[FT]コンゴ初訪問のベルギー国王、植民地統治に遺憾表明

[FT]コンゴ初訪問のベルギー国王、植民地統治に遺憾表明
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『ベルギーのフィリップ国王は同国の植民地だったコンゴ民主共和国を初めて訪問し、「過去の傷に対して深い遺憾」を表した。
6月7日、コンゴのキンシャサ国際空港で開かれた歓迎式典に参加するベルギーのフィリップ国王(中央)、マチルド王妃(左)とチセケディ・コンゴ大統領(右)=ロイター

ベルギーがコンゴを植民地支配していた数十年の間には数百万人が強制労働を強いられ、犠牲となった。首都キンシャサで行われた国王の演説では、植民地時代の残虐な支配に対する正式な謝罪はなかった。

フィリップ国王はコンゴのチセケディ大統領の前で次のように述べた。「植民地時代の統治は搾取と支配によって成り立っていた。不平等な関係に基づく統治であり、それ自体、正当化できるものではない。パターナリズム(家父長的な干渉主義)、差別、人種主義も顕著だった。この統治は屈辱をもたらした」

「私はコンゴの初訪問に際してここに立ち、コンゴの皆さん、そして今も苦しんでいる方々の前で、過去の傷に対して深い遺憾の念を改めて表明したい」

過去に痛惜の念を表する書簡を送っていたフィリップ国王は7日、マチルド王妃、デクロー首相とともにキンシャサに到着した。2013年に即位して以来、コンゴ訪問は初めてとなる。
レオポルド2世が私領地化

ベルギー国王だったレオポルド2世は1885年から1908年にかけてコンゴを私領地として支配し、天然ゴムや鉱物資源の利権を搾取した。そのなかで、数百万人のコンゴ人が死亡したとされる。

コンゴは1960年に独立を果たした。20年に、米国で黒人男性のジョージ・フロイドさんが警官に殺害された事件をきっかけに世界的に反人種差別運動が高まるなかで、ベルギーでもレオポルド2世の銅像が標的になった。

その後まもなくして、ベルギー議会はレオポルド2世の私領地とその後のベルギー植民地時代のコンゴ搾取の実態を調査する委員会を設置した。同じ年、コンゴ独立後の初代首相ルムンバ氏の遺体の一部で唯一残っている歯を遺族に返還する裁定が下された。ルムンバ氏は61年、ベルギー政府関係者の前でカタンガ州の分離独立派に暗殺された。その前には、米中央情報局(CIA)が後ろ盾となったクーデターが起きていた。ルムンバ氏の歯は6月中にコンゴに到着する予定だ。

デクロー首相はキンシャサで「両国の間の長い歴史のなかで、コンゴの方々にとってつらく、苦しい時期があったことは皆が承知している」と語った。「その事実から目をそむけず直視することが重要だ」

コンゴのパトリック・ムヤヤ政府報道官はフィナンシャル・タイムズ(FT)に対し、正式な謝罪はなかったが、「我々にとって、(ベルギー)国王の訪問はこれからベルギーと築いていく新しい関係の象徴だ。つらく、苦しい過去の認識に基づく関係となる」と語った。

歴史的遺物の返還をめぐって世界に議論が広がるなか、フィリップ国王はコンゴの伝統的仮面「カクーング」を「無期限貸与品」としてコンゴの国立博物館に手渡した。

ベルギーにある王立中央アフリカ博物館のグイド・グリシールズ館長は「(コンゴの博物館には)この種の仮面が収蔵されていないため、非常に重要な品となる」と述べた。王立中央アフリカ博物館には、コンゴに関する収蔵品が約8万4000点ある。グリシールズ氏によると、この仮面は歴史的遺物の返還を認める法が整備されるまで「貸与」扱いとなる。

ベルギー人とコンゴ人の血を引く活動家のアン・ウェッツィ・ムポマ氏はキュレーターでもあり、返還への取り組みに関わっている。同氏にとって、これは始まりにすぎない。「道徳的、倫理的な観点に立てば、返還プロセスは完全に合法であり、ベルギーが返還しなければならないことは明らかだ。今回の返還は返還プロセスの一部となるべきものだ」と同氏は言う。

コンゴでは、フィリップ国王の演説が大きな一歩だと評価する声が上がる一方で、正式な謝罪を求める声もある。コンゴ人とベルギー人のハーフの活動家モナ・ペンベレ氏は「素晴らしい演説だ。悔恨の念を表し、植民地化に絡む過ちと、今日も人種差別のかたちで残るその影響を認めている」と評した。だが同時に、「本当に平等な関係をスタートさせたい、やり直したいと望むなら、まず謝罪が必要だ」と述べた。

(2022年6月9日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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