「台湾は自分たちで守れ」と有事に直接介入しないアメリカの論理

「台湾は自分たちで守れ」と有事に直接介入しないアメリカの論理
https://news.yahoo.co.jp/articles/4dd065573265e3f607b634591ec8dec354ca03f2

 ※ 『日本政府が台湾への情緒的共感に傾斜した対中政策を続けると、アメリカの「ハシゴ外し」に遭いかねないことを警鐘と受け止めるべきだと思う。』…。

 ※ これは、その通りだろう…。

 ※ まあ、しかし、その時の「情勢判断」次第の話しだ…。

 ※ いずれの「国家」も、その「生き残り」と「国益(≒国民の最大多数の最大幸福)」を掛けて、「国家的な判断」を下して行く…。

『アメリカ軍制服トップが、「台湾は防衛可能な島」として、「台湾有事」が発生してもアメリカ軍は派兵しない、ウクライナ方式の「代理戦争」の検討を示唆した。

アメリカが直接手を汚さないことで、イラク、アフガン戦争の失敗の再現や核保有国の中国との全面衝突というリスクを回避できる。同時に、直接参戦しなくてもアメリカ軍産複合体の莫大な利益になる「一石二鳥」の方法だ。

■アメリカの「戦略的明確化」が侵攻を招いた? 

 ロシアのウクライナ侵攻から間もなく3カ月。当初は電撃的勝利も予想されたロシア軍が苦戦を強いられている理由の1つとして、アメリカがウクライナに大量の先進兵器など軍事支援を行うことによって「ロシアvsウクライナ」戦争ではなく「ロシアvsアメリカ」の代理戦争になっていることが挙げられる。

 アメリカのバイデン大統領は2021年12月8日ホワイトハウスで記者団に対し、アメリカ軍のウクライナ投入は「検討していない」と発言した。その理由についてバイデンは、①ウクライナは同盟国ではない、②ロシアは核大国という2点を、別の機会に明らかにした。

 こういった事前に軍事対応を明らかにする「戦略的明確化」が、ロシアのプーチン大統領に軍事侵攻を決断させたのではないかとして、アメリカ議会をはじめ西側識者から強い批判を浴びた。

 ウクライナ戦争では岸田文雄首相が、「力による現状変更を許すと、アジアにも影響が及ぶ」として、ウクライナ情勢が台湾有事に連動する危機感を煽っている。ウクライナ戦争と台湾情勢を単純に重ね合わせるのは、あまりにも近視眼的な思考だと思う。

 ただ、ウクライナ情勢がアメリカと中国の台湾への対応にどんな変化をもたらすか、北京とワシントンも台湾をつねに意識しながら情勢をウオッチしているのは間違いない。

そのような中、シンガポール紙「聨合早報」に、旧知の台湾問題研究者である陳鴻斌・元上海国際問題研究院主任研究員の「アメリカ軍の最新表明は台湾情勢に影響する」と題する評論が掲載された。

「アメリカ軍の最新表明」とは、オースチン国防長官とアメリカ軍制服トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長が2022年4月7日、2023年国防権限法案(国防予算)に関する上院軍事委員会の公聴会に出席し、ウクライナ情勢と台湾問題について証言した内容を指す。』
『3時間以上に及ぶ公聴会の大半がウクライナ情勢に費やされたのは当然だが、終了間際、トランプ前大統領の核心的支持者であるジョシュ・ホーリー共和党議員(ミズーリ州選出)の質問に、ミリーは次のように証言した。

■ウクライナ「代理戦争」からの教訓

 「最善の台湾防衛は、台湾人自身が行うことだ。例えばウクライナでしているようにわれわれは台湾を助けられる。ウクライナから本当に多くの教訓を得た。これらは中国が極めて深刻に受け止めている教訓でもある。(台湾本島を攻略するには)台湾海峡を横断し、広い山岳地帯で水陸両用作戦や、数百万人が住む台北市を空爆することになる。台湾は防衛可能な島だ。中国に対する最善の方法は、接近拒否抑止力を通じて、台湾攻撃が「非常に、非常に達成困難な目標」であることを、彼ら(中国側)に思い知らせることだ」

 これが台湾有事に関するミリー証言の全文だ。この証言は一部の香港、台湾紙が伝えているが、日本ではほとんど報じられていない。ミリー証言を改めてかみ砕いて紹介すると、①台湾は防衛可能な島。中国軍による台湾本島攻撃・攻略は極めて難しい。②最善の防衛は台湾人自身が行うこと。アメリカはウクライナでしているように台湾を助けられる。
 まず①は、ロシア軍は平原の多いウクライナですら苦戦しているのに、中国軍が台湾本島を攻略するには、約200キロの幅がある台湾海峡を渡海し、山岳地帯の多い本島で水陸両用作戦を行い、人口密集地空爆という困難さを指摘する。確かに、地続きのウクライナと比べ、台湾本島攻略の難度は極めて高い。

