国連、拒否権行使の説明求め初会合 中ロは正当化安保理の北朝鮮制裁廃案で

国連、拒否権行使の説明求め初会合 中ロは正当化
安保理の北朝鮮制裁廃案で
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『【ニューヨーク=白岩ひおな】国連総会は8日、安保理で拒否権を行使した国に理由の説明を求める初めての会合を開いた。5月下旬、弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮への制裁決議案が中国とロシアの拒否権発動で否決されたことを受けた措置だ。会合に出席した中ロ両国は制裁への反対を改めて主張し、拒否権行使を正当化した。

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会合は、加盟国による監視を強めて拒否権の乱用を抑制する狙いで、4月に採択された総会決議に基づいて初めて招集された。決議は安保理で米英仏中ロの常任理事国5カ国に与えられている拒否権が発動された場合、10日以内に国連総会を招集し、行使した国に出席と理由の説明を求める内容だ。

ロシアのエフスティグニエワ次席大使は「北朝鮮の問題に真剣に取り組む者はみな、度重なる制裁や新たな軍事ブロックの脅威のなかで北朝鮮が無条件に武装解除することを期待しても無駄だと理解している」と主張した。「米国をはじめ西側諸国は危機に対し、最も極端で微調整が求められる制裁以外の策を持っていない」と批判した。

総会での説明は義務ではないが、中ロは両国とも出席し、改めて自国の立場を強調した。中国の張軍国連大使は「朝鮮半島情勢の緊迫は行ったり来たりする米国の政策の結果だ」と非難。「対話の成果を守らず、北朝鮮の合理的な懸念を無視したことに起因している」と語った。
日本の小田原潔外務副大臣は北朝鮮の弾道ミサイル連射に触れ「地域への脅威が高まっている」と語った(8日、ニューヨークの国連本部)

日本の小田原潔・外務副大臣は「北朝鮮は安保理の強い反応がないのをいいことに、核・ミサイル開発を加速させ続けている」と指摘。「隣国の弾道ミサイルが自国の海岸線からわずか150キロメートルに落ち、領土上空を通過するのを想像してほしい。それが私たちに起こったことだ」と述べ、行動を呼びかけた。

北朝鮮は5日、8発の短距離弾道ミサイルを日本海に連射したばかりだ。北朝鮮の金星大使は「安保理で北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を議論するなら、北朝鮮を直接脅かしている米国の合同軍事演習をなぜ安保理で審議しないのか」と反論した。

安保理では5月26日、原油供給上限の削減や、北朝鮮が資金源とするサイバー攻撃に関わるグループの資産凍結などを盛り込んだ制裁決議案が廃案となった。理事国15カ国のうち13カ国が賛成したが、中ロが反対した。両国は制裁は問題解決につながらないとして、一貫して措置の緩和を求めてきた。

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詫摩佳代
東京都立大学 法学部教授
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分析・考察

安保理改革が現実的に難しい中でも、常任理事国の特権を黙認するのではなく、説明責任を求めるという動きは、変化に向けた一歩と評価できるかもしれません。他方で、出席の義務もありませんし、説明したからといって、拒否権の行使になんらかの制限がかかるわけでもなく、国連の制裁機能を改良する上でどこまで効果的かは未知数です。説明させることで、立場の違いや分断の大きさを再確認する場になる可能性がありますが、逆に、連帯を確認する場にもなり得ます。国連総会のこうした限界と可能性を踏まえた上で、効果的に活用していきたいものです。
2022年6月9日 8:13

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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

安保理での拒否権の行使を総会で説明させるということは、拒否権行使を制限する効果には結びつかないのは、この一件からもわかる。しかし、総会の場で説明することで、その論理を明らかにし、国際社会においてそれが受け入れられるかどうかの判断をゆだねるという意味では、安保理の投票前後での投票理由説明よりはフォーマルなものだと言えるだろう。こうした説明が道義的、道徳的な制約となって効いてくればよいが、国際社会はそこまで成熟しているわけではない。また、世界には様々な価値観があり、しばしば途上国は中露と同調することもある。
2022年6月9日 18:38

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川島真
東京大学大学院総合文化研究科 教授
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分析・考察

中国は国連外交を重視し、(独自の解釈で)国連憲章を外交の基礎に据えている。総会では途上国の支持を得て多数を取れ、安保理では拒否権があるからでもある。だが、ロシアのウクライナ侵略に関する国連総会決議案の結果は中国に衝撃だったろう。アメリカなどの提案が多数の賛成を得たからだ。国連も中国の安全圏ではない。他方、この決議案で中国は反対せずに棄権し、ロシアと一線を画した。だが、人権委員会からのロシアの排除については明確に反対した。主権侵害についてはロシアと一線を画しつつも、可能な限りロシアには寄り添いたいのだ。アメリカとの対抗軸と、可能な限りロシアに寄り添いたい。その姿勢の結果がこの記事の内容だろう。
2022年6月9日 8:02

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

中ロの立場に立っていえば、北朝鮮は使い勝手のいいカードであり、当然、拒否権を行使する。問題は、中露の非常識ではなく、現行の国連常任理事国という訳の分からない制度にある。5か国から特権をはく奪しなければ、いつまで経っても、国連は機能しない
2022年6月9日 7:42 』