同盟深化が促す日本の自立 戦時の首脳会談、変化映す

同盟深化が促す日本の自立 戦時の首脳会談、変化映す
政治部長 吉野直也
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA220U80S2A520C2000000/

『戦時の日米首脳会談はアフガニスタンとイラクでの戦争以来、ほぼ20年ぶりである。同じ戦時でも日米を取り巻く環境は大きく変わった。

最も異なるのは中国が米国の脅威になったことだ。国防費はこの20年間で8.5倍ほどに膨らみ、2030年ごろには東アジアの軍事力が日米を逆転するとの予測がある。

バイデン米大統領は23日、台湾有事の際、米国が軍事的に関与すると表明したうえで「我々の約束だ」と述べた。

中国の台湾侵攻の兆候はすでにある。日本経済新聞の調査で、中国が航空自衛隊の早期警戒管制機(AWACS)と同形状の構造物を新疆ウイグル自治区の砂漠地帯に置いていることがわかった。AWACSを仮想標的にしている疑いが濃厚だ。

戦後、日本の安全保障は米国が「矛」、日本は「盾」の役割を分担してきた。米国に抑止力を頼り、その分、日本は経済に集中して成長を遂げた。

ロシアのウクライナ侵攻はその考え方に再考を迫る。AWACSの仮想標的に象徴されるように中国は日米を一体でみなす。ウクライナ侵攻で世界は混沌としている。米国が日米安保条約をもとに自動的に日本を守ってくれるとは限らない。日本の自立した抑止力が欠かせない。

抑止力は軍事力だけではない。米欧のロシアへの経済制裁にロシアはエネルギー供給の停止で対抗している。経済と安保は密接不可分だ。

原子力発電所の再稼働によりエネルギー供給の不安を減らし、戦略的物資を特定の国に依存しないサプライチェーン(供給網)を整える。中国からの輸入をとめても経済への打撃を最小限にするのは抑止力の一環だ。

岸田文雄首相とバイデン氏は23日の会談で日米同盟の抑止力と対処力の強化を確認した。

日本が主体的に動かなければ米国との同盟は深化しない。米国が応分の負担を求めるのも、そのためだ。日本が米国の後ろをついていれば、平和と安全を手にできる時代は終わった。

政治部長 吉野直也

政治記者として細川護熙首相から岸田文雄首相まで15人の首相を取材。財務省、経済産業省、金融庁など経済官庁も担当した。2012年4月から17年3月までワシントンに駐在し、12年と16年の米大統領選を現地で報じた。著書は「核なき世界の終着点 オバマ対日外交の深層」(16年日本経済新聞出版社)、「ワシントン緊急報告 アメリカ大乱」(17年日経BP)。ツイッターは@NaoyaYoshino

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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
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分析・考察

米国は現時点でこそ、ウクライナに全面的に軍事支援をしていますが、ロシアのウクライナ侵攻時点では、早期のキーウ陥落の可能性もあると考えて及び腰の部分もありました。
それを変えたのはウクライナの果敢な抵抗と、ゼレンスキ―大統領の世界への効果的なメッセージ発信でした。

日本は米国の同盟国なのでウクライナとは状況は異なりますが、アフガニスタンのように米軍が全面的に関与した場合でも、自助努力が弱ければ米軍が撤退して政府は崩壊しました。

今後も米国はロシアと中国を睨み、欧州とアジアの両方で軍事プレゼンスを維持しなくてはならないので、同盟国の自助努力が米国の持続的なコミットメントを維持するためにも必須でしょう。

2022年5月24日 8:23 (2022年5月24日 8:23更新)』