フィリピン次期大統領、南シナ海重視の姿勢 中国けん制

フィリピン次期大統領、南シナ海重視の姿勢 中国けん制
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM272MJ0X20C22A5000000/

『【マニラ=志賀優一】フィリピンのフェルディナンド・マルコス次期大統領が、南シナ海の領有権問題で中国に譲歩しない姿勢をアピールし始めた。経済関係を重視してきたドゥテルテ現政権の対中融和路線を修正する可能性がある。海軍も南シナ海に面する新たな基地の利用を始め、中国へのけん制を強めている。

6月末に大統領に就くマルコス氏は26日にフェイスブックで公開したメディア取材の映像の中で、海洋権益について「中国に対して断固として(立場を)伝えていく」と明言した。5月上旬に投開票した大統領選後に外交や安全保障の方針に言及したのは初めてだ。

マルコス氏は国家の主権や領有権に「交渉の余地はない」と強調し、中国による一方的な領有権の主張に厳しい姿勢で臨む構えを示した。中国は南シナ海の実効支配を強めている。2021年にはフィリピンが排他的経済水域(EEZ)と主張する海域に自国船を停泊し続けたほか、中国海警局の船がフィリピン船に放水銃を撃つ事案も発生した。

16年に国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所は南シナ海での中国の領有権主張を否定する判決を下した。マルコス氏は「領有権を主張し続けるために(判決結果を)使用する」と語った。

ドゥテルテ大統領は同判決を巡り「本当の意味で仲裁というものはない」と話し、融和的な対中姿勢を維持してきた。マルコス氏はドゥテルテ氏の方針を踏襲するとみられてきたが、今回の映像を通じて、現政権より領有権問題を重視する姿勢を打ち出した格好だ。

フィリピン海軍もマルコス政権の発足をまたずに動き始めた。海軍は25日、北部ルソン島サンバレス州のスービック湾で新たな基地の運用を始めたと発表した。同湾は南シナ海に面し、1992年まで域内で最大規模の米軍基地があったことで知られる。

新たな基地は約100万平方メートルを有し、中国が実効支配するスカボロー礁(中国名・黄岩島)に近い。経営破綻した韓国・HJ重工業(旧韓進重工業)の子会社がフィリピンで運営してきた造船所の土地の一部を利用し、フリゲート艦や巡視船、揚陸艦の入港を見込む。南シナ海に自国艦船を出航しやすい新基地で「海軍の海洋業務を拡大する」としており、中国の軍事活動をけん制する狙いだ。

今後は同盟国である米国とどれほど軍事的協力を強めるかが焦点となる。バイデン米大統領は12日のマルコス氏との電話協議で「米フィリピンの同盟関係の強化を継続する」ことを求めた。

マルコス氏は対米外交の方針を明らかにしていないが、米国との間には「過去100年以上にわたり強固で有益な伝統的な関係がある」と話す。ドゥテルテ政権下では米軍の活動を認める「訪問軍地位協定」(VFA)を継続しており、スービックの新基地を米軍が利用する可能性もある。

とはいえ、フィリピンにとって中国(香港含む)は最大の輸出相手国でもあり「我々は中国と戦争はできない」(マルコス氏)というのが本音だ。マルコス氏は中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と18日に電話協議した後、「両国の関係を前進させることを話し合った」と述べた。』