楽園実験という恐ろしい試み 机上空間

楽園実験という恐ろしい試み 机上空間
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/28812757.html

『 人間が環境実験を行う場合、マウスを使う事が定番です。人工的に、一定の条件の環境を整えて、それが動物にどういう影響を与えるのか、擬似的に観察するわけですね。過去に、様々な実験が行なわれましたが、1960年代にアメリカで行われた実験に、ユニバース25という楽園実験があります。

実験のテーマは、生存に最適な環境(楽園)に、マウスを住まわせると、どのような社会が形成されるのか観察するというものです。さて、実験である以上、楽園を定義しなければいけません。この場合、楽園の定義は、以下のように定められました。

・住居の確保
・食料不足の解消
・生存に適した天候の保証
・病気の発生しにくい衛生状態の維持
・捕食者の排除

具体的には、256の居住区と、16の巣穴からなる、最大3000匹以上のマウスが収容可能な実験場を作り、食料と水は無制限に与えて、病気が発生しない衛生的な環境を維持し、最適な気温に保たれ、天敵が侵入しない環境を整えました。

この広大な施設に、オス・メス4組の計8匹のマウスを放ちます。マウスの寿命は、平均で800日で、人間の寿命に換算すると80歳になります。つまり、10日で一年という事ですね。実験開始から、104日後に最初の子供が誕生し、55日毎に個体数が倍増していきます。そのまま、ネズミ算式に個体数が増えるわけですね。

ここまで、個体数が増えると、ネズミの群れに社会が構成されます。実験場は、十分な広さがありますが、特定のエリアに集まるグループが構成され、同じ食料源から餌を食べるようになります。そして、分かれたグループ間で、格差が発生します。群れの人数は、100匹単位から、十数匹まで、様々で、大きい群れでは、密集状態からストレスが発生し、群内での権力争いが発生し、群れ同士の縄張り争いも生じます。

群れの中には、行動によってピラミッド構造の階級が構成されます。トップにいるのは、リーダー・タイプで、行動は保守的、地位が盤石で、好戦的な行動は、しません。次の階級が、士官タイプ。地位の上下を巡って、他の士官タイプのマウスと常に交戦し、地位が安定しません。ここまでが、支配階級です。

次の多いのが、派閥に属せず、相手構わず交渉を持つ穏便なタイプ。支配階級に攻撃されても、反撃する事は殆どなく、穏やかな性格をしています。次に多いのが、ストーカー・タイプ。大人しいのは、同様なのですが、繁殖に対する執着が強く、常に誰かを追い回して交渉をしようとします。そして、ピラミッドの最下層階級で、最も数が多いのが、引きこもりタイプです。性格は周りに対して、無関心で、行動は孤立しています。単体で過ごす時間が長く、他のマウスが眠っている間に、飲み食いに動き回ったりします。

通常、自然界では、生存を巡って闘争するのが普通であり、支配階級以外の従属階級は、生きていく事ができません。しかし、実験場は楽園環境なので、闘争をしなくても、生きていけます。また、闘争したくなければ、別の場所に移動するだけです。しかし、楽園から出る事もできないので、イレギュラーな存在として、生存し続ける事になります。

やがて、群れは停滞期を迎えます。個体の倍増スピードが、55日から145日に鈍化します。そして、支配階級とツガッたメスは、子育てが上手で、子マウスの生存率が50%だったのに比べ、従属階級のメスは、子育てが下手で、育児放棄も起こり、子マウスの生存率は10%まで低下しました。

さらに、無気力な従属階級では、オスが闘争しない為、メスのオス化が進み、攻撃的な行動が見られるようになります。この攻撃は、自分の子供にも及び、早い段階で巣離れせざるを得なくなり、生きる手本のいない子マウスは、引きこもりになったり、他のマウスに食われたりします。

そして、とうとう、実験開始から560日後、死亡率が出生率に並び、個体数の増加が完全に停止します。この時の、マウスの総数は2200匹です。実験開始から600日後、とうとう新生児の死亡率が、100%に達します。そして、920日後には、群れ全体の高齢化が進み、妊娠するマウスがいなくなります。

実験開始から、1330日後、楽園の生存者の平均年齢は、776日(人間換算で76歳)に達し、超高齢化社会になります。そして、1780日後に、最後のオスが死亡し、楽園のマウスは全滅します。

楽園の群れに異変が起きた原因は、格差と階級が生まれた事でしたから、個体数が減少すれば、また群れが再生するような気もしますが、実際には、二度と復活しませんでした。その原因は、個体数の増加が止まった頃には、殆どの新生児マウスが、従属階級の引きこもりマウスに育っていて、そもそも生殖に関心が無く、社会的に去勢された状態になっていました。

この社会実験のユニバース25は、その名前の通り、25回繰り返されました。その中で、違う結果になった事は、一度もなく、全ての実験で、最終的に群れは全滅しました。生存が保証された、楽園という世界が誕生しても、生物は生存する事に興味を失ってしまい、最終的には絶滅する事がマウスの実験で証明されました。

この実験から何を感じるかは、人それぞれでしょうが、とても恐ろしい話だと思います 。』