Quad、強まる結束の意義 対ロシアでインドどう動く

Quad、強まる結束の意義 対ロシアでインドどう動く
政界Zoom
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『日本、米国、オーストラリア、インドの各首脳は24日に東京で「Quad(クアッド)」の会議を開く。クアッドは安全保障や世界経済について意見交換する4カ国の枠組みで、対面での首脳会議は2回目となる。ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに結束の意義が強まる。

クアッドは英語で「4つの」を意味する。4カ国はインド洋と太平洋を囲むように位置する。米国のバイデン大統領の来日に合わせた日本での開催となる。

自由や民主主義、法の支配といった共通の価値観を共有する。インド太平洋地域の安定を目指し、新型コロナウイルスや気候変動など幅広い課題を取り上げてきた。

クアッドの構想は安倍晋三元首相が第1次政権時の2006年に掲げた。4カ国で対話の枠組みを提唱し外交当局による事務レベルの会合にこぎ着けた。中国への距離感で一致点を見いだせず安倍政権も退陣したことから立ち消えになった。

12年に第2次安倍政権が発足し再び結束の機運が高まった。念頭にあるのは覇権主義的な行動を繰り返す中国の存在だった。

日本は中国海警局の船が頻繁に沖縄県の尖閣諸島周辺の領海に侵入することなどを警戒する。インドも国境地域で係争を抱える。

米国はバイデン大統領の就任以降、専制主義の国として中国を批判する。オーストラリアも新型コロナの発生源を解明するための国際調査を中国に求めたことなどをきっかけに関係が悪化した。中国は豪州からのワインや大麦に関税を上乗せした。

クアッドは17年11月にフィリピンで局長級会合を開いた。19年9月には初の外相会合を米ニューヨークで開催した。

新型コロナ禍の21年3月にオンラインで首脳会議を開いた。9月に米ワシントンで各首脳が対面で集まった。日本から菅義偉首相(当時)が参加した。

世界銀行によると、20年のクアッド4カ国合計の名目国内総生産(GDP)は30兆ドルほどで、中国の2倍くらいになる。ストックホルム国際平和研究所のデータで国防費の合計額を比較すると3倍超にのぼる。

インド太平洋地域を巡る多国間の枠組みには米国と英国、オーストラリアの3カ国が21年9月に立ち上げた「AUKUS(オーカス)」がある。安全保障での連携に軸足を置き、人工知能(AI)やサイバーセキュリティーなどの軍事技術で協力する。

クアッドの4カ国も合同の軍事演習を定期的に実施するなど安全保障面でも力を合わせる。ただ北大西洋条約機構(NATO)のような軍事同盟ではなく足元では経済分野での関係を重視する。

21年9月の首脳会議で宇宙分野での技術開発、水素エネルギーの活用、半導体のサプライチェーン(供給網)構築なども共同文書に盛り込んだ。22年4月には初めて4カ国共同で新型コロナのワクチンを供給した。カンボジアに32万5千回分を供与した。

林芳正外相は4月28日の記者会見で「日米豪印の取り組みは自由で開かれたインド太平洋の推進に中心的な役割を果たしている」と述べた。

5月24日に開く会議については「自由で開かれたインド太平洋の実現に向け力強いコミットメントを日本から世界に示す機会としたい」と強調した。

クアッドはロシアによるウクライナ侵攻を経て重要度が高まる。侵攻が始まった1週間後に4カ国でテレビ会議形式の会合を設け、1時間ほどロシアへの対応を議論した。

岸田文雄首相は5日、大型連休を使った東南アジアと欧州への外遊を締めくくる内外記者会見で「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」と危機感を示した。

「ロシアの暴挙には高い代償が伴うことを示し、国際社会に間違ったメッセージを発することにならないようにする」と語り、同盟国・友好国同士で歩調を合わせることの重要性を訴えた。

ウクライナ危機を巡るインドの立場はロシアへの批判を強める日米豪と異なる。国連総会が3月2日に開いた緊急会合でもロシアを非難する決議を棄権した。

背景にはロシアとの軍事上の結びつきがある。旧ソ連時代から協力関係にあり、武器の調達先として最大の国でもある。

ジャイシャンカル外相は3月25日、電撃的にインドのニューデリーを訪れた中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相と会談した。

会談後に記者会見したジャイシャンカル氏によると、両外相はロシアによるウクライナ侵攻を巡り、即時停戦と対話の継続を促す方針で一致したという。

岸田首相も王氏に先立ってインドを訪れモディ首相と会談した。力による一方的な現状変更を許さないことを確認したものの、共同記者会見でウクライナ情勢への直接的な言及はなかった。

今回のクアッド首脳会議でもウクライナ情勢は主要議題になりそうだ。インドが日米豪にならってロシアを非難する可能性は低いとみられる。

東京外国語大の篠田英朗教授(国際政治)は「インドに民主主義陣営に少しでも近づいてもらうためにクアッドというつながりは非常に重要になる。長期の目線で会合を重ね一体感を醸成すべきだ」と指摘する。

記者の目 つなぎとめが日本の役割

岸田文雄首相は大型連休にベトナムなど東南アジア各国の首脳と会談した。ロシアを巡る各国の態度はインドと似る。ロシアと結びつきの強いベトナムはロシアを非難する国連決議を棄権した。植民地政策に翻弄された歴史を持ち主要7カ国(G7)に肩入れするように映る行動には慎重だ。

ベトナムがウクライナへの人道支援で50万ドルの供与を表明するなど首相は会談で一定の成果を得た。首相周辺は「ウクライナ危機以降、米欧の日本を見る目がはっきりと変わってきた」と指摘する。アジア各国をつなぎとめる期待を強く感じるという。

首相は理想と現実のバランスを重視する「新時代リアリズム外交」を掲げる。アジア唯一のG7としてインドの理解を得る意味でも、クアッドで日本の役割の重みは増す。(上田志晃)』