侵攻3カ月、急伸するルーブル 制裁下で需給に偏り

侵攻3カ月、急伸するルーブル 制裁下で需給に偏り
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR23B5H0T20C22A5000000/

 ※ 『注目はルーブル高によるロシア財政への悪影響だ。エネルギー輸出での外貨収入に強く依存するロシアの歳入は、ルーブル高が進むほど目減りする構図にある。』…。

 ※ これは、「新しい視点」だ…。

 ※ トヨタが、「円高(=外貨安)」によって「為替差損を被る」というような図式だな…。

 ※ ルーブル高=ユーロ安、ドル安だから、当然か…。

 ※ 結局、「変動相場制」においては、極端な「自国通貨安」「自国通貨高」も好ましく無く、ほどほどの「中庸」が良い…、ということか…。

『【ロンドン=篠崎健太】ロシアのウクライナ侵攻開始から24日で丸3カ月を迎えた。ロシアの通貨ルーブルは当初こそ急落したが、3月半ばから切り返して侵攻前より大幅に高くなっている。資本規制や輸入減少が外貨の需要を抑える一方でエネルギー輸出は続き、通貨の需給が大きく偏っているためだ。ロシアにとってルーブル高は財政の圧迫要因で、当局は通貨防衛策の見直しを急ぎ始めた。

23日は本国市場のモスクワ取引所で1ドル=57ルーブル台と、侵攻直前より約4割高い水準で取引された。前週末20日には一時57ルーブル近辺と、対ドルで2018年3月以来ほぼ4年ぶりの水準に浮上した。対ユーロではさらに遡り、23日に15年6月以来となる1ユーロ=58ルーブル台前半まで急伸した。

足元の上昇要因として大きいとみられているのが、エネルギー輸出に伴う外貨売り・ルーブル買いだ。ロシア投資銀ズベルバンクCIBのユリ・ポポフ氏は「ロシアの輸出事業者がおそらく天然ガス販売で得たユーロを売っている」と解説する。鉱物採掘税の納付期限である25日を前にルーブルを手当てするための両替が進んでいるという。

ロシア政府は天然ガスの輸入者にルーブルでの支払いを義務づけた。国営ガスプロム傘下の銀行に外貨建てとルーブル建ての2つの口座を開かせ、顧客が送ったユーロやドルはロシア側でルーブルに両替されるという、ルーブル高につながる仕組みだ。ノワク副首相は19日、ガスプロムからガスを買う外国企業は54社あり、うち約半数が既にルーブル口座を開いたと明かした。

2月末には大統領令で、全ての輸出企業に外貨収入の8割を売ってルーブルに換えることを強制した。市民の外貨引き出しや外国送金を制限するなど、西側の経済制裁に対抗する様々な資本規制を敷いた。外貨買いを抑えつつ自国通貨買いを強引に促す通貨防衛策の一環とみられ、ルーブル高を演出してきた。

上昇の背景として輸入の陰りも見逃せない。欧米による工業製品や高級品などの対ロ輸出禁止や、多国籍企業の事業休止などで輸入は大きく縮んでいるとみられる。ロシア税関が1月分を最後に貿易統計の公表を止めているため細かな動きは追えないが、貿易収支が黒字超へ大きく傾いているのは確実だ。

ロシア中央銀行の推計では、所得収支など加えた経常収支の黒字額は1~4月に958億ドル(約12兆3千億円)と、前年同期の3.5倍に急増した。4月だけで約380億ドルの黒字を稼いだことになる。

金融・経済制裁は当初、通貨を暴落させることによる経済の困窮化も狙いとされた。英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのドミトリー・ムヒン助教(国際経済学)は「制裁の効果はルーブルの水準では測れない。ルーブル高で失敗とみるとのは誤りだ」と話す。

注目はルーブル高によるロシア財政への悪影響だ。エネルギー輸出での外貨収入に強く依存するロシアの歳入は、ルーブル高が進むほど目減りする構図にある。ムヒン氏によると、財政が均衡するルーブル相場は今の商品価格に基づくと1ドル=45ルーブル程度だ。「ロシア製品への需要減や国内景気の減速を考慮すると収支分岐点はこれよりルーブル安の方向である可能性が高い」という。

ロシア当局は4月以降、市民の外貨購入時に課す手数料を撤廃したり外貨引き出し額の上限を引き上げたりして、通貨防衛策を徐々に緩めている。5月23日には輸出企業に課す外貨収入の売却比率を80%から50%に緩和すると発表した。みずほ銀行欧州資金部の本多秀俊シニア為替ストラテジストは一連の見直しについて「これ以上の通貨高は望んでいないという意思表示だ」とみる。

空前の経済制裁で輸入や国外旅行に大きな制約を受けるロシア市民は、自国通貨高の恩恵を十分受けられない状況にある。ルーブルの上昇が輸入減も映しているとすれば、同国経済にとって明るい材料とは取れない。エネルギー輸出大国だからこその奇策が支えた意外な通貨高は、ロシアの孤立を逆説的に映している。

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