米インドネシア演習、南シナ海防衛にらむ 陸自が初参加

米インドネシア演習、南シナ海防衛にらむ 陸自が初参加
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『米国とインドネシアの陸軍が8月に計画する合同演習で、南シナ海のインドネシア領ナトゥナ諸島が拠点の一つになる見通しだ。

周辺に天然ガスが埋蔵され、中国が事実上の主権を主張する「九段線」に近い。ほかの2カ所の演習拠点のうち少なくとも1つに陸上自衛隊が初めて加わる。オブザーバーを含め計14カ国が参加する見通しで、南シナ海の実効支配を進める中国をけん制する。

米国とインドネシアの合同演習「ガルーダ・シールド」は2007年に始まった。関係者によると、22年は8月1日から2週間の予定で、米国の主要同盟国である英国、オーストラリア、カナダのほか、インドネシアの隣国のシンガポール、マレーシアなども参加する。

参加人数は3000人と見込まれている。21年の同時期に実施した前回の同演習より5割多く、過去最大の規模になりそうだ。

演習拠点はスマトラ島南部のバトゥラジャ、カリマンタン島(ボルネオ島)東部のアンボラワンが21年と同じ。新たに南シナ海南部のナトゥナ諸島を加える方向で調整している。同諸島は中国が事実上の主権である「管轄権」を主張する九段線の外側だが、近辺には中国の漁船や公船が出没する。インドネシアは通常でも同諸島に部隊を駐留させている。

ナトゥナ諸島周辺のインドネシアの排他的経済水域(EEZ)は一部、九段線の枠内と重複する。インドネシアは米国と同諸島付近で上陸訓練の実行も検討する。実施する場合、敵に占領された島の奪回を想定するとみられる。

ガルーダ・シールドでは「追い越し演習」と呼ばれる海上での意思疎通のほか、海難救助、簡易滑走路を利用した訓練なども予定する。参加国が様々な組み合わせで実施するとみられる。陸自は米国、インドネシアの両軍との共同演習を計画している。太平洋の米領グアムで実施している米軍との訓練と連動性を高める狙いだ。

ロシアが2月下旬に始めたウクライナ侵攻は陸上部隊によって敵の進軍を食い止める重要性を浮き彫りにした。一般論として、海外での共同訓練によって有事の際の対処能力を高め、各国と協力関係を築くことは抑止力の維持に欠かせない。

陸自も共同訓練の充実を意識する。陸自で島しょ防衛にあたる水陸機動団は2~3月、日本の関東南方から米グアム北方にかけての空・海域で海自の護衛艦、米海軍・海兵隊と共同で射撃などを訓練した。

南シナ海ではマレーシア、ベトナムなどが中国と領有権を争う。インドネシア領が九段線の外側にあるのは中国も認めているが、両国はナトゥナ諸島と周辺を巡り緊張関係にある。東南アジア各国はウクライナ侵攻の地域への影響を注視している。

中国は最近、南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島の3礁を完全に軍事要塞化した。国際社会の関心が欧州に向いている「すき」を突いた格好だ。

東南アジア各国は安全保障で米国の抑止力に頼らざるを得ない。

8月のガルーダ・シールドには、米国が21年に新設した安保協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」のメンバーである英豪も加わる。だが、中国をけん制する枠組みの「Quad(クアッド)」に日米豪とともに名を連ねるインドは、現時点で参加リストに載っていない。

(ジャカルタ=地曳航也、根本涼)

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Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/Indo-Pacific/Indonesia-U.S.-eye-South-China-Sea-hot-spot-for-military-drills?n_cid=DSBNNAR 』