中国、太平洋諸国との安保合意見送り 対米関係配慮か

中国、太平洋諸国との安保合意見送り 対米関係配慮か
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『【シドニー=松本史、北京=羽田野主】南太平洋の島しょ国、フィジーを訪問中の中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は30日、地域10カ国の外相らとオンラインで「中国・太平洋島国外相会合」を開いた。中国が目指していた10カ国全体との安全保障協力の強化に向けた協定案は土壇場で合意が見送られた。秋の共産党大会を前に、米国を刺激して対米関係を悪化させるのを避けたとの観測も出ている。

中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は30日、同外相会合に書面でメッセージを寄せた。「国際情勢がどのように変わろうと中国はずっと太平洋の島国の良き友人だ」と強調。「中国と太平洋の島国の運命共同体を構築していきたい」と結んだ。

外相会合には中国と国交を持つ太平洋島しょ国の外相らが参加した。今回は2021年10月に続き2回目だ。

中国が目指した安保協力強化の合意に対しては、米国と安保上の関係が深いミクロネシア連邦が事前に書簡で「地域の安定を脅かす」と反対を表明していた。豪公共放送ABCは外相会合後、関係者の話をもとに「中国はいったん、提案について棚上げする」と伝えた。中国側は提案について今後も地域と交渉を続ける方針を示したとしている。

外交上のメンツをことさら重視する中国が自らの提案を棚上げするのは異例だ。緊張が高まる米中関係と共産党内の権力闘争が影響しているとの見方もでている。

党内では米国との対決も辞さない強硬派と、融和を探る穏健派が混在している。とくに今年の秋は習氏が3期目を目指す5年に1度の党大会があり、対米外交は大きな争点になり得る。バイデン米政権は米中首脳協議の開催を探っているとの観測がでており、太平洋で米国をこれ以上刺激しないように、いったん提案を棚上げした可能性がある。

実際に中国メディアはここのところ対米批判を抑制気味だ。中国共産党の機関紙、人民日報は28日付の重要コラム「鐘声」で「中国は米国と競争するつもりはなく、相互尊重を基礎に中米関係の発展に努めている」と主張した。首脳協議に向けて環境整備を進めているとみられる。

会合後に王氏と共に記者会見したフィジーのバイニマラマ首相は「中国は(外相会合に)参加した10カ国にとって重要なパートナーだ」と述べた。そのうえで「新たな地域協定に関する議論では、我々は常に(参加国の)意見の一致を優先する」との立場を説明した。
王氏は26日に訪問したソロモン諸島を皮切りに、キリバス、サモアを経てフィジー入りした。中国は4月に安保協定を結んだソロモンと病院建設に関する書面を交わし、キリバスではインフラ開発や医療品支援など10の文書に署名した。サモアとは外交関係強化に向け経済・技術面での協力で合意したほか、警察学校の建設に関する書面も交換した。

太平洋島しょ国と歴史的に関係が深いオーストラリアと米国はこうした中国の動きに警戒を強めている。23日に豪新首相に就任したアルバニージー氏は外相のウォン氏を26日からフィジーに派遣。ウォン氏は27日にバイニマラマ氏と会談した。

米国も26日、フィジーが米国主導の新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」に参加すると発表している。秋の共産党大会終了後、地域を巡る米豪と中国の勢力争いは一気に激しさを増す可能性がある。

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