ダボス会議閉幕 ウクライナ、情報戦で優位狙う

ダボス会議閉幕 ウクライナ、情報戦で優位狙う
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR26EKR0W2A520C2000000/

『【ダボス(スイス東部)=白石透冴】世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)が26日、閉幕した。

ウクライナ政府にとってはロシアとの情報戦で優位を築く絶好の機会となり、クレバ外相など多数の政府関係者を送り込んだ。多くの討論会で侵攻が話題となり「有事の会議」の様相を呈した。

「砲撃の警報を毎日聞く。これが私たちの日常だ」。26日登壇したウクライナの首都キーウ(キエフ)のクリチコ市長は、突然自分の携帯電話に記録してあった警報のサイレンを会場で再生した。市民が常に脅威にさらされていると訴えた上で、ウクライナで起きているのはロシアによるジェノサイド(大量虐殺)だと非難した。

軍事費や兵数でロシアに劣るウクライナは、約2年ぶりの対面開催となったダボス会議を情報戦の場として活用した。ゼレンスキー大統領がオンラインで演説したほか、クレバ外相、フェドロフ・デジタル相、スビリデンコ第1副首相兼経済相などが各種討論会に参加した。米CNNによると、フェドロフ氏が国を離れるのは2月の侵攻以来初めてのことだ。

ウクライナ政府団が中心に据えたメッセージは3つ。対ロ制裁の厳格化、黒海封鎖の解除、ウクライナへの武器提供の加速だ。スビリデンコ氏は日本経済新聞の取材に、黒海封鎖が続いて穀物を輸出できなければ「世界で近く食料危機が訪れる」と訴えた。会場の外では、もともと「ロシアハウス」があった場所を借り、「ロシア戦争犯罪ハウス」を設営してロシア軍による残虐行為の写真を展示した。ダボス会議を巡る情報戦では、ウクライナに軍配が上がったといえそうだ。

ウクライナがこれだけ情報発信できた背景には、WEFの支持がある。従来WEFは国際関係で中立の立場を取ってきたが、ロシアを強く批判する立場に回った。ロシア関係者の出席を認めず、WEFのボルゲ・ブレンデ総裁は26日の閉幕スピーチで「孤立するより、協力する方が我々は強くなれる」と語った。孤立を深めるロシアへの批判が念頭にあったとみられる。討論会も「冷戦2.0」「地政学の見通し」など侵攻への議論を促すテーマがずらりと並んだ。

ただウクライナが国際社会からの揺るぎない支持を集められているかといえば、実はそうではない。ロシアに制裁を課したのは欧米やアジア太平洋の一部の国にとどまる。中国やインド、中東アフリカ、南米諸国はそれぞれの事情で制裁を見送っており、ロシア産エネルギーの購入も続いている。ロシア寄りのニュースを報じるロシアメディアの海外での影響力を指摘する分析もある。ウクライナとロシアの情報戦は今後も激しさを増しそうだ。』