中国空母、常時作戦展開へ 3隻体制で台湾へ圧力一段と

中国空母、常時作戦展開へ 3隻体制で台湾へ圧力一段と
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM303B00Q2A530C2000000/

『【北京=羽田野主】中国の3隻目の空母が6月にも進水する。3隻体制が完成すれば東・南シナ海で常に軍事作戦を展開できるようになり、台湾や沖縄県・尖閣諸島への軍事圧力も大幅に強まる。習近平(シー・ジンピン)指導部は東アジア海域から米軍の影響力の排除をめざす。

新しい空母は「江蘇」と命名する見通し。国産空母としては「山東」に続き2隻目になる。就役は2024年以降とみられる。

注目を集めるのは中国が初めて搭載する予定の電磁式カタパルト(射出機)の精度だ。限られた甲板スペースでも高頻度で艦載機を発射できるようになる。艦載機を増やすことができ、空母の攻撃力は増す。

最初の空母「遼寧」と「山東」は先端がそり上がったスキージャンプ方式を採用した。建造が比較的容易な半面、艦載機を搭載する甲板スペースが小さくなり、早期警戒機などの収容が制限される欠点があった。

電磁式カタパルトは米国の最新式原子力空母に搭載されているだけで、技術的な難易度が高く不具合も絶えない。日本政府関係者は「米軍は開発・運用で苦労している。中国が実用化するとは信じられない」と話す。

電磁式の運用には大量の電力が必要で、通常動力に頼る中国の空母で効率的な運用ができるのか疑問視する声もある。

中国が3隻の空母を持つのは戦略上の意義が大きい。作戦、訓練、補修のローテーションを組んで効率的に運用できるためだ。空母を軸に駆逐艦、潜水艦などで構成する「空母打撃群」を各海域に展開可能になる。
沖縄・沖大東島沖の太平洋に展開した中国海軍の空母「遼寧」と飛行する艦載戦闘機=防衛省統合幕僚監部提供

中国は5月に遼寧などを沖縄南方の太平洋に展開し、艦載機などが計300回以上発着艦した。領有権を巡り争いが絶えない南シナ海や、尖閣諸島周辺海域を含む東シナ海で中国の示威行動が強まるのは必至だ。空母保有数は米国(11隻)に次ぐ世界第2位となる。

習指導部は空母を台湾攻略の重要な布石として位置づける。軍事関係者の間で有力なシナリオとみられているのが有事に空母を西太平洋に派遣し、台湾の東側から攻撃をかける作戦だ。

台湾軍は大陸からの攻撃に備えて中央山脈を盾にして台湾島の東側に主力を配置しているとの分析がある。空母が東側に回り込めば艦載機による攻撃が可能になる。

救援に駆けつける米軍は台湾海峡だけでなく太平洋側も警戒する必要に迫られ、兵力の分散が期待できる。米国本土からの援軍や補給路も遮断しやすくなる。

日米は空母増強を進める中国への警戒を増している。アジア・太平洋地域でこれまで米原子力空母「ロナルド・レーガン」が米軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)を母港として東アジアににらみをきかせてきた。

今年は米西部サンディエゴが母港の米原子力空母「エーブラハム・リンカーン」が横須賀基地に一時寄港するなど、日本の近海に複数の空母が展開する例が増えている。

日本の海上自衛隊は大型護衛艦「いずも」に戦闘機F35Bを搭載するための改修を進める。20年代後半にも完了する。同型の「かが」も改修が終われば事実上の「空母」を2隻持つことになる。

日本は戦後、攻撃型空母は憲法9条で保持が禁止される「戦力」にあたるとの立場をとってきた。改修後のいずも型は防衛目的で使い、呼称も「護衛艦」のままとする。

中国が第3の空母を進水させるのは上海市の都市封鎖(ロックダウン)解除とも関係がある。もともとは今年の春に進水するとの観測があったが、建造場所の上海江南造船所の封鎖に伴い遅れていた。

共産党関係者は「上海でコロナを制圧したという政治的なメッセージがある」とみる。22年秋には5年に1度の党大会があり「強国路線」を進める習指導部のメンツを重視したとの見方もある。

【関連記事】

・米国防長官、台湾へ武器提供拡大 「統合抑止力を重視」
・戦闘機支援の無人機開発 日米、防空網強化へ技術協力
・日米豪印で海洋監視 中国念頭に「現状変更反対」

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/Indo-Pacific/China-nears-launch-of-third-carrier-turning-up-pressure-on-Taiwan?n_cid=DSBNNAR 』