プーチン氏恐れるロケット砲、ゲームチェンジャーなるか

プーチン氏恐れるロケット砲、ゲームチェンジャーなるか
米製「ハイマース」、ウクライナ軍が月内にも実戦配備
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN06BYZ0W2A600C2000000/

『【ワシントン=坂口幸裕】バイデン米政権はウクライナ東部で攻勢を強めるロシア軍に対抗するため、射程や機動性を大幅に向上させる米製のロケット砲システムをウクライナに供与すると決めた。プーチン大統領の激しい反発は戦況を変える「ゲームチェンジャー」になり得る新兵器がウクライナに渡ることへの危機感を映す。

バイデン大統領は1日の声明で、7億ドル(910億円)相当の追加の軍事支援について「ウクライナはロシアから自国の領土を守るためにハイマースを含む新しい能力と先進的な武器を装備できるようになる」と訴えた。

目玉になるのが声明で異例の言及をした「ハイマース」と呼ばれる高機動ロケット砲システムだ。射程は70キロメートルほどあり、これまで主力の火砲として使ってきた155ミリメートルりゅう弾砲の30キロメートルから2倍以上に伸びる。

ハイマースは射程300キロメートルほどあるミサイルも搭載できるが、米国はロシアを過度に刺激するのを避けるため供与を見送った。国防総省によると、1990年代に米陸軍向けに開発した兵器で、米防衛大手ロッキード・マーチンなどが製造する。

時速100キロメートル近い速度が出る自走式で機動性もある。より高性能の多連装ロケット砲(MLRS)に比べて軽量でC130輸送機で運搬できるため、緊急時に前線に展開しやすい利点がある。

米国防総省は欧州の拠点に新システムを輸送しており、ウクライナ兵に3週間ほどの訓練を実施して月内にも実戦配備する。コリン・カール国防次官は「ウクライナ国内であらゆる標的を射程に収められるようになる」と語る。

現在、主戦場となっているウクライナ東部ドンバスではロシアの砲兵部隊による攻撃が勢いを増している。東部戦線は序盤の首都キーウ(キエフ)などとは環境が異なり、起伏が少ない開けた地形で激しい砲撃戦になっている。

射程だけでなく、機動性も重みを増す。ハイマースはりゅう弾砲に比べて短時間で多量の弾薬を投下できる強みがある。ウクライナ軍がロケット砲を使えば、ロケットや火砲で攻撃するロシアの砲兵部隊を素早く攻撃できるようになる。

ロシアの火砲を察知する対砲兵レーダーも新たに22機譲渡する。ロシアが東部に戦力を集めた4月中旬から30機ほどの供与を決めており、大幅に拡充する。砲弾の軌道を分析することで火砲の起点を探知して反撃可能な態勢を整える。

攻撃の精度も増す公算が大きい。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・カンシアン上級顧問はロケット砲システムの供与について「ゲームチェンジャーになり得る。標的の10メートル以内に命中が可能になる」と指摘する。

追加支援でりゅう弾砲も大幅に増やす。5月までに供与を決めた約200門から108門を加え、300門ほどにする。自爆攻撃能力を持つ無人機も追加で引き渡すほか、「スイッチブレード」を700機、ウクライナの要望を踏まえて米空軍が開発した「フェニックスゴースト」を121機それぞれ提供する。

バイデン政権は新たな武器供与によるウクライナの防衛態勢の強化で攻勢に転じる可能性が高いとみるが、それはロシアの反発を招くリスクと背中合わせだ。

プーチン大統領は5日に放映されたロシア国営テレビでのインタビューで、米欧が射程が長い兵器をウクライナに供与した場合「これまで標的としていない対象を攻撃する」と述べた。ロシアを射程に収める兵器を供与しないように警告した。

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