「ドル連動」仮想通貨の安定、規制の焦点に

「ドル連動」仮想通貨の安定、規制の焦点に 識者に聞く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN27EO00X20C22A5000000/

『世界の暗号資産(仮想通貨)の価値が急速に減少している。大規模な金融緩和であふれたマネーが時価総額を押し上げていたが、投資家がリスク回避姿勢を強めたことで資金の逆回転が一気に起きた。法定通貨との連動を目指すステーブルコインの安定性についても、懸念を払拭できていない。デジタル資産に詳しい投資担当者や元規制当局者に今後の展望を聞いた。
「アルゴリズム型」安定通貨、当局の監督強まる

マイケル・ピオワー氏(元米SEC委員長代行)

ピオワー元米SEC委員長代行

米ドルなどの法定通貨と価値が連動するように設計されたステーブルコインである「テラUSD」が急落した。米金融当局は今後、裏付け資産を持たないアルゴリズム型(無担保型)の監督に、より焦点を当てるようになる。米大統領直轄の作業部会が2021年11月に出した報告書は、法定通貨に交換できるステーブルコインに特化した内容で、アルゴリズム型は脚注や図表で触れただけだった。

バイデン大統領は3月、デジタル資産に関する大統領令に署名した。その影響を正確に説明するのは時期尚早だ。各政府機関に報告書を書かせたあとに、実際に政府がどう動くかがカギとなる。これまで米証券取引委員会(SEC)や米連邦預金保険公社(FDIC)、米連邦準備理事会(FRB)などが独自に動いていたが、大統領直轄の作業部会によって多少調整されたようだ。

バイデン政権の最優先課題は中央銀行デジタル通貨(CBDC)とみている。パウエルFRB議長は、もし米国がCBDC創設を進めるつもりなら、FRBが米議会から明確な権限を得る必要があると考えている。3月の大統領令がどのような結果をもたらすのか、議会がそれに同意するのかしないのか、見ていく必要がある。

暗号資産が証券か否かという未解決の法的問題がある。SECが監督する権限を持つかどうかにも直結するので非常に重要だ。論争の決着が見えないなかで、SECは法執行部門に暗号資産の専門部署を設置すると発表した。暗号資産を巡る問題にSECとして力を入れて取り組んでいく、というメッセージだろう。

米有権者と仮想通貨マネー、議会を動かす

ルミ・モラレス氏(米投資会社DCG・ベンチャー成長投資責任者)
DCGのモラレス氏

デジタル・カレンシー・グループ(DCG)は10年近くデジタル資産とブロックチェーン分野に投資してきた。ボラティリティーは目新しいものではない。ブロックチェーンとデジタル資産が未来の経済に対して価値を生み出すとの信念は揺らがない。最近の価格下落が投資減速につながるか分からないが、歴史が示すように、最高の投資や企業のいくつかは弱気相場でつくられる。

3月の大統領令で、米政府がデジタル資産分野で技術的なけん引役になる意思を示した意味は大きい。仮想通貨業界の関係者は長年、米国で規制環境をめぐる先行きについて悲観的に考えていたからだ。大統領令によって政府から明確な方向性が出され、少なくとも米国で仮想通貨関連の企業が閉鎖されたり、国外に追放されたりしないことが分かった。

11月に米議会の中間選挙がある。米国では若い有権者に限らず、仮想通貨を保有する人が多いことに議員が気づき始めている。選挙に勝つためにはお金が必要だ。仮想通貨で稼いだ人が大勢いて、仮想通貨の開発の先行きについて主張する彼らの声は大きくなっている。結果的に規制に影響が出てくることになる。
安定通貨、裏付け資産公表だけでは不十分

ロス・デルストン氏(弁護士、元米FDIC銀行規制担当)
元米FDIC勤務のデルストン弁護士

ステーブルコインの問題は(アルゴリズム型の)テラUSDに限らない。裏付けが米ドル建ての資産であると公に発表しても、コイン暴落時に対応できるのか分からない。米ドル建て資産の全部、または一部は市場で容易に換金できるものか、信頼できる会計事務所やその他企業によって独立的に検証されているのか、といった点が重要だ。

3月の大統領令では、どこに準備金を置いているか明確でないステーブルコインの発行体に焦点を当てていた。例えば最大の発行体である「テザー」は疑わしい投資や非流動的な資産につながっているとして批判を浴びてきた。

銀行預金に裏打ちされたステーブルコインであっても、あまりにも多くの保有者が換金を求めた場合、大手銀行でさえも要求に応えられず、流動性危機に陥るかもしれない。米財務省は不測の事態を心配している。私がFDICに勤務していた1980年代後半の米銀危機でも同じようなことが起きた。

(聞き手はニューヨーク=宮本岳則、吉田圭織)』