中国経済崩壊論を再考する 越智幹文氏

中国経済崩壊論を再考する 越智幹文氏
国際協力銀行環境審査室室長
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB195RJ0Z10C22A5000000/

『中国は何度も経済崩壊論が語られてきたが、曲折を経ながらも成長を遂げ、2020年時点の国内総生産(GDP)は1位の米国に肉薄する2位だ。中国崩壊論について、経済成長の制約要因とされる「人口減少」と「過剰債務問題」の2つの面から考えたい。

人口構造の変化は個人所得が十分伸びる前に少子高齢化が到来する「先老未富」が危惧されているが、多くの国が直面している問題だ。中国では①現在の著しく低い労働生産性②特有の戸籍制度の存在③国民側の国内格差の許容度、を考えるべきだろう。

中国の労働生産性は日本の半分程度とされるが、機械化投資の促進で人口減をオフセットできる余地がある。また、戸籍制度は農村地域に余剰人口が残っていることを意味し、都市部への移動を促して労働力を動員する潜在力がある。戸籍制度は長年定着してきた制度で、国民の間で格差の存在はある程度容認され、即座に解消すべきとの感覚に乏しい面もある。

過剰債務問題は、民間部門の債務残高が増加、日本のバブル期を思わせる水準で、設備投資の効率が落ち、一部不動産企業の不振から社債の債務不履行(デフォルト)が増加して市場全体への影響が懸念される。深刻だが①発展段階の違いからくる開発効果の拡大余地②市場メカニズム導入程度の差③政策実行力の高さ、を考慮に入れるべきだ。

中国の1人当たりGDPは日本の1980年代と同水準だが、第1次産業の就業人口や都市人口の比率では60年前後と同水準にある。債務残高の水準だけでバブル期同様と断じるのはフェアでない。また中国には、発展段階の違う省が半ば独立の経済体として存在し、雁行(がんこう)形態型発展を実現できる強みがある。

債務処理について銀行部門が予防的な政策も実施可能で、不良債権への対応余地はある。個社のデフォルトをある程度管理した形で容認し、市場全体のリスクへの発展を抑止していけるだろう。

先進国との違いを認識していない点が、中国崩壊論が当たらない理由の一つだ。確かにゼロコロナ政策の行き詰まりなどには注目すべきだが、あくまで科学的、客観的に見ることが重要だろう。

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