「核の傘」戦略、日米韓で再構築 韓国に兵器展開・演習

「核の傘」戦略、日米韓で再構築 韓国に兵器展開・演習
中朝ロ核脅威へ広域対処
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『日米韓3カ国が米国の核戦力で同盟国への核攻撃を防ぐ「拡大抑止」の戦略を再構築する。韓国は対北朝鮮を想定して米軍の戦略爆撃機を展開する演習の再開を検討し、日本は米国と台湾有事への対処力を高める。

バイデン米大統領は5月下旬の日韓訪問で、拡大抑止の協議の活性化について両国首脳と相次ぎ確認した。韓国では2018年1月を最後に開かれていない外務・防衛当局の「拡大抑止戦略協議体」の再開を申し合わせた。日本では閣僚級の緊密な意思疎通で合意した。

米国は核兵器をいつでも使える能力を持つ。第三国は報復を恐れて簡単には米国を攻撃できない。拡大抑止とは米国が持つ抑止力を核を持たない同盟国に提供する考え方だ。米国の核戦力の効果を他国に広げるさまを傘に例えて「核の傘」とも呼ばれる。

米国が「核の傘」を強化する背景に東アジアの安全保障環境を巡る危機感がある。中国は核弾頭の保有数を30年に20年比で5倍の1000発まで増やすと試算される。北朝鮮は近く7回目の核実験を断行するとの観測がある。

ロシアのウクライナ侵攻でプーチン大統領が核の使用をちらつかせて脅しをかけたことで、核の使用ハードルが下がるとの懸念も持ち上がる。自前の核を保有する中朝ロと向き合う日米韓3カ国にとって抑止戦略の再構築が急務となる。

米国が特に力を入れるのは韓国の「核の傘」の立て直しだ。革新系の文在寅(ムン・ジェイン)前政権は北朝鮮との対話を重視し、米軍の韓国への関与を減らした。北朝鮮を刺激するような米韓の大規模演習を控えてきた。

5月に保守系の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権に代わり安保政策が転換した。尹氏は米国の「核の傘」を重視し、米韓同盟の抑止力を強化する方針を示す。米国はこれを機に韓国の引き込みを図る。

「核の傘」立て直しの一例が米朝非核化交渉前の17年に「ブルー・ライトニング」の名称で実施した共同訓練の再開だ。米軍の戦略爆撃機「B52」を韓国上空に飛来させ、北朝鮮との戦闘を想定した運用を確かめていた。18年に韓国側が参加を見合わせ、5年間途絶えている。

B52の一部は核兵器を搭載できるとされる。こうした機体を投入した共同訓練には、米国が同盟国のために核を運用できる能力を示す狙いがある。訓練を実施しなければ運用能力が落ち「核の傘」の信頼低下につながりかねない。

韓国大統領府で国家安保室第1次長を務める金泰孝(キム・テヒョ)氏は「『核の傘』の実行力を演習し、準備し履行することが拡大抑止の強化になる」と演習再開を示唆する。

韓国の変化は日本にも影響を与える。

韓国の文政権期に自衛隊は米の戦略兵器を交えた訓練を増やした。防衛省の国会答弁によると航空自衛隊はB52との共同訓練を18年7月~21年3月の2年半あまりの間に5回公表した。21年度は1年間で6回公表し、ペースが上がった。米韓の訓練の停滞を補完したとの見方もできる。

政策研究大学院大の道下徳成教授は「いまの日本は朝鮮半島と台湾海峡の『二正面作戦』を強いられている。それだけ資源が分散される」と話す。韓国が政権交代を機に米国との抑止力強化に動けば「日本は台湾に資源を集中できる」とみる。

共同訓練が増えれば日米韓3カ国の運用能力が上がる。朝鮮半島有事への対応力を高め、その余力を台湾周辺での対中国の抑止に振り向けることができる。道下氏は「いざというとき戦闘任務を遂行できるよう日米韓で作戦を擦り合わせる必要がある」と指摘する。

(安全保障エディター 甲原潤之介)

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