[FT]全米ライフル協会、テキサスで集会 政治力衰えず

[FT]全米ライフル協会、テキサスで集会 政治力衰えず
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『わずか1年余り前、全米ライフル協会(NRA)は内紛と破産申請に揺れ、米国内での影響力がついに衰えたかに見えた。
27日、テキサス州ヒューストンで開催された全米ライフル協会の年次大会で演説するトランプ前大統領=ロイター

だが、27日から米テキサス州ヒューストンで開催されたNRAの年次総会には、トランプ前大統領を含む数万人の支持者が集結し、銃を持つ権利を主張する同協会の変わらぬ政治力の強さを示した。

同州の小学校では24日に多数の死者を出す痛ましい銃乱射事件が起きたばかり。専門家たちは、NRAは組織内に問題を抱えながらも、その政治力に衰えは見られないと指摘する。

「NRAは今も財政的、法的に混乱が続いている」と話すのはニューヨーク州立大学コートランド校の政治学教授で、銃規制に関する著書も数冊あるロバート・スピッツァー氏だ。「それでも、声明を出し続け、政治家への献金を続け、影響力を振るい続けている」

NRAの創設は1871年。だが政治力を持ったのは、17歳の時に15歳の少年を射殺したハーロン・カーター氏がトップになった1977年以降のことだ。同氏の下でNRAは会員数を3倍の300万人に増やし、銃の所持を規制しようとする試みとの闘いに資源を集中させた。

NRAの献金とロビー活動は、かつては超党派的な取り組みだった。しかし近年は、共和党との結びつきが決定的に強まっている。
政治資金受領トップ100人中98人が共和党議員

政治資金の動きを調べる非営利組織オープン・シークレッツが公開情報をもとに集計したNRAの献金を受領した連邦議会議員のリスト(1989年以降)では、上位100人のうち98人が共和党議員だ。

直近のテキサス州での銃乱射事件後も、銃規制の強化を訴える民主党は、現時点で共和党幹部を1人も説得できていない。
ミット・ロムニー上院議員は議員としてNRAから1994年以降通算1350万ドルの政治献金を受け取った=ロイター

NRAから最も献金を受けているのは共和党のミット・ロムニー上院議員(ユタ州選出)で、累計額は1350万ドル(約17億円)を超えている。そのロムニー氏は、銃購入者の身元調査を拡大する法案について、修正されなければ支持しないと述べている。

NRAから累計560万ドルの献金を得ているトム・ティリス共和党上院議員(ノースカロライナ州、リストで3位)は、こう語っている。「誰も銃を持たなければ、全てが解決する、といった反射的な対応は避けなければならない」

NRAによる献金の累計額が460万ドルのロイ・ブラント共和党上院議員(ミズーリ州、同4位)は、民主党上院トップのチャック・シューマー院内総務に対し、銃規制法案を急げば(他の法案審議でも)「反対」が相次ぐだろうと警告した。

NRAは共和党の大統領候補に大量の資金を注ぎ込んできた。2016年の大統領選ではトランプ氏の支援に3100万ドル超を投じた。

トランプ氏は27日にNRA年次総会で、「様々な銃規制の施策が左翼から出されているが、それがあっても(テキサスでの)惨劇の防止に役立たなかっただろう」と述べた。
減少する政治資金

だが最近、NRAは財政難が深刻で、政治への支出を抑制している。

NRAの税務書類によると、収入は16年以降、ほぼ25%減の2億8200万ドルに落ち込み、会員数は600万人弱から490万人弱まで減っている。20年の大統領選では、再選を目指したトランプ氏への資金提供は1700万ドルにとどまった。

その一方で、NRAのウェイン・ラピエール最高経営責任者(CEO)は協会の元ビジネスパートナーの1人から、会員の金を「個人の貯金箱」のように使っていると告発された。

ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官は20年、組織の広範な腐敗を指摘し、NRAの解散を求めて提訴した。同長官によると、NRAはラピエール氏が個人的に使っている旅行会社に1350万ドルを支払い、同氏とその妻、めいのためにプライベートジェットをチャーターし、同氏はバハマへの旅行の途中にNRAの取引先のヨットを使ったという。ラピエール氏は訴えに対し、「法と規制上の権限を武器に利用している」と批判した。

NRAはフィナンシャル・タイムズのコメント要請には応じなかったが、ジェームズ氏の訴えは政治的な思惑があると発言している。同氏は、NRAの登記先をニューヨークからテキサスへ移すため、21年に米連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請した。裁判所はこの申し立てを退けた。

ヒューストンでのNRA総会の会場周辺に集まって抗議する人たちは、州内の小学校で銃乱射事件が発生した直後に、「銃と装備の14エーカー(約5万7000平方メートル)の会場」と銘打って、協会総会を強行したことを非難した。

「恥ずべきこと」と、総会の開催に抗議していたヒューストン都市圏在住のキム・ミルバーンさんは話した。「1週間か2週間、延期できたはずだ。亡くなった子どもをまだ埋葬していない人もいるのに」

それでも、会員たちは、NRAへの熱意を失っていないようだった。

テキサス州在住の会員であるカイル・キャンベルさんは「財政問題を掘り下げれば、何か良からぬことをした人間がいるはずだ」という。それでも、「NRAは(武器を持つ権利を定めた合衆国憲法)修正第2条に対する全ての戦いの最前線にいるので重要だ」と話した。
世論は銃反対でも、銃規制は相次ぎ後退

最近の世論調査によると米国人の過半数が銃規制強化に賛成している。それでも、NRAは政策面で勝利を収め続けている。

04年に当時のブッシュ大統領(第43代)は、対人殺傷力の強い銃の規制を失効させた。米連邦捜査局(FBI)と米疾病対策センター(CDC)の統計によると、それ以降、銃による殺人事件は2倍に、「銃乱射事件」は4倍に増加した。13年にはNRAの反対が決定的な力となり、民主党のジョー・マンチン、共和党のパット・トゥーミー両上院議員が提出した銃の購入者に対する身元調査を拡大する法案が否決された。

NRAは近々、近年で最大の勝利を手にする可能性もある。公共の場で銃を携行することを制限するニューヨーク州の規制は憲法が保障する権利の侵害にあたるとして、同州のライフル・アンド・ピストル・クラブが起こした訴訟について、保守派の判事が多数を占める連邦最高裁が年内に判断を示す見込みだ。

多くの専門家は、NRAの政治活動が成功してきた大きな理由は、銃規制の論点を政策から引き離し、文化的な問題に移した点にあると指摘する。

コネティカット大学のケリー・レイシアン教授(公共政策)は、「NRAは数十年かけて、銃は米国社会のアイデンティティーの一部だという物語を作り上げた」と話す。

アリゾナ大学のジェニファー・カールソン教授は、さらにこう指摘する。「NRAが生み出した運動、NRAが種をまいた銃の文化は、NRAがあっても、なくても存続するだろう」

By Kiran Stacey, Justin Jacobs, Caitlin Gilbert and Joshua Chaffin

(2022年5月28日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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