中国と「衝突」か「対話」か、岸田流「リアリズム外交」が行き着く先

中国と「衝突」か「対話」か、岸田流「リアリズム外交」が行き着く先
日米首脳会談が転換点だったのか?

 ※ 『だが、現時点で岸田政権に対中交渉の具体的戦略があるわけではない。四島一括返還の原点に戻ることになったロシアとの領土交渉に戦略があるはずもないし、北朝鮮の非核化実現への戦略も当然のことながら描けていない。』…。

 ※ こういう思考は、根本において違っていると思う…。

 ※ 「国家戦略」とは、畢竟(ひっきょう)、「状況対応」で行くしかない…。

 ※ ただ、単なる「場当たり」「その場しのぎ」になってもマズい…。

 ※ 大枠は、「国家の生き残り」策の企画・立案だ…。

 ※ 「国家」とは、そこで生きている「国民」の生き残りだろう…。

 ※ 「最大多数(国民)の最大幸福」を目的に、そのために「必要」なことを考えて行く…。

 ※ そういうことだろう…。

 ※ そこに向かって、「情勢分析」し、「どういう立ち位置」を取ったら、国益が最大となるのか…。

 ※ 例え、「核で攻撃されても」「ミサイル攻撃受けても」、再び「立ち上がって、反撃する」…。そういう体制を構築するには、どういう「策」を企画・立案するのが最もいいのか…。

 ※ そこに向かって、どういう方面に、どういう「働きかけ」をしていくのが、最も効果的なのか…。
 
 ※ そういう「しごく当たり前なこと」を、日常的に淡々と実行して行く…。

 ※ そういうこと以外に、何があると言うんだ?

 ※ こういう「明確な戦略や目的」を希求する論者は、「何か、それを押せばパッと事態が好転するスイッチ」みたいなものがあると、無意識のうちに思っているように見える…。

 ※ 現実世界に、そういう便利なものは、無い…。

 ※ あるのは、淡々と死ぬまで続く「平凡な日常」だけだ…。

 ※ 今日は、こんなところで…。

『数年後、日本は中国とどう向き合っているのだろうか。緊張が極度に高まり、一触即発の状況になっているのか。

あるいは劇的に対話が進み、関係改善に向かっている可能性もゼロではない。

どちらになるにしても先の日米首脳会談は、後にその転換点になったと評価されるのではないか。それほど重い意味を持つ会談だったと言っていい。(共同通信=内田恭司)

 ▽バイデン大統領と「力には力」確認

 「日本防衛へのコミットメント(関与)は揺らがない」。5月23日、東京・元赤坂の迎賓館。日米首脳会談でバイデン大統領は、日本をいかなる攻撃からも守る決意を強調した。岸田文雄首相は「防衛力を抜本的に強化し、防衛費の相当な増額を確保する」と表明した。

 会談の最大のポイントは、軍事的脅威を増す中国を念頭に「力には力」で対抗する方針を明確にしたことだ。米国は、核を含めた拡大抑止を揺るぎなく提供し、日本は防衛予算を大幅に増やして「対処力」を強化することで、中国に対峙しようというわけだ。

沖縄・沖大東島沖の太平洋に展開中の中国海軍の空母「遼寧」と飛行する艦載戦闘機=5月15日(防衛省統合幕僚監部提供)

 日本側が、拡大抑止の提供に不安を抱かないよう、閣僚級協議などで意思疎通を緊密にするとの合意も新しい要素だった。バイデン氏は共同記者会見で、中国が台湾を武力侵攻したら武力で対抗すると「失言」したが、これも重要なポイントだろう。

 日本の立場からすれば、台湾で米中が軍事衝突すれば当然「日本有事」になる。その覚悟を首相に迫ったと言えるからだ。そろいの白黒ストライプのネクタイを締めたバイデン氏の左隣で、大統領を見つめていた首相の表情はややこわばって見えた。

 日米に豪州、インドを加えた4カ国によるクアッド首脳会議を開催し、中国の目の前で結束をアピールしたことも「大きな成果」(外務省幹部)に位置付けられた。

「クアッド」首脳会合であいさつするバイデン米大統領(手前)=5月24日午前、首相官邸

 東京で発足した「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)には新たにフィジーも加わり、14カ国で先端物資や稀少資源などの供給網を築き「脱中国」を図っていく。

 首相が掲げるのは「新時代のリアリズム外交」だ。ハト派とされる首相だが、その路線は、実は極めてタカ派的だ。強固な日米同盟の下で、拡大抑止の強化と抜本的な「軍拡」に着手し、米国と共に広大な勢力圏の中核国として「中国との衝突」に備えるのだ。

 ウクライナに侵攻し、核使用を示唆するロシアとの戦いに勝ち抜く意味合いもある。ロシアも中国と同じく、バイデン氏が言う「専制主義国家」だ。首相は来年、G7サミットの議長として、自由主義陣営の結束と核抑止力強化を被爆地・広島で宣言することになる。

 ▽実態不明の「拡大抑止協議」が舞台

 もちろん日本としても、中国やロシアと戦争をすることが目的ではない。対話と交渉で事態を打開することが最大の目的だ。日本が訴えてきたのは、国際的なルールに基づき、インド・太平洋と東・南シナ海を「自由で開かれた海」にすることだ。「力による現状変更」は許されず、対話で「平和と繁栄」を得ようと強く求めてきた。

 しかし、中国は力による現状変更を進め、核ミサイルを含めた軍事力を増強し、威嚇の度合いを強めてきた。沖縄県・尖閣諸島周辺に連日、複数の公船を航行させ、武力による台湾の統一も懸念される状況にまでなった。

2021年12月に沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に侵入した中国海警局の艦船(第11管区海上保安本部提供)

