シンガポール首相「世界は分断」「侵攻は危険な前例」

シンガポール首相「世界は分断」「侵攻は危険な前例」
アジアの未来
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB259A30V20C22A5000000/

『アジアの政治や経済について討議する、第27回国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)が26日午前、都内で開幕した。シンガポールのリー・シェンロン首相は会場で講演し、ロシアによるウクライナ侵攻や米中の貿易対立で「世界は分断されている」と危機感を語った。

リー氏はロシアのウクライナ侵攻について「国連憲章に反するもので、国際法に明確に違反する」としたうえで「世界秩序に大きな脅威を与えている」と述べた。「シンガポールのような小国の安全と存続を脅かす危険な前例だ」とも指摘した。「平和と安定を維持し、紛争の可能性を減らすために、アジア各国が事前に協力する方法を考えていくべきだ」と強調した。

米国と中国の間の貿易戦争など米中関係の悪化は「アジア太平洋地域にも影響している」と述べ、「アジア諸国が2つの陣営に分断されているようでは良い結果は得られない」との見解を示した。緊張関係が今後も続けば「技術やサプライチェーン(供給網)の分断がさらに進み、予期せぬ結果を招くことになる」と危機感を示した。

シンガポールは23日に米国主導で発足したインド太平洋経済枠組み(IPEF)に参加した。米国はIPEFに関税交渉を含めず、議会の承認を不要とした。

リー氏は「IPEFには貿易自由化や市場アクセスは含まれなかった。従って(米国が参加していない)環太平洋経済連携協定(TPP)の代わりにはならない。いつの日か米国の政治状況が許せば、IPEFが米国とアジアのパートナーを含む自由貿易協定(FTA)につながることを期待している」と語った。

シンガポールはTPPの2022年議長国を務めている。TPPに加盟を申請した中国については「経済的影響力は大きく、拡大している」と述べた。広域経済圏構想「一帯一路」などを例示したうえで、「中国が建設的かつ互恵的な方法でパートナーに関与することを期待する」と語った。

シンガポールでは独立以来、人民行動党(PAP)が一貫して政権与党の座を占めており、首相の在任期間も長期化している。同国の民主主義のあり方について問われたリー氏は「シンガポールでうまくいくことをやっているだけだ」と述べたうえで、「これから先の選挙でどうなるかは分からない。だが、私と私のチームの今の責任ははシンガポールをきちんと統治することだ」と語った。

アジアの未来は27日までの2日間。今回のテーマは「分断された世界をつなぐ、アジアの新たな役割」。米中貿易戦争やロシアによるウクライナ侵攻を受けて世界が分断されることへの危機感が強まるなか各国の首脳や閣僚、第一線の有識者らがアジアの担う役割について議論する。

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伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事
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別の視点

シンガポールは外資受け入れや人材獲得に開放的だが、政治面では人民行動党が建国以来一貫して政権を担う。「建国の父」の子息リーシェンロン首相の在任は18年にわたる。

ロシアへの西側の制裁に参加し、ロシアの「非友好国・地域」リストに入る唯一のASEAN加盟国だが、国連で行われた3回の対ロシア決議では人権理事会決議は「棄権」、西側とは異なる立場をとった.バイデン大統領が開催した民主主義サミットにも招待されなかった.

Q&Aでシンガポールの政治システムについて問われ、国毎に上手く行くやり方は異なり、国民の望んでいる政治を行っていると述べた首相。中国の体制を非民主的と批判する西側とは異なる意識が伺われた。

2022年5月26日 12:33 (2022年5月26日 12:44更新)

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蛯原健
リブライトパートナーズ 代表パートナー
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ひとこと解説

「同国の民主主義のあり方について問われた」との事だが、日本ではよくシンガポールにつき誤解されているが、正常に機能する選挙が行われ野党も存在するなかで選ばれた党によって首相が選任されている。

なお既に党ではリー首相の後継者として今回のコロナタスクフォースで活躍し知名度と人気を上げたローレンス・ウォン財務相が指名されており元首相の続投は明確に否定されている。

2022年5月26日 12:32

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梶原誠
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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ひとこと解説

「米国に駐在した人は中国に赴任させない。逆もまたしかり」。つい先ほどこんな企業の実態を聞いたばかりです。

軍事に転用可能な技術が漏洩する可能性に米中両側が神経をとがらせているからです。

この状態が続けば米中両方の技術や文化を理解する人材は減っていくでしょう。分断はサプライチェーンの再構築という目に見えるコストを超えて、企業に負担を強いています。
2022年5月26日 11:57』