EU首脳、ロシア産石油の禁輸で合意 年内に90%停止

EU首脳、ロシア産石油の禁輸で合意 年内に90%停止
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『【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)は30日夜、ロシア産石油のEUへの輸入を禁止することを柱とする追加制裁で合意した。発動後ただちに3分の2の輸入が止まり、年内に90%以上になるという。EUは当初、年内の全面的な禁輸を目指していたが、ロシア産石油への依存度が高いハンガリーなどに配慮して妥協が図られた。

EUのミシェル大統領は31日未明の記者会見で「戦争を終わらせるためにロシアに最大限の圧力をかける」と表明した。ドイツのショルツ首相は「EUは団結を示した。広範囲にわたる対ロ制裁に合意した」とツイッターに投稿した。

ロシア産石油の禁輸を巡っては、EU執行機関の欧州委員会が5月初旬に年内の全面的な禁輸を提案した。だが、内陸国でロシア産石油への依存度が高いハンガリーは、代替先の確保が難しいなどとして合意が難航していた。

合意した禁輸措置は海上輸送の石油を対象として、陸上パイプラインで運ばれた石油は一時的に例外扱いとする。海上輸送はロシアからの輸入の3分の2を占める。さらにドイツとポーランドが使っているパイプラインを年内に止めることで合意。あわせて90%以上の輸入停止を実現する。

ハンガリーの石油供給には当面影響しない。さらにハンガリーは陸上パイプラインからの供給が途絶した場合に別の手段で供給を受けられる権利を手にした。

国際エネルギー機関(IEA)によると、4月のロシアの石油輸出先でEUはなお全体の4割強を占め、ロシアにとって最大の売り先だ。EUが支払う石油代金がロシアの戦費になっているとの批判は強い。ウクライナのゼレンスキー大統領は30日始まったEU首脳会議にオンラインで出席し、禁輸の早期実現を求めていた。

細部の詰めの交渉が残っており、大使級で議論を続ける。制裁の発動には加盟国すべてが正式に採択する必要がある。

追加制裁でほかに合意したのは、ロシア銀行最大手のズベルバンクを国際的な資金決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からの排除することだ。EUはすでに3月に同国2位のVTBバンクなどを排除したが、欧州経済への影響を懸念してズベルバンクは対象にしていなかった。

ロシアの3つの官製メディアをEU圏内の放送などの電波から締め出すことも決めたほか、ウクライナ南東部の港湾都市マリウポリでの戦闘にかかわったロシア軍関係者らの資産も凍結する。

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

EUの「全会一致原則」のデメリットが露呈してロシアからの原油輸入禁止という制裁措置の決定が遅れ、かつ例外も認められた。

「親プーチン」のオルバン・ハンガリー首相は、自国がロシアからパイプライン経由で原油を輸入し続ける権利を維持することを主張。のみならず、「パイプラインに事故があった場合に他の供給源からロシア産石油を輸入する権利の保証を求める」とまで記者団に述べていた。要するに「ごね得」狙いの強気姿勢である。

では、ハンガリーの国内政治はどうかと言えば、4月に行われた総選挙で与党が圧勝し、オルバン首相続投が決まった。

EUは加盟国が増えて大きくなった代わりに、まとまり・求心力は明らかに弱まっている。
2022年5月31日 8:39

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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

詳細は不明だが、ハンガリーは内陸国としてロシアからのパイプラインでの原油の輸入が不可欠という立場であり、ロシア産原油を止めれば、石油の確保ができないという主張で反対していた。

ロシア産原油の3分の2が止まるということなので、おそらくタンカーによる輸入は禁止し、パイプラインでの輸入はすぐには禁止しないと言うことなのだろう。

ハンガリーでも飲める案だが、ロシアの原油輸出は減るので、ロシア経済に対するダメージも少なからずあるだろう。

問題はタンカーによる輸入を止めるだけだと、このタンカーに載せた原油は中国やインドなど、他の輸出先に振り向けやすいということだろう。

2022年5月31日 8:35

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伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事
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ひとこと解説

具体的な進め方を巡る条件闘争が続き合意先送りが濃厚とされてきた石油禁輸。

「石油の3分の2以上」という表現からタンカーで運ばれる石油を即時禁輸の対象とし、パイプライン経由のガスにはより長い移行期間を認める妥協案で合意したのだろう。

この案には、パイプライン石油を利用するハンガリー、ドイツが恩恵を受け、競争条件の公平性を損なうとの反対があった。どのような譲歩で妥協に至ったのか、詳細を待ちたい。

原油禁輸の調整が長引いた結果、今回の特別首脳会議の主題とされてきたウクライナ復興支援、食糧安保(ウクライナからの輸出支援)、脱ロシアエネルギー計画、防衛問題などの協議に割く時間が削られてしまったようだ。

2022年5月31日 8:04 (2022年5月31日 8:04更新)

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小山堅
日本エネルギー経済研究所 専務理事 首席研究員
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ひとこと解説

EUがロシア産石油禁輸に関する合意に達した。

5月4日に年内輸入停止方針が提案された後、加盟国の間で調整が図られてきた。ロシア産石油に大きく依存するハンガリーなどが反対していたこともあり合意の行方が世界の関心を集めていた。これでまずはEU内の結束を示した格好だ。

まだ詳細が分からない段階ではあるがEUによる合意はロシアの石油供給を低下させる方向に力を作用させるだろう。原油相場への影響も注目される。

実際にどの程度ロシアの石油供給が低下するかは、中国・インドなどによるロシア石油の引取り量にも左右される。Disruptionか、Dislocationか、それ次第で原油価格動向も影響を受ける。

2022年5月31日 7:40 』