中国、太平洋戦争の要衝へ 米豪の怒り誘う南方進出

中国、太平洋戦争の要衝へ 米豪の怒り誘う南方進出
本社コメンテーター 秋田浩之
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD086CL0Y2A600C2000000/

 ※ 何を今さら…。

 ※ 戦略的に動いているに、決まっている…。

 ※ 「怨念」とか、そういう「情緒的な話し」じゃ無いんだ…。

『中国による南太平洋諸島への進出に、米国、オーストラリアをはじめとする西側諸国が懸念を深めている。それらの島々が地政学上、極めて大切な要所にあることだけが理由ではない。

米豪からみると、中国の行動は1910年代以降、旧日本軍が進めた南方への戦略と重なる面がある。こうした歴史の類似点が西側諸国を刺激し、強い警戒心を招いている。

中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は6月4日、南太平洋7カ国と東南アジアの東ティモールへの旅を終えた。訪問は10日間におよび、複数の国々に経済協力を約束し、フィジーでは域内の10カ国とオンラインの外相会合を開いた。

ここからうかがえるのは将来、南太平洋を自分の影響圏にしたいという中国の望みである。その意図があらわになったのが、10カ国に提案している新協定だ。

締結は見送られたものの、事前にリークされた草案は波紋を広げた。中国が各国の警察やデジタル統治、サイバー安全保障などの体制づくりに協力する中身だったからだ。

南太平洋では、軍や治安の体制が乏しい国々が多い。協定が結ばれれば、各国の統治に中国が大きな影響力を持つことになる。
「不沈空母」持つことに

中国がこの地域に近づいた当初の狙いは、台湾と外交関係を持つ国々に働きかけ、断交させることだった。2019年にソロモン諸島、キリバスが台湾と関係を絶ち、中国と国交を結んだ。

中国は併せて南太平洋諸国に支援を注ぎ、経済の結びつきも深めてきた。中国の最終的な狙いは複数の軍事拠点を設けることにある、と西側諸国は疑う。

疑念が強まるきっかけになったのが、22年4月、中国がソロモン諸島と交わした安全保障協定だ。内容は伏せられているが、ソロモンが中国軍の派遣や艦船の寄港を認めるなど、高度な軍事協力が盛り込まれているもようだ。

中国は第3列島線より自国側の海洋で、米軍の介入を阻むことを中期目標にしているとされる。第2、第3列島線にまたがる南太平洋に基地を設け、事実上の「不沈空母」として活用できるようになれば、この目標に近づく。

目と鼻の先にある豪州の危機感はとりわけ強い。同国の安保当局者は「中国は南太平洋諸島の拠点を軍用にも使う狙いだ。ここで止めないと、取り返しがつかないことになる」と危惧する。

中国が海に軍事拠点をつくるのは、今に始まったことではない。中国は南シナ海に複数の人工島をつくり、すでにミサイルやレーダーを置いた。
激戦の歴史の傷を刺激

それでも、米豪がことさら神経をとがらせるのは、南太平洋が先の太平洋戦争の要衝だからである。日本は第1次世界大戦で、ドイツ領だった南洋群島(マリアナ、マーシャル各諸島など)に進出し、占領した。1920年、国際連盟から統治を委任され、これらの群島を正式に支配下に置く。

当初は民間企業を通じて港や空港などのインフラづくりを進めたが、30年代後半になると、旧日本軍も基地の建設を加速。41年12月の対米開戦まで約10カ所に陸上基地を設けた。

当時の日本の狙いを、防衛研究所の石津朋之・戦史研究センター長はこう分析する。「旧日本軍は20年代以降、太平洋でいずれ米国と戦争になることも想定し、南洋群島に軍事戦略の拠点づくりを急いだ。太平洋の中央に『沈まない空母』を築き、米本土とハワイから来襲してくる米艦隊を逐次、撃滅する作戦だった」

実際、日米が開戦すると、旧日本軍は南洋群島を足場に、米国の要衝であるグアムなどに侵攻。42年には豪州の委任統治領だったラバウルを占領し、南方作戦の要所にした。

日本はさらにソロモン諸島のガダルカナル島を支配し、米豪を分断しようとも試みた。同島をめぐる激戦は、あまりにも有名である。米豪などが中国に強く反発するのは、こうした太平洋戦史の傷を刺激されているからなのだ。
「怨念」熟知しているか疑問

米戦略予算評価センター(CSBA)のトシ・ヨシハラ上級研究員は「中国軍が南太平洋に前線拠点を設ければ、米国と同盟国はより複雑な軍事作戦を強いられる」と話す。そのうえで、次のような影響が及ぶと警告する。

■中国軍は前線拠点によって、南太平洋に確固たる影響力を築く。平時から米国と同盟国の軍事活動を監視し、海洋の動向をより良く把握できるようになる。

■戦争になれば、中国軍は米軍が太平洋を越えてやってくるのを阻止し、米国と豪州を結ぶシーレーンも脅かすことができる。いずれも太平洋戦争中、旧日本軍がもたらした脅威に似ている。

問題は、米豪などが抱えるこうした歴史のトラウマを、どこまで中国が意識して行動しているのかである。

中国軍事の専門家によると、中国は80年代以降、太平洋戦争などの研究を本格化した。ただ、調査対象は日米開戦に至った経緯や勝敗を分けたとされるミッドウェー海戦など、個々の戦闘が中心という。南太平洋の激戦史に潜む「怨念」の深さを、十分に熟知しているのかは疑問だ。

ただでさえ、米中は台湾海峡や南シナ海で軍事緊張が高まっている。中国がその危険性を分からないまま、南太平洋にも踏み入るとすれば、実に深刻だ。

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青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授
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ひとこと解説

第2と第3の列島線を突破するための、中国の南太平洋地域での軍事関係強化の動きが米豪を刺激しているのは確かだ。しかし中国はいま、南太平洋地域だけではなく、海洋進出のためのグローバルなネットワークの構築に力を入れている。つまり、ほかの地域でも米中の新たな対立が浮上することが予想され、こうしたニュースを目にすることは今後おそらく多くなるだろう。
2022年6月10日 13:27
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高橋徹
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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別の視点

中国が「南太平洋の南シナ海化」へ戦略的に動いているのは間違いありませんが、裏返せば米豪があまりに無防備だったのも見逃せません。オーストラリアのモリソン前首相はこの地域を「裏庭」と表現して不興を買い、海面上昇による水没リスクにさらされる島しょ国に対して温暖化対策の協力も十分とはいえませんでした。中国と安保協定を結んだソロモン諸島では、米国は1993年に大使館を閉鎖しており、いまになって慌てて再開に動いています。失策につけ込まれた面は否定できません。
2022年6月10日 13:05 』