豪新外相、矢継ぎ早に太平洋諸国訪問 中国と勢力圏争う

豪新外相、矢継ぎ早に太平洋諸国訪問 中国と勢力圏争う
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『【シドニー=松本史】太平洋諸国に外交攻勢をかける中国に対抗し、発足間もないオーストラリアの新政権が巻き返しを図っている。ウォン豪外相は就任から10日あまりで地域の3カ国を訪問。3日には南太平洋のトンガで首相と会談した。中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相も先週から7つの島しょ国を訪問しており、太平洋を巡る中豪のつばぜり合いが激しさを増してきた。

「豪新政権はこれまで以上のエネルギーを割いて太平洋島しょ国に向き合う」。3日、トンガを訪れたウォン氏は同国のフアカバメイリク首相と共に記者会見し、地域に密接に関与する姿勢を強調した。

島しょ国で、温暖化による海面上昇で国土浸水が大きな懸念となっているとして「気候変動問題は安保上、経済上の大きなリスクだ」と指摘。豪州は「より意欲的な行動を取る」とも語った。これに先立つ2日にウォン氏はサモアを訪問し、同国のフィアメ首相と会談。巡視船の寄贈などを約束した。

5月23日に外相に就任したウォン氏は日米豪印による「Quad(クアッド)」首脳会合に出席するため同日に日本に飛んだ。その後は同月26日にフィジー、6月に入ってからは立て続けにサモアとトンガを訪れた。背景には太平洋地域で中国が外交攻勢を強めていることへの危機感がある。

中国の王毅氏は5月26日のソロモン諸島を皮切りに、キリバスを経てサモアは27日から28日、トンガは31日から6月1日に訪問した。いずれもウォン氏の先を行く。中国は豪州の機先を制してサモア、トンガ両国と経済協力に関する覚書など複数の文書に署名した。

中国は多国間の枠組みの構築も目指している。5月30日にフィジーで地域の島しょ国10カ国と開いた外相会合では、地域全体での安全保障協力の強化に向けた協定案の合意を模索した。米国に防衛を委ねるミクロネシア連邦などの反対で合意は見送られたが、影響力拡大に向けた中国の強い意欲が浮き彫りになった。

ウォン氏は2日、豪公共放送ABCに出演し「地域の安全保障は太平洋島しょ国全体の問題であり、そこには豪州も含まれる。島しょ国の多くも同様の考えだ」と述べ、中国による地域の安保協力強化の合意阻止に向けた意欲をにじませた。

アルバニージー豪首相はウォン氏とともに5日からインドネシアを訪問し、6日にもジョコ大統領と会談する見通しだ。地理的に近く経済成長が見込まれるインドネシアは豪州にとって重要な隣国で、モリソン前首相ら多くの首相が最初の外遊先に選んできた。

ただインドネシアが2015年、麻薬犯罪を巡り豪国籍者に死刑を執行した際には通商交渉が中断。豪州が米英の支援を受けて原子力潜水艦配備を進める「AUKUS(オーカス)」についてもインドネシアは地域の軍拡につながると懸念を表明するなど、両国の関係は複雑さもはらむ。
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