ゼロコロナ政策推進の中国で高齢者のワクチン接種率が低い理由

ゼロコロナ政策推進の中国で高齢者のワクチン接種率が低い理由【洞察☆中国】
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022052000636&g=int

『中国でオミクロン株の感染が急拡大している。最大の経済都市、上海では、3月末から始まった全域のロックダウン(都市封鎖)が現在(4月下旬)でも続き、解除の見通しが立たない。早くからロックダウンが実施された地域では、1カ月以上も封鎖された状態であり、市民はいら立ちを募らせている。(文 日中福祉プランニング代表・王 青)

中国、首都中枢にコロナ迫る 感染発生で近隣地区封鎖

 ◆高齢者の順番は最後

 上海市政府は4月18日、感染者の死亡が2年ぶりに確認されたと発表した。その後も毎日の死亡者数を公表し、その数は日に日に増えてきている。

 同月23日現在、死亡者は39人となり、平均年齢78歳という。政府の発表によると、これまでの死亡者はいずれも高齢者で、基礎疾患があり、ワクチンを一度も接種していないという。

 同月12日に中国国家衛生健康委員会(厚生労働省に該当)疾病コントロールセンターが記者会見で次のような発表をした。

 「4月11日までに、全国のワクチン接種の累計報告により、接種された総人口数は1.28億人で、全人口の90.8%に達した。60歳以上の高齢者の接種人口が1.5億人、接種率は約80%。残りの約20%、およそ5000万人の高齢者がまだ一度も接種していない状況」

 そして「各地の政府が高齢者のワクチン接種を積極的、かつスピーディーに取り組むように」と呼び掛けた。

 中国にいる筆者知人の医者によると、2021年初めごろに始まった中国のワクチン接種は、18~59歳からスタート。若い人は社会活動が活発で感染を抑える必要があるとの理由である(これはこれで当時評価されていた)。

 反対に60歳以上の高齢者への接種の順番は最後。また当時、筆者の知り合いが経営する介護施設では、スタッフ全員の接種が終わっていた時点で、入居者は一人も受けていなかったと話していた。

 今年3月から中国各地で感染が再び広がり、高齢者のワクチン接種問題が改めて注目された。特に在宅より介護施設に入居している高齢者の接種率が著しく低く、10%未満というのだ。

 ◆特に介護施設の入居者

 高齢者問題や介護を専門とするネットメディア「阿沐養老」は先日、全国の介護施設の入居者の接種率調査を実施。調査した介護施設の接種率は3~8%だった。あまりに低い接種率の理由について、次のような三つの解説があった。

 (1)介護施設の政府管理部門は、ワクチン接種の推進をあまり行わなかった。このため、ワクチン接種の必要性に対しての認識が低いままである。

 (2)ほとんどの高齢者が生活習慣病や基礎疾患を抱えているのに対し、ワクチン接種の安全性についての評価がなされておらず、接種後の対応も整っていなかった。

 (3)高齢者自身だけではなく、家族や周りの人たちがワクチンの副作用や副反応を心配し、消極的である。

 このうち、(3)の理由については、確かに筆者の周りにもこのような高齢者の両親を持つ知人が多い。中国の高齢者が昔の固定観念を持っているため、言い伝えを頑固に信じるが、現代の医療を信用しない面がある。

 病気になったら、慣習などで自分で治そうとする高齢者が少なくない。例えば、骨折した場合、いち早くするのが、豚骨でコトコト煮込んだスープを飲む。「治るのが早くなる」という理由だ。このため「体に悪い」と思い、ワクチンを怖がる高齢者が多い。

 上海では、これまで一度も介護施設でクラスター(感染者集団)が出たことがなかったが、今回、オミクロン株の強い感染力で、約1000床以上を有する高齢者専門病院(ほとんどが長期入院)で、十数人の入居者が亡くなった、と中国メディアの取材や入居者の家族たちのインターネット交流サイト(SNS)が伝えた。

 原因の多くは、数人のスタッフがPCR検査で陽性となり隔離されていたため、穴埋めで急きょ新しいスタッフを採用。しかし、一連の感染防止の研修が行われないまま現場に入り、院内感染が起こってしまったという。

 政府はこのことを正式に公表していないが、施設の入居者のワクチン接種率が総じて低いことで、悲劇を招いたと専門家は分析している。

 (時事通信社「金融財政ビジネス」より)

 【筆者紹介】

 王 青(おう・せい) 日中福祉プランニング代表。中国・上海市出身。大阪市立大学経済学部卒業。アジア太平洋トレードセンター(ATC)入社。大阪市、朝日新聞社、ATCの3者で設立した福祉関係の常設展示場「高齢者総合生活提案館 ATCエイジレスセンター」に所属し、 広く福祉に関わる。 』