「個人崇拝」加速、習氏69歳に 経済再建で李氏に脚光

「個人崇拝」加速、習氏69歳に 経済再建で李氏に脚光
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM135RY0T10C22A6000000/

『【北京=羽田野主】中国共産党の習近平(シー・ジンピン)総書記は15日、69歳になる。2022年秋に開く共産党幹部の人事を決める5年に1度の党大会で党トップとして3期目を目指す習氏をたたえる「個人崇拝」の動きが加速する。一方、減速する経済の立て直しを担い、李克強(リー・クォーチャン)首相が以前よりも目立つようになった。

中国国営の新華社通信は5月下旬から習氏の歩みを振り返るドキュメンタリーを連日配信している。第1回は、毛沢東が始め、中国全土が大混乱に陥った文化大革命の際に習氏が農村の貧しい生活に溶け込み、勉学に励んだエピソードを紹介した。

中国共産党の機関紙、人民日報は6月2日付1面で、習氏が12年に党トップの総書記に就任して以降、新型コロナウイルスや香港問題などの危機に対処した指導力を称賛する記事を掲載した。党大会に向け「実績」を誇示する狙いがあるとみられる。

官製メディアが習氏を礼賛し続けるのは、不安の裏返しでもある。新型コロナ対策としての上海のロックダウン(都市封鎖)を巡っては、強引な隔離の方法や生活物資を巡る当局の腐敗にも焦点が当たり、一部で党の対応を批判する声が上がった。

多くの中国人は中国メディアが旗を振る「個人崇拝」にそれほど関心が高くない。習氏はバイデン米大統領(79)よりは若いものの、日本、英国、ドイツ、フランスなど主要国の指導者に比べ高齢で、健康問題が浮上するリスクもある。

最近では経済政策の司令塔を担う李氏が、習氏の進めてきたIT(情報技術)企業の統制強化などを修正する動きをみせている。

李氏は5月、国務院(政府)が主催する形で全国規模のテレビ電話会議を開き、急減速する経済のてこ入れを指示した。地方政府幹部や担当者が出席した。10万人規模という異例の大人数が動員されたとの指摘もある。

習氏は党トップに就いた当初は権力基盤がいまほど盤石ではなく、共産党の青年組織、共産主義青年団(共青団)の勢力を抱える李氏を警戒していた。

共産党の腐敗を取り締まる党中央規律検査委員会が所管する雑誌「中国紀検監察」は6月号で、秦時代に宰相を務めた李斯と唐時代の宰相の李林甫が「貪欲」のあまりそれぞれの王朝を滅亡に導いたと批判する論文を掲載した。党内では「2人の李を引き合いに、最近露出の多い李氏が影響力を強めないようにクギを刺したのではないか」との見方がでている。

党大会を前に経済減速は習氏の政治的な失点になりかねない。ここで戦略的に譲歩し、李氏を「矢面」にすることで乗り切ろうとしているとの見方もある。経済が浮揚できれば習指導部の評価は高まる。

李氏は23年3月に首相職を退くことが憲法の規定で決まっている。香港の有力紙、明報は5月19日付で、李氏が首相退任後、中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)常務委員長に就く可能性を伝えた。「次期首相選びにも発言権を持つだろう」とも指摘した。

李氏は、同氏と同じ共青団出身の胡春華(フー・チュンホア)副首相らに近いといわれる。秋の党大会に向け、次期首相人事を巡り、習氏と李氏の駆け引きが激しくなるとの見方もある。』