にも臨んだ。「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化に向け、防衛交流の推進などを確かめた。

今回の派遣の訪問先は同じ枠組みで最も多い12カ国・地域を予定する。米国、豪州、インドの「Quad(クアッド)」構成国や、日本と安保協力を深める東南アジアのフィリピンとベトナムに行く。

太平洋島しょ国にも主眼を置く。ソロモン諸島、トンガやフィジー、バヌアツなど7カ国・地域に寄港する。過去の同じ枠組みでの派遣でこれらの国を訪れたことはほとんどない。

なかでもソロモン諸島は中国と安保協定を結んで注目を集めたばかりだ。海自がインド太平洋派遣で訪問するのは初めてとなる。

中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は5月、訪問先のフィジーで太平洋地域10カ国の外相とオンラインで協議した。安保協定の締結を提案したが合意には至らなかった。

中国は資金援助やインフラ支援を通じて太平洋・島しょ国への関与を強め、地域への影響力を高めようとしている。

海自が寄港するのは中国傾斜を引き留める働きかけの一環でもある。現地部隊の能力構築を支援し、日本と各国の関係を深める狙いがある。

同盟国の米国にもインド太平洋派遣としては初めて立ち寄る計画だ。

バイデン米大統領は5月のクアッド首脳会議で「米国はインド太平洋の大国だ」とあえて強調した。中国の海洋進出を警戒した発言とみられる。海自と米海軍で共同訓練して日米の抑止力や対処力を強化する。

海自は一連の航海中に複数の多国間演習などへの参加を予定する。

6月末からハワイ沖などで米海軍主催の「環太平洋合同演習(RIMPAC=リムパック)」がある。日米豪印や韓国、フィリピン、マレーシアなどが加わる。水陸両用作戦やミサイル発射、対潜水艦訓練に取り組む。

「Pacific Partnership(パシフィック・パートナーシップ)」にも参加する。米海軍などとともに各国と人道支援や医療活動で交流を図る。ベトナムとパラオを拠点に日米英が捜索・救難の方法を確かめる。

日米豪韓の共同訓練や豪海軍主催の訓練にも参加する。

元自衛艦隊司令官の香田洋二氏は今回の海自のような取り組みについて「海外では一般的に『海軍外交』という」と指摘する。「自衛隊が国の外交を軍事面で担う大きな役割がある」と語る。

「中国が東南アジアや太平洋諸国に出て行っている。日本にとってもこの地域は安保、経済で非常に大切だ。日ごろからこれらの国々と交流を密にすれば有事のときに役立つ」とも分析する。

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