米、ウクライナに新ロケット砲 ロシア領攻撃には使わず

米、ウクライナに新ロケット砲 ロシア領攻撃には使わず
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『【ワシントン=坂口幸裕】バイデン米大統領は5月31日、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)への寄稿でウクライナに新たなロケット砲システムを供与すると明らかにした。米政府高官によると、ロケット砲の射程が最大80キロメートルほどに及ぶものの、ウクライナがロシア領への攻撃には使用しないと確約したという。

東部ドンバス地方で攻勢を強めるロシア軍の砲撃に対抗できる態勢の構築を後押しする。バイデン氏は寄稿で「ウクライナ軍が戦場で標的をより正確に攻撃できるよう、高度なロケットシステムと弾薬を提供すると決めた」と記した。

一方、ロシアを過度に刺激するのを避けるため、米国はウクライナが求めていた数百キロメートルの射程を持つ兵器の譲渡は見送った。最も高性能なタイプでは射程は300キロメートルに及び、国境を越えてロシア領を直接攻撃することが容易になる。

バイデン氏はロシアへの配慮も示した。「我々は北大西洋条約機構(NATO)とロシア間の戦争を求めていない。米国はロシアのプーチン大統領を追放するつもりはない」と指摘し、体制転換をめざさないとの考えを示した。バイデン氏は3月末、プーチン氏について「この男が権力の座に居座ってはならない」と語った経緯がある。

バイデン氏は「米国や同盟国が攻撃されない限り、ウクライナへの米軍派遣やロシア軍への攻撃で、この戦争に直接関与することはない」と主張した。新たなロケットシステムの提供により「ウクライナが国境を越えて攻撃するよう促したり、できるようにしたりすることはない」とも強調した。

米高官は同31日、記者団にウクライナに供給するのは高機動ロケット砲システム「ハイマース」だと明かしたうえで「(同国が)ロシア国内への攻撃には使用しないとの確約を得た」と話した。米国がウクライナ東部での戦闘を想定してウクライナ軍に供与した155ミリりゅう弾砲の射程は最大30キロメートルほどだ。

バイデン氏はウクライナへの侵攻を続けるロシアに「大きな代償を払わせなければ、他の侵略者になりうるものに対して、領土を奪って他国を服従させられるというメッセージを送ることになる」と表明した。中国などの行動に影響を与えるおそれがあるとの認識を示した。「ウクライナ政府に領土の譲歩を迫ることはしない」とも説いた。

プーチン氏は核兵器の使用も辞さない構えで威嚇を続ける。バイデン氏は「それ自体が危険であり、極めて無責任だ。この紛争で核兵器を使うことは全く容認できず、深刻な結果をもたらす」と警告した。

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

ロシアとNATOが戦火を直接交える第3次世界大戦にならないよう気を配りつつの、米国による対ウクライナ武器支援強化である。

いま主戦場になっているウクライナ東部ドンバス地方では、視界が開けた広大な原野での、火力にものを言わせた戦いが中心になりやすい。

155ミリ榴弾砲に続いてロケット砲システム供与に米国が踏み切った背景には、そうした戦闘でウクライナ軍が劣勢に陥りつつあることがあるのだろう。

ロシア領攻撃には使わないというウクライナの口約束を信用してまでバイデン政権が動いた背景には、ロシア軍優勢への戦況の変化がある。

東部2州のうちルガンスク州をロシア軍は完全制圧しつつあるものの、ドネツク州はまだである。

2022年6月1日 12:52』