中国、カンボジア海軍基地の拡張支援 南シナ海問題に影

中国、カンボジア海軍基地の拡張支援 南シナ海問題に影
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM082TR0Y2A600C2000000/

『【ハノイ=大西智也、シンガポール=中村亮】カンボジア政府は8日、南シナ海に近いカンボジア南西部のリアム海軍基地の拡張に向けた着工式を開いた。中国が拡張工事を支援しており、米国は将来的に南シナ海の実効支配を目指す中国軍が基地を利用すると懸念する。米中が週内にも開く方向で調整する国防相会談で議題にのぼる可能性がある。

着工式はタイ湾に面する同基地(シアヌークビル)で開かれた。カンボジア政府の発表によると、軍艦などの船舶を修理する設備を建設し、基地を近代化するという。ティア・バン副首相兼国防相は、同基地が中国軍の拠点になるとの疑惑を繰り返し否定し「我が国は自衛能力をさらに強化し、平和と安全を確保していく」と述べた。

中国の王文天・駐カンボジア大使は「中国はカンボジアを統治するつもりはない」と強調した。「両国の鉄壁な関係の中で、カンボジアの基地の近代化プロジェクトを支援していく」とも述べた。

米国はリアム海軍基地をめぐり、カンボジア側が中国による独占的な軍事利用を一部の設備で認める代わりに、中国側が基地のインフラ整備を支援する密約があると疑ってきた。米国防総省は2021年11月に公表した報告書で、中国軍が外国の基地へのアクセスを目指している国の一つとしてカンボジアを挙げた。

カンボジア政府は密約の存在を否定してきたが、米国の疑念は晴れない。東南アジアの中でもカンボジアは中国に最も近い国の一つだからだ。カンボジアのフン・セン首相は中国による経済的な支援をテコに安定した経済成長を実現し、長期政権を維持している。

リアム海軍基地の近隣では、中国企業が建設する大規模な空港の完成が間近に迫っている。米国はこの空港についても中国による将来の軍事転用を懸念している。

オーストラリアのニューサウスウェールズ大のカール・セイヤー名誉教授は「中国はカンボジアでの恒久的な軍事的プレゼンスを確立する能力を持っている」と指摘。「リアム基地における中国の海軍の存在は、近隣国への圧迫につながる」と語る。

中国軍がリアム海軍基地へのアクセスを確保すれば、南シナ海の実効支配をさらに進めやすくなる。いまは手薄になっている南シナ海の南方で軍事活動を増やしやすくなり、ベトナムやインドネシア、マレーシアに対する軍事的圧力が強まる恐れがある。

同基地を拠点にすれば、中国はシンガポールを拠点とする米軍部隊に対する監視も強められる。米海軍の艦船は定期的にシンガポールに入港しており、哨戒機によって南シナ海での中国の活動を監視している。

中国の海洋進出は、10日にシンガポールで開幕するアジア安全保障会議(シャングリラ会合)の主要テーマになる。米国防総省当局者によるとオースティン米国防長官は会合に合わせ、中国の魏鳳和国務委員兼国防相との会談を調整している。実現すれば21年1月にバイデン政権が発足して以降、初めての米中国防トップの会談となる。

シャングリラ会合に先立ち、インド太平洋の空でも米国の同盟国と中国の対立が激しくなっている。オーストラリア国防省は5日、中国の戦闘機が南シナ海上空で豪軍の哨戒機の飛行を妨害したと明らかにした。

カナダ国防省も1日、北朝鮮制裁の履行を目的にパトロール活動をしていたカナダ軍機に対し、中国軍機が接近したと非難した。中国はオーストラリアとカナダの発表をいずれも否定した。』