WWII後のすべての戦争で、1国が放ったよりも多い数のミサイルを、今回、ロシア軍は放っている。

WWII後のすべての戦争で、1国が放ったよりも多い数のミサイルを、今回、ロシア軍は放っている。

『William M. Arkin 記者による2022-5-25記事「Exclusive: Russia’s Air War in Ukraine is a Total Failure, New Data Show」。
https://st2019.site/?p=19654

    WWII後のすべての戦争で、1国が放ったよりも多い数のミサイルを、今回、ロシア軍は放っている。新記録が作られた。

 ゼレンスキーが先週挙げた数字は、「2ヵ月で2154発」である。

 有人攻撃機がSAMで撃墜され続けることに堪えられず、露軍は、その攻撃機を、地上の友軍確保線を越えて飛ばすことが、全ソーティの10%強にまで減っている。

 その代わりに、味方占領区の上空から放つ空対地ミサイル、制海権のある海域から放つ対地ミサイル、味方占領区の地上から放つ地対地ミサイル/誘導ロケット弾が多用される。有人機〔からの無誘導爆弾投下〕で長距離爆撃を敢行する場合も、それらのスタンドオフ・ミサイル攻撃のさなかに紛らせるようにして実施する。

 「ザトカ橋」の話。

 オスマントルコから1812にロシアが奪ったベッサラビアを、今はブジャクと称する。そことオデーサを、ザトカ橋が結んでいる。ドニエストル河の河口近くだ。

 ウクライナ人にとり、ブジャクは、ルーマニアへ通ずる、唯一の入り口である。(もうひとつ、北にもあったのだが、モルドバのロシア人に邪魔されるので、考慮外。)

 この鉄橋、中央部分の500フィートを、1日に5回、持ち上げて、大型船が黒海とドニエストル川のあいだを出入りできるようにする。

 今回、露軍がザトカ橋に初投弾したのは3月3日だった。
 それはクラスター爆弾で、有人機から投下されたのも初めてであった。
 投下機はウクライナ軍によって撃墜され、パイロットはエジェクトした。

 3月15日、こんどは露軍は海上からザトカ橋を艦砲射撃。

 多くの解説者が、露軍はオデッサに上陸作戦しようしようとしているのではないかと言ったが、違う。
 穀物を輸出するための黒海航路が使えぬため、ウクライナ人は、陸路で商品をルーマニアに搬出しようとしている。露軍は、それを阻止したいのである。

 4月26日、露軍は三度目の橋破壊を試みた。こんどは海上から巡航ミサイルが3発、発射された。

 そのうち1発は機械的故障で海に墜落。1発は橋を外してしまった。1発は橋桁の東端に命中したものの、ダメージは軽微であった。

 4月27日、1発の巡航ミサイルが発射され、こんどは鉄道を使えなくするダメージを橋に与えた。

 だがその翌日に復旧し、列車運行は再開された。

 5月3日、また3発の巡航ミサイルが橋に対して発射され、橋は完全に壊されたとウクライナ側が発表した。

 5月10日、なぜか露軍は、すでに壊れている橋を、さらに攻撃した。修復を妨害しようとした可能性がある。

 5月16日、2発の巡航ミサイルがザトカ橋に着弾。もう1発は発射直後に海上に墜落している。

 この不可思議な攻撃パターンは、露軍は爆撃から1週間しても「爆撃効果判定」ができないという情報分析力上の欠陥があることを示唆している。

 5月23日までの85日間で、ウクライナの全戦域にて、発射に成功した露軍のミサイルは、2275発であるという。
 そのうちイスカンデル・ミサイルは、630発(多くはベラルーシ国内から発射された)。

 DIAの人いわく。露軍が発射した10発のミサイルのうち2~3発は、飛翔そのものがうまく行かず、目標まで達していない。10発のうち2発は、着弾しても信管がうまく作動していない。10発のうち2~3発は、ちゃんと爆発しているが、目標を逸れている――と。
 トータルすると、だいたい6割は、役に立っていない。

 ウクライナ側の発表では、すでに110発のロシアの巡航ミサイルを、撃墜したそうである。これは、ウクライナの領空まで突っ込んできた巡航ミサイルの1割を撃墜できたことを意味する。

 DIAの人いわく。開戦から数日のうちは、露軍のミサイルは、ウクライナ軍の航空基地とSAM陣地を狙っていた。ついで目標が変更され、弾薬貯蔵所になった。ついで、石油貯蔵所、ついで、工場、そして交通結節点を狙うようになった。
 その印象は、場当たり的だ。攻撃には、執拗な徹底性も見られない。

 これがもし米軍による戦略的な航空攻撃であったなら、絶対にやることに決まっている「電力グリッド」と「民間の通信インフラ」の破壊を、ロシア空軍は試みていない。

 米空軍の人いわく。インターネットなどの通信を遮断してしまえばゼレンスキー発の宣伝や指揮統率の力も弱まるのに、露軍はそれをしようとすらしていない。不可思議である、と。

 ある退役米空軍将校にいわせると、ロシア空軍は米空軍より30年は遅れているのだという。

 開戦したあとで、刻々と、優先空爆目標と破壊レベル目標を再評価しまた再定義し続けなければならない。たとえば、あるインフラの機能を停めてやるためには、完全に破壊する必要がない場合もある。そこに投弾し続けるのは軍事資源の無駄遣いで、敵を助けることになってしまう。

 露空軍機は2万ソーティ出撃している。そのうち、ウクライナ軍支配域の上空まで進入したのは3000回未満である。
 明瞭に、地上の味方軍の頭上だけに、露軍航空機はその行動を縛り付けられている。

 〔陸軍と空軍は最上層において対等ではなく、陸軍の下級の地上指揮官が、空軍の上級の司令部に指図命令することがあたりまえで、その逆はゆるされないというロシア軍独特の大きな構造を示唆する。〕』