米国防長官「台湾有事へ米軍の能力向上」 中国を抑止

米国防長官「台湾有事へ米軍の能力向上」 中国を抑止
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『【シンガポール=中村亮】オースティン米国防長官は11日、シンガポールで開催中のアジア安全保障会議(シャングリラ会合)で演説した。台湾有事の際を念頭に米軍の能力を向上する意向を表明した。中国との軍事衝突を避けるために対話も重視すると強調した。

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バイデン米大統領は5月、東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳をホワイトハウスに招き、日本と韓国を訪問してアジア重視を訴えてきた。首脳外交を踏まえ、オースティン氏は演説で包括的な安全保障政策を明示し、アジア各国と具体的な防衛協力を深めていく考えだ。

オースティン氏は台湾海峡の情勢について「リスクが特に大きい」と危機感を示した。中国が台湾に軍事的圧力を強めていることを念頭に「中国の行動はインド太平洋の安全や安定、繁栄を弱体化させている」と非難した。台湾について「この地域にとって、またこの地域を越えても重要だ」とも話し、台湾海峡の平和と安定が世界の利益であるとの見方を示唆した。

「台湾の人々の安全や社会、経済システムを危険にさらす武力行使や別の形の威圧行為に対抗する我々の能力を維持していく」と言明した。中国が台湾に侵攻した場合を想定し、米軍が対処する能力を向上する考えを示すものだ。

米軍の能力維持は米国で1979年に成立した台湾関係法に基づくものだが、オースティン氏はあえて言及して中国抑止を狙ったとみられる。バイデン氏は5月下旬、台湾有事の際、軍事的に関与すると明言した。オースティン氏は、バイデン氏の方針を実行に移す能力を身につける意向を示したと受け止めることもできる。

オースティン氏はロシアによるウクライナ侵攻について「我々を守ってきたルールを踏みにじるものだ」と糾弾した。「ルールに基づく国際秩序は欧州だけでなくインド太平洋でも重要だ」と訴えた。ウクライナ侵攻を容認すればアジアの安保秩序も揺らぐとの警鐘を鳴らす発言だ。

「インド太平洋地域は我々の戦略の中心だ」と強調し、ロシアによるウクライナ侵攻が続くなかでも中国対応を重視する立場を表明した。

南・東シナ海の現状に触れて「(中国は)領有権の主張について一段と威圧的かつ攻撃的なアプローチを採用している」と非難した。中国の軍用機がカナダやオーストラリアの軍用機の進行を相次いで妨害した事案について「我々すべてを懸念させるものだ」と断じた。

オースティン氏は「大国は大きな責任を負っている」と指摘。「責任ある形で緊張を管理し、紛争を防ぎ、平和と繁栄を探求するために我々は我々の役割を果たす」と話し、中国にも責任ある行動を求めた。「衝突や紛争を求めない」とも訴え、軍同士の対話を充実させるべきだとの立場に触れた。

北朝鮮については「攻撃を抑止し、(日本や韓国防衛といった)条約に基づく約束などを守る用意がある」と訴えた。日米韓の協力を深めていくと言明し「核兵器や弾道ミサイルに対する拡大抑止を強化していく」と断言した。

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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
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分析・考察

オースチン国防長官は、昨年もシンガポールで講演をしていますが、今回の演説の最大のターゲットは、当然のことながら、東南アジア諸国でしょう。南シナ海などで中国が圧倒的な軍事力や経済力により、相対的に小さい東南アジア諸国の利益を踏みにじらないように、米国は地域の安全保障に関与し続けるというメッセージです。これまでの米国の東南アジアへの関与姿勢は、一貫しておらず、地域からの信頼も高くないというのが実態ですので、今後、米国が経済でのIPEF(インド太平洋経済枠組み)とともに、どれだけ言行一致させていくかが、地域の安定のカギになると思います。
2022年6月11日 12:00

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