 一方、②の「代理戦争」について、ミリーは詳細を明らかにしていない。ただ、①、②の文脈から判断すれば、少なくともアメリカ軍内部では、台湾有事でもアメリカ軍が直接派兵せず「代理戦争」が可能かどうかの検討をしていると考えていい。

 もちろん最終決定ではないし、ホワイトハウスや国務省、議会の意向も明確ではない。
ただロシア苦戦が伝えられるウクライナ戦争が、台湾問題に与えた「教訓」の一つが「代理戦争」だ。台湾はアメリカの同盟国ではないし、中国も核保有国という2条件は、ウクライナと重なる。』

『アメリカの台湾有事への基本原則は、中国の武力行使に対応を一切明らかにしない「曖昧戦略」にある。

ウクライナへの対応でバイデンが明らかにした「戦略的明確化」とは真逆なのだ。

「曖昧戦略」は北京に対しては「一つの中国」政策を維持するとの安心感を与え、他方台北に対しては「武力で台湾を守る」ことを否定しないことで、北京の武力行使を抑止する「二重の効果」があるとされてきた。

 しかし、アメリカの識者の中から「曖昧戦略」は北京に誤ったシグナルを送るとして、放棄を求める声が上がり始めた。バイデン自身も就任以来、記者会見などで「台湾を防衛するのか」と問われ「する」と複数回答えたが、その後国務省は「発言撤回」に追われた。またホワイトハウスでアジア政策を統括するカート・キャンベル・インド太平洋調整官も、曖昧戦略の変更を否定する発言をしている。

■「代理戦争」によるアメリカのリスク低減

 冒頭紹介した陳鴻斌は、ミリーが「台湾を軍事支援する」という表現を使ったことから、「曖昧戦略」を「明確化」へと方針転換したのでは、と踏み込んだ解釈している。

ただ、ミリー証言をもって「曖昧戦略」の放棄と結論するのは早計だと思う。台湾防衛を公言することは、核保有国である中国との衝突を覚悟しなければならない。それはバイデン政権にとって極めて重い圧力になるからである。

 一方、「代理戦争」について陳鴻斌は「アメリカとNATO(北大西洋条約機構)はウクライナに直接派兵せず、軍事支援と包括的な対ロ制裁という間接的方法によって目標を達成し、ロシアは戦争目標を達成できないでいる」と、「代理戦争」が効果を発揮したとみる。
 アメリカ軍の代理戦争への評価の背景として陳は、20年にわたるアフガニスタン戦争でアメリカが2兆ドル以上の戦費をつぎ込み、2300人以上の将兵を犠牲にしたにもかかわらず敗北した「トラウマ」と関係があると指摘する。』

『ウクライナ戦争でバイデン政権はこれまで、アメリカ議会が承認した136億ドル(約1兆8000億円)に加え、2022年4月末にアメリカ議会に330億ドルの追加予算を求めた。

アメリカ政府はこの予算を使って携行型の対戦車ミサイル「ジャベリン」や地対空ミサイル「スティンガー」、自爆攻撃機能があるドローン「スイッチブレード」など最新兵器をウクライナに供与してきた。

アメリカ軍産複合体にとって、代理戦争は自国兵士の犠牲というリスクを冒さずに、巨大な利益をうみ出していることがわかる。

 陳鴻斌は最後に、「ミリーの表明は台湾の蔡英文を失望させるのは間違いない」と述べ、台湾有事でアメリカ軍が派兵し中国と共同で戦うことを期待していた台湾側を失望させたとみる。

 確かにウクライナ侵攻からほぼ1カ月後の2022年3月22日、台湾のケーブルテレビ「TVBS」が発表した世論調査では、「両岸で戦争が起きた場合、アメリカは台湾へ派兵し防衛すると信じるか」との質問に、「信じる」がわずか30%と、「信じない」の55%を大幅に下回った。ウクライナでの「代理戦争」に対する台湾人の冷静な反応がうかがえる。

■情緒的な台湾政策が持つリスク

 岸田文雄首相は2022年5月23日に東京で行われる日米首脳会談で、東シナ海や台湾海峡をめぐる日米の連携強化をウクライナ侵攻と関連付けて、共同文書に明記する方針とされる。

筆者は本欄で、バイデン政権が2月に発表した「インド太平洋戦略」が、台湾問題で「脇役」だった日本を「主役」にする狙いを指摘した。

ミリー発言は、日本政府が台湾への情緒的共感に傾斜した対中政策を続けると、アメリカの「ハシゴ外し」に遭いかねないことを警鐘と受け止めるべきだと思う。

岡田 充 :共同通信客員論説委員 』