米台、デジタル・環境で連携 IPEFと別に貿易枠組み

米台、デジタル・環境で連携 IPEFと別に貿易枠組み
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0130Z0R00C22A6000000/

『【ワシントン=鳳山太成、台北=中村裕】米国と台湾は1日、新たな貿易協議の枠組みを立ち上げたと発表した。デジタルや環境の分野で連携する。米国はこのほど始動したインド太平洋経済枠組み(IPEF)に台湾を加えなかったが、別の枠組みを通して台湾重視の姿勢を示す。

米通商代表部(USTR)と台湾当局が「21世紀の貿易に関する米台イニシアチブ」を設ける。6月後半に米首都ワシントンで初会合を開く。

デジタル貿易や環境・労働者の保護、貿易手続きの簡素化などで政府間協定を結ぶ。中国を念頭に、非市場的な貿易慣行や国有企業による貿易への悪影響についても対策を話し合う。

議会承認が必要な自由貿易協定(FTA)ではなく、関税の引き下げは想定していない。

協議対象はIPEFで取り上げる分野と多くが重なる。

台湾はIPEFへの参加を望んだが、中国の猛反発が必至だったために、米国は台湾を創設メンバーから外した。台湾が将来参加する可能性は残っているが、当面は2国間の枠組みで代替する。

米国内では中国に強い姿勢を示すため、台湾をIPEFに含めるべきだとの声があった。上院(定数100)の半数超の議員は5月中旬、超党派で台湾のIPEF参加を求める書簡をバイデン政権に送っていた。

米政府高官は記者団に「IPEFと米台イニシアチブの両方を通して、インド太平洋における関係を強化できる」と強調した。

中国への過度な刺激を避けながらも、中国に対して一定のけん制姿勢を示す形となる米台イニシアチブは、複雑な条件下でひねり出した折衷案といえるが、実効性の高い協定に結びつくかどうか不透明だ。

米台の貿易協議は、もともと長期にわたって停滞しており、FTA締結を強く望む台湾側と、消極的な米側で平行線が続いてきた。

米台イニシアチブは関税引き下げなどに踏み込まない。米側が課題とする台湾からの半導体調達などのサプライチェーン(供給網)問題についても取り扱わない。

そのため、台湾の専門家の間からは一定の評価をする一方、「米国が中国に対抗姿勢を示すことが主眼にあり、台湾にとって直接的なメリットは少ない」との見方がでている。

台湾の呉釗燮・外交部長(外相)は1日夜、関連の記者会見で「(新たな貿易協議は)米台のパートナーシップの発展に重要で戦略的な意味を持つ。米台が新たな貿易のフェーズに入ったことを歓迎し、支持する」と述べた。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Economy/Trade/U.S.-Taiwan-open-talks-on-digital-trade-and-environment-in-June?n_cid=DSBNNAR 

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

北京の幹部はこのニュースをみると、感情的になるだろう。

アメリカは中国の経済発展を邪魔しようとしている、と中国国内の一部の人は指摘する。
それに対して、アメリカ人は中国が国際ルールを守らなくて国際秩序を乱していると考えているようだ。

感情的で中国外交部報道官の強がる態度をみたアメリカ政府高官はますます中国に歩み寄らない。少し前までは、米国大統領や国務長官は中国が脅威ではなく、競争相手だと定義していた。

しかし、今の米国政府高官の言動をみると、明らかに中国を脅威と認定している。ただし、ロシアほど怖い存在ではない。だからこそ制裁を強化している。米中が対立すればするほど世界経済は不安定化する

2022年6月2日 7:38

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川島真
東京大学大学院総合文化研究科 教授
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分析・考察

IPEFのアウトリーチのような枠組みを台湾のために作ったということであり、中国への強いメッセージになる。

だが、CPTPPに入らないアメリカが唱えたIPEF自身がどのような「実態」になるのか疑問符がつく中で、この台湾とのアウトリーチもまた、その存在自体には意味があるものの、「実態」を伴うものになるのか、台湾においても疑問の声が上がっているのだろう。

ワシントンで「ないよりはいい」というIPEFへの評価が聞こえる中で、この台湾とのアウトリーチもまた「ないよりはいい」ということになるのだろうか。

IPEFを含め、今後どのような実態、機能を持つことになるのかが焦点になろう。

2022年6月2日 7:43』