中国、南太平洋での勢力拡大へ 外相異例の長期訪問

中国、南太平洋での勢力拡大へ 外相異例の長期訪問
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『【シドニー=松本史、北京=羽田野主】中国が南太平洋島しょ国での影響力拡大に向けた動きを加速させる。中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は26日から10日間かけ、島しょ国7カ国と東ティモールを訪問する。地域で米豪と中国の対立が先鋭化する中、オーストラリアの新政権発足直後に中国は先手を打って地域への関与強化を打ち出した。

王氏が最初に向かうのはソロモン諸島だ。現地関係者によると、4月に締結した安全保障協定について正式な調印式を行う。経済関連の協定締結も取り沙汰されている。

「両国関係にとって画期的な出来事だ」。ソロモンのソガバレ首相は王氏の訪問をこう称賛し、中国を「重要な開発パートナー」と評した。ソロモンから約2000キロと近く、歴史的な関係が深い豪州は懸念を強める。

事前に流出した安保協定草案にはソロモンへの中国軍の派遣や艦船寄港を認める内容が含まれていた。豪公共放送ABCは、中国国有企業がソロモン政府と、同国の滑走路改修を支援する覚書を結んだと報じた。

こうしたインフラは長期的に軍事転用の可能性が否定できない。ソロモン側は中国による軍事基地建設を否定するが、軍事拠点化に向けた動きが強まるとの見方もでる。

豪州では21日に総選挙が実施され、政権交代が決まった。「中国が太平洋でより強い影響力を行使しようとしている」。労働党政権のアルバニージー新首相は24日に出席した日米豪印4カ国の「Quad(クアッド)」首脳会議後、こう警戒を示したばかりだった。

選挙戦を通じ、労働党は中国とソロモンの安保協定締結を許したモリソン政権を批判し、地域への関与を深める方針を示してきた。習近平(シー・ジンピン)指導部はこうした動きを警戒。クアッド出席などアルバニージー氏が慌ただしく外交日程をこなす中、豪新政権の機先を制して王氏を派遣する。

王氏はキリバスやトンガも回る。太平洋島しょ国14カ国のうち中国と国交を持つのは10カ国だ。そのうち7カ国を訪問する長期訪問となる。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)はソロモンに加え「キリバスともう1カ国」が中国と安保協定に向けた交渉をしていると報じた。

王氏がこのタイミングで訪問するのは、日米豪印の首脳が24日に中国を念頭に海洋監視を強める方針を確認し、警戒心を強めているためだ。米国との長期対立をにらむ習指導部は西太平洋への影響力拡大を目指している。米同盟国の豪州を抑え込む上で、南太平洋の島しょ国との連携は不可欠とみている。

王氏は東南アジアの東ティモールも訪れる。中国企業が多く進出する同国では中国が年々影響力を強めている。南太平洋の島しょ国と合わせて押さえることで、豪州北部のダーウィンにある豪軍基地に東西からにらみを利かせることができると判断している。

地域の動きに詳しい豪シンクタンク、ロウイー研究所のミハイ・ソラ氏は「王氏の訪問は、この地域での中国の影響力拡大に歯止めをかけたい豪州の動きを阻む目的もある」と指摘する。一方、豪外相のウォン氏は25日、フィジーを26日に訪問し、バイニマラマ首相と会談すると発表した。地域での米豪と中国の勢力争いは今後、激しさを増しそうだ。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/Indo-Pacific/China-gets-jump-on-Australia-s-new-government-with-Pacific-tour?n_cid=DSBNNAR 

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