 首相に近く、安保政策に詳しいベテラン議員は「中国が態度を変えない以上、拡大抑止の傘にしっかりと入り、自らの力も高めることで分からせるしかない」と指摘する。抑止力と対処力強化の先に対話の道は開かれるという考え方だ。

 首相は1~2月、官邸に外務、防衛事務次官経験者らを集め、今後の政策について意見を聴いた。関係者によると、防衛力強化は軍拡競争を招くが、臨界点に達すれば対話の局面に入っていくとの意見が複数の出席者から出た。「核共有」の議論に踏み込み、あえて核への脅威を高めることが非核化への近道になるとの考え方も示されたという。

 首相のリアリズム外交は、この時の議論も土台になっていると見ていい。政府は今後、米国側と拡大抑止を巡り、外務・防衛閣僚による「2プラス2」や実務者レベルで議論を進める方針だ。信頼性の醸成や即応性の確保について話し合うとみられる。

 あまり知られていないが、両政府は2010年から局次長級の「拡大抑止協議」を開催している。実態は不明だが、議論の主要な舞台はここだろう。米国の核運用の判断に日本が関与することが議題になるなら、それこそ核共有の議論に踏み込むことになる。

 ▽ウクライナ軍の反撃能力を高度化

 対処力を巡っては、国内総生産(GDP)の1%が目安となっている防衛費について、自民党が4月、5年以内に2%以上に増額すべきだとの提言を岸田首相に行った。2022年度で5・4兆円の当初予算について、安倍晋三元首相は来年度で「6兆~7兆円」という数字を上げた。まずはこの金額の確保が焦点になる。

 「国家安全保障戦略」など防衛3文書は、日米首脳会談の方向性で改定が進むのは確実で、「敵基地」攻撃に主眼を置く「反撃能力」保持の検討に入るとの見方が強い。

 自民党関係者によると、ウクライナでの戦争は日本の反撃能力の整備に「多くの知見」を与えているという。「この戦争は、宇宙とサイバーを含めた『5次元戦争』だ。新領域での精緻な情報解析で、驚くほどピンポイントで敵の位置を把握している。日本が反撃能力を持つなら、これをもっと高度化させたものになる」という。

航空自衛隊府中基地で「宇宙作戦隊」が公開した訓練=2021年11月30日、東京都府中市

 仮に防衛費が11兆円に倍増すれば、経費別のうち「人件・糧食費」は2兆円強と大きく変わらないため、装備品購入や研究開発に巨額の予算が一気に投入されることになる。
 自民党の佐藤正久国防部会長は「中国は日本を射程に入れる弾道ミサイルを1900発保有している」として、日米で早急に中距離ミサイル網を構築すべきだとの考えを示している。反撃能力システムと共に、防衛力強化の主要要素になる可能性がある。

 ▽戦後日本の平和主義が問われる

 だが、日本が抑止力と対処力を強化したとして、本当に中国を対話のテーブルに着かせることができるのか。そもそも一連の強化路線には懸案が山積している。

 防衛費を増額するとして、財源をどうするのか。「つなぎ国債」を発行するなら、将来の償還財源が必要になる。装備品の調達コストも問題だ。米国に有利な条件で購入する「有償軍事援助(FMS)」の増加には批判が強く、圧縮は不可欠だ。

 米国の同盟国と有志国が中心となる陣営づくりと、経済安全保障を目的とした「脱中国」のための供給網構築にも課題が多い。

 まずは日韓だが、関係改善は進むのか。首相が出席を検討する6月末の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の場で日韓両首脳が初対面し、韓国外相の訪日も実現すれば、秋以降に首脳会談を重ね、早期の決着に導くシナリオが浮かぶ。

 しかし、元徴用工問題の解決策としてささやかれる民間基金創設などの案には、双方で反対論が強い。圧倒的な少数与党の尹錫悦政権は基盤がぜい弱なのも気がかりだ。

 クアッドに目を転じれば、インドは「脱中国」で連携しても「ロシアとの戦い」には連ならない。オーストラリアは最近まで親中だった労働党の政権になった。IPEFにはカンボジア、ラオスなどが参加せず、東南アジア諸国連合(ASEAN)が分断された。

 盟主の米国も、今秋の中間選挙と2年半後の大統領選では民主党の不利が指摘され、対中政策の継続性や「民主主義陣営」の結束維持への懸念が拭えない。

 さらに根本的な指摘をすれば、反撃能力の保持や台湾有事への関与を巡っては違憲性が問われるし、広島サミットでは、唯一の被爆国としての非核化政策との整合性も問われる。戦後日本の平和主義の在り方全てが、この局面で問われることになる。

原爆死没者名簿の「風通し」をする市職員=5月18日午前、広島市の平和記念公園

 そして、これらの懸案を超えて中国と向き合った時、果たして日本はどのように交渉を進めていくのだろうか。安倍政権で関係改善が進んだ19年、来日した習近平国家主席は、08年の東シナ海ガス田共同開発に関する合意は有効だと確認した。

 関係改善への対話は、この合意が土台になるのは間違いない。ガス田交渉に関わった外務省関係者は「合意の要諦は、東シナ海を日中で分け合うということだ。互いの線引きの中で、尖閣と台湾の問題をどう落とし込むかが焦点になるだろう」と話す。

 だが、現時点で岸田政権に対中交渉の具体的戦略があるわけではない。四島一括返還の原点に戻ることになったロシアとの領土交渉に戦略があるはずもないし、北朝鮮の非核化実現への戦略も当然のことながら描けていない。

 平和実現のための明確な外交戦略と理念を持たないまま、岸田政権がひたすら「軍拡」に突き進んでいくなら、エスカレートの向こう側には戦争しか待っていない。』