アジア安保、枠組み手探り クアッドは緩やかな連合体

アジア安保、枠組み手探り クアッドは緩やかな連合体
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『日米豪印による「Quad(クアッド)」首脳会議は24日にまとめた共同声明で、中国を念頭に海上警備の体制を強化する方針を記した。

経済に力点を置いてきた協力分野を安全保障に広げた。米国は英豪との軍事枠組み「AUKUS(オーカス)」と両輪で中国に対抗する多国間の枠組みをめざすが、アジアでの安保体制構築は手探りが続いている。

バイデン米大統領は24日、首相官邸で開いたクアッド首脳会議で「米国はインド太平洋地域における強力で安定した永続的なパートナーでありたい」と表明した。「民主主義と権威主義の戦いだ」とも語り、中国とロシアに対抗する姿勢を明確にした。

岸田文雄首相は会議後の記者会見で「力による一方的な現状変更はいかなる地域においても許してはならない」と強調。ロシアによるウクライナ侵攻に加え、インド太平洋地域で覇権主義的な行動を強める中国にどう対峙していくかが会議の重要な議題になった。

同日にまとめた共同声明は、南シナ海や東シナ海での国際法順守を求め、軍事拠点化、海上保安機関や民兵の危険な使用への反対を明記した。中国に照準を合わせる姿勢を色濃く示した。

中国の民兵や漁民らが居座って相手を威嚇し、軍事衝突に発展しない程度に徐々に実効支配を進める「グレーゾーン戦術」と呼ばれる手法を意識しているもようだ。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けた世界の安全保障環境の変化はロシアと密接な防衛協力関係にあるインドの姿勢にも影響を与えたとみられる。

バイデン氏とインドのモディ首相は24日の個別会談で、防衛協力の強化についても議論した。モディ氏は「米防衛企業にインドで生産協力して欲しい」と求めた。

インドは、過去5年の間に全兵器の約5割をロシアから調達している。ロシアへの防衛面の過度な依存の引き下げは喫緊の課題となっている。

ただ、会談でロシアを強く非難したバイデン氏に対し、モディ氏は明確な批判を避けた。兵器生産の要求を除くと、安保協力の具体像はみえていない。

そもそもアジアでの米国の安保戦略は、基地を構える同盟国の日本や韓国など2国間の枠組みに軸足を置いてきた。2021年に発足したバイデン政権は多国間協力を通じて中国抑止をめざすとして、同年にクアッド首脳会議を開催、オーカスを創設した。

しかし、クアッドは米欧の30カ国が加盟する軍事同盟「北大西洋条約機構(NATO)」とは根本的に性質が異なる。NATOは北大西洋条約の第5条で締約国への武力攻撃を「全締約国への攻撃とみなすことに同意する」と定め、防衛義務が生じる。クアッドはNATOのような軍事同盟ではなく、緩やかな連合体だ。

一方、オーカスを構成する米英豪はいずれも機密情報を共有する英語圏の5カ国の枠組み「ファイブ・アイズ」の一員で、連携しやすい。発足時に決めたオーストラリアへの原子力潜水艦技術供与から、4月には極超音速兵器の開発など協力分野を拡大した。

各国が様々な事情を抱え、経済面での対中依存も大きいアジアで高いレベルでの安保協力を進めるメンバーを拡大するのは容易でない。岸田氏は24日、「オーカスに入ることは考えていない」と明言。参加国と2国間で連携を強化していく考えを示した。

(坂口幸裕、ニューデリー=馬場燃)

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

今回のサミットでは海上警備システムの構築で合意し、海上の船舶のトラッキングや監視が可能になるため、より安全保障の観点での協力が含まれている。

IPEFを含め、法の支配、民主主義を重視する国の間で開かれたインド太平洋地域の構築を目指すうごきがすこしずつ動き始めたようだ。

豪州と日本そして韓国は米国や西側との連携を深めていく強い意志をもっているが、インドやほかのアジア諸国については複雑で、それぞれの国の立場を十分理解し、丁寧なきめこまかい対応や対話が必要になっている。

時間をかけてこうしたネットワークに参加することが各国地域の経済・国益にかなうことを示しつつより深い協力体制を段階的につくることが重要だ。

2022年5月25日 7:37 』