[FT]ロシア軍の「限界」を露呈するセベロドネツク攻防戦

[FT]ロシア軍の「限界」を露呈するセベロドネツク攻防戦
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB275P80X20C22A5000000/

 ※ 「M777」とかが、届いて使えるようになったとしても、ドンバス地域の「奪還」は、難しいんじゃないか…。

 ※ 今度は、逆に、「そこの住民」が人質に取られるような形になるだろう…。

 ※ 「国土の一体性」の大義の前に、「その地域の住民」を犠牲にするのか…。難しい判断が迫られる…。

 ※ ヘルソン州を取られることは、阻止できるかもしれない…。

 ※ そうなると、クリミアの水源が押さえられるから、クリミア返還への圧力という策が使えるか…。

 ※ ロシアは、それに対抗して、クリミア大橋経由で、水道管でも敷設するのか…。

 ※ いずれ、巨額の費用がかかるだろうな…。

『ロシア軍はこれまでの1カ月間、ウクライナ東部ドンバス地方への攻撃に力を入れてきた。ウクライナ側は激しく抵抗しているものの、ロシア軍はあと25キロメートルほど前進することで、この地域を完全に包囲できる。

ウクライナ・ルガンスクで、セベロドネツク方面に向け、宣伝文書を詰めた宣伝弾を放つ親ロ派部隊の自走砲(24日)=ロイター

ウクライナ軍によると、(ドンバス地方のなかで)ルガンスク州セベロドネツクの周辺にはロシア軍による猛烈な砲撃が何日も続き、「最大規模の戦闘が続いた」。ウクライナ軍の防衛ラインは突破されつつある。

ロシア軍がセベロドネツクでウクライナの部隊を包囲できれば、3カ月間の攻撃で陥落させたばかりの同国南部マリウポリの港に次ぐ、2度目の包囲作戦の戦果になる。これはロシア政府にとって、象徴的な意義を持つ。セベロドネツクを制圧できればルガンスク州全体を支配できるからだ。同州は隣のドネツク州とともにドンバス地方を構成する。

ロシア軍は「ドンバス地方の制圧」に目標修正

それでもセベロドネツクは小さな地域だ。ロシア軍は4月半ば、ウクライナ側の激しい抵抗を受けて首都キーウ(キエフ)制圧の断念を余儀なくされた。それ以降、ロシア側の野心は大きく縮小した。ドンバス地方の一部は、ロシアが3カ月前、隣国ウクライナに侵攻する前から、親ロシアの分離独立派が支配していた。

セベロドネツクの攻防戦をみれば、ウクライナにおける戦闘が夏にかけ、どのような形で続いていくのかを予想できる。欧米の政府関係者やアナリストによれば、今後は過酷な消耗戦になり、ロシアとウクライナのそれぞれの部隊について、人員数と装備の差がかなり重要になる。

ルガンスク州知事は最近、地元のテレビで、ロシアによる「焦土作戦」の目的が「セベロドネツクを地上から消去する」ことだと指摘した。23日にはロシア軍の爆撃によりアゾット化学工場内の避難施設で4人が亡くなり、市内でもほかに4人が命を落としたと明らかにした。

ロシア軍は5月下旬、ドンバス地方の南部にある鉱業都市スビトロダルスクを制圧した。スビトロダルスクの防衛トップはウクライナのウェブサイト「フリーラジオ」で、ロシアの部隊が市長室にロシア国旗を掲げ、地元住民の書類をチェックするためのパトロールを始めたと明かした。親ロシアの分離派は、市内から「敵対的な要素を追い出している」と主張している。

ウクライナ軍の兵力、3日ごとに1000人喪失

英王立防衛安全保障研究所(RUSI)の軍事専門家、サミュエル・クラニーエバンス氏は「ロシア軍は消耗しきったわけでなく、無力な部隊でもない」と話す。「戦闘を続け、前進し、ウクライナ側に損害を与えている」

ウクライナ側の損害はかなり大きな規模なのかもしれない。ウクライナのゼレンスキー大統領は、1日に50~100人の同国兵士が命を落としている可能性があると話している。一般に死者の約3倍の人数の兵士が負傷するので、ウクライナ側は3日ごとに計約1000人に相当する兵力がそがれていると、クラニーエバンス氏は推定する。

ウクライナ軍は撤退せず、ロシア軍の前進を阻止することで、米欧から提供される兵器が友軍に届くまでの時間を稼いでいる。長距離砲が手に入れば、前線の背後に配置されるロシア軍の砲兵部隊を攻撃できる。

米国は計90門の長距離りゅう弾砲「M777」をウクライナ側に送った。だが、前線に届いたのは十数門にすぎないと伝えられている。ウクライナ兵はなお、この兵器を使いこなす訓練を受けているところだ。ゼレンスキー氏は、兵器の数でロシアはウクライナの20倍だと指摘した。

米欧側の高官は「ウクライナ軍はこんな状態で戦闘を続けることで、重要な軍事上の役割を果たしている」と説明する。「ロシア軍の力をそぎ、ウクライナ軍がほかの地域の防衛能力を高める時間を稼いでいる」

ロシア軍の死者数は侵攻当初からは減ったもようだ。ウクライナ側の資料によると、侵攻後の2カ月間で2万3000人が死亡したが、3カ月目は(1カ月で)6000人だった。

複数のアナリストによれば、ロシア兵の死者が減ったのは、同国軍がウクライナ側との直接の交戦を避け、迫撃砲を多用しているためだ。ロシア軍はウクライナ東部のポパスナ周辺にある丘陵地帯を制圧した。これにより、ロシアの砲兵部隊がセベロドネツクの周辺地域に激しい攻撃を加えられるようになった。

ロシアは「BMP-Tテルミナートル(ターミネーター)」と呼ばれる戦車支援のための戦闘車両を10台、配備した。大きな大砲を搭載する。身動きが取れなくなった友軍兵士の救出を支援するための射撃が主な任務だ。

当面の戦闘は膠着か

ロシア軍はなお、部隊に規模や装備を巡る問題を抱えている。ウクライナ軍によると、ロシアは複数の大隊について、破壊された装備の補充として、倉庫でほこりをかぶっていた旧式戦車「T-62」を投入した。陸軍の主力戦闘部隊、大隊戦術群(BTG)の再編も強いられている。ダメージを受けたほかのBTGから要員を移している。

ポーランドの軍事分析会社ロチャン・コンサルティングは、この事実が「(ロシア軍の)将兵の深刻な不足と、前方の部隊が作った戦場のスペースを利用して前進する編隊を組めない事実を物語っている」と指摘した。

複数のアナリストによれば、ロシア軍は攻撃の継続に苦労するかもしれない。だが、欧米とウクライナの当局者は、ウクライナ軍が保有する効果的な大型兵器は不十分だと主張する。ウクライナ軍の補強が整うまで、戦闘は膠着するかもしれない。ウクライナのレズニコフ国防相は24日、ウクライナの敵にとって「不快」な驚くべき内容を近く発表すると述べた。

「ロシア軍がようやくセベロドネツクを制圧した場合、次に何が起こるか」。ロシアを拠点とする軍事アナリストのパベル・ルジン氏は解説する。「戦略上は、ほとんど何も変わらない。(中略)ロシア軍の砲弾の大半は射程が25キロメートルに満たない。ロシアのプーチン大統領がウクライナのすべての都市を破壊することはできない」

By John Paul Rathbone and Max Seddon

(2022年5月25日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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