「新しい資本主義」 市場に配慮、かすむ岸田色

「新しい資本主義」 市場に配慮、かすむ岸田色
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0650T0W2A600C2000000/

 ※ そういう「内政事情」ばかり言っていて、大丈夫なのか…。

 ※ 「国際情勢」は、「激変中」だと思うのだが…。

 ※ まあ、参院選終わるまでは、そういう感じで行くんだろうな…。

『岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」の実行計画が7日に決まった。自ら率いる岸田派の議員と5年前から練り続けた構想を結実させた。公共や公益、格差是正、分配を重視する姿勢と、成長や市場への目配りの狭間(はざま)で計画づくりは難航した。

柱が固まったのは5月5日、英国・ロンドンの金融街シティーでの講演だ。首相は「マーケットの声、現場の声をよく聞き政策を進めていく」と宣言した。

原稿は木原誠二官房副長官が書いた。2021年秋の政権発足前から長く岸田氏の政策や演説をつくってきた最側近だ。木原氏は事前に野村証券やJPモルガン証券、みずほ証券で講演し、金融所得課税の強化について質問を受け「考えていません」と答えていた。

金融所得課税は20年の岸田氏の著書の第1章冒頭、21年秋の自民党総裁選公約のそれぞれに記載している。格差是正に力点を置く岸田氏の「一丁目一番地」とみられていた。

投資家や市場は嫌がる政策だった。政権発足後は日経平均が下がり「岸田ショック」と呼ばれた。ウクライナ侵攻や物価高も重なり、その後も相場は力強さを欠く。夏は参院選だ。その前に市場の不安を解消したい。切迫感がシティー講演につながった。

「新しい資本主義」の原点は17年、宏池会(岸田派)創設60周年のイベントにさかのぼる。政策パンフレット「K-WISH」を公表した。「kindな政治、 warmな経済、inclusive(包括的)な社会……」と続く標語の頭文字からとった。ほぼ岸田、木原両氏でつくった。

その場には渋沢健・コモンズ投信会長も招いた。高祖父・渋沢栄一の合本主義をひき、社会全体の利益を重視するステークホルダー資本主義を唱える人物だ。今回の実行計画をつくった政府の会議にも入っている。

当時、木原氏らは総裁選のキャッチフレーズを岸田氏に提案した。「合本資本主義、公益・公共資本主義、持続可能な資本主義、誰一人取り残さない資本主義」と列挙した。

「特定の考え方を正解と押しつけるのは良くない。新しい資本主義がいいな」。こう話したのは岸田氏自身だ。多様な概念を包摂するために「新しい」と冠をつけた判断が後々まで響く。

20年の総裁選はベテランも含む派閥全体で「分断から協調へ」を掲げて戦った。政策がみえにくい言葉は菅義偉氏が訴えた「アベノミクスの継承」に敗れた。

永田町も霞が関も「首相の目は乏しい」とみるようになった。起死回生を期す岸田氏は側近を頼みにし、独自色を前面に出す戦略を選んだ。

木原氏のほかに加わったのはいま首相補佐官の村井英樹、デジタル副大臣の小林史明の両氏だ。21年総裁選は「岸田色」を追求して「新しい資本主義」を前面に出して勝利した。

木原、村井両氏は元財務官僚で小林氏はNTTドコモ出身だ。木原氏は1999~2001年に英大蔵省に出向し、ブレア英首相の「第三の道」に触れた。「市場重視の新自由主義」と「国家による福祉充実」の対立を越える構想は岸田政権につながる。

難題もあった。「新しい資本主義」は従来の資本主義の否定にも映る。12~20年の安倍晋三首相が進めたアベノミクスも乗り越える対象かとも受け止められる。

「新しい資本主義は『分配』のメッセージが多過ぎだった。市場から『社会主義じゃないか』と批判があった」。安倍氏も7日、周囲にこう漏らしている。

党の実力者・安倍氏を否定すれば支持は限定される。大規模な金融緩和・財政出動で潤った市場も警戒する。アベノミクスの継承や市場の声との狭間で悩んだ結果がシティー講演になった。

計画をまとめる会議は渋沢氏のほか、柳川範之東大教授、経団連や連合のトップが入った。霞が関では新原浩朗内閣審議官らが動いた。

新原氏らはノーベル経済学賞のジャン・ティロール氏ら人的資本やステークホルダーの重要性を説く学者を参考にした。成長路線にもつながる「人への投資」は目玉になった。

「新しい資本主義はもちろん資本主義である」。実行計画にはわざわざこんな文言が入った。最後まで市場や世間の懸念にとらわれた証しだ。

「新しい資本主義」は当初「市場の機能や競争が過剰なことの弊害」を強調する側面が目立った。経済界などからは「規制緩和や競争が十分でない弊害が大きい」と真逆の見方がでている。

首相はひとまず軌道修正した。それでも「分配偏重になるのでは」「本当に雇用改革をするのか」と疑念は残る。市場や経済界は注視し続けている。

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竹中治堅
政策研究大学院大学 教授
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分析・考察

「新しい資本主義」のもとで岸田政権は規制緩和による競争促進よりも、国家が科学技術開発投資を主導することや、経済安全保障を確保することを重視する。背景には日本の所得水準や科学技術力の低下への政権の強い危機感がある。「規制緩和や競争が十分でない弊害が大きい」」という見方が経済界にはあるという。これに対し、政権は経済界に対し投資も賃金も十分増やさず内部留保だけを増やしてきた考えているのが実情だ。一連の政策には政治的要素もあるだろう。宏池会は、小泉政権が展開した新自由主義的政策のもとで、2005年の総選挙で派閥会長が自民党を追い出されるという憂き目にあっていることにも留意する必要がある。
2022年6月12日 2:09 (2022年6月12日 2:13更新) 』