欧州・アジア勢 米国産LNG争奪戦

欧州・アジア勢 米国産LNG争奪戦
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『【ヒューストン=花房良祐】米国産の液化天然ガス(LNG)を巡り、欧州とアジアの争奪戦が始まった。2022年に入り欧州やアジアなどの企業が合意した米国産LNGの15年間以上の長期契約の購入量はすでに21年通年の約2倍に相当する年2000万トン規模に達した。日本の商社や電力・ガス会社は出資先の米国のプロジェクトの増産で商機につなげる。

米センプラ・エナジーは16日、三井物産や三菱商事と開発する「キャメロン」の増産計画について、ポーランドの国営ガス会社PGNiGが年200万トンを20年間調達することで基本合意したと発表した。PGNiGは、センプラが計画する別のプラントからも年100万トン購入する方向だ。

欧州はロシア産ガスからの脱却を目指し、アジアは新型コロナウイルス禍からの景気回復と脱炭素を見据え、計画時点からLNGの「青田買い」に動く。米国政府は3月、30年までに年500億立方メートル(約3700万トン)のLNGを欧州に追加輸出する方針を表明した。

米国では22年1月以降、年2000万トン規模の長期購入の合意が交わされた。いずれも20年代の生産開始を計画するプラント。世界2位のLNG消費国である日本の輸入量の4分の1に匹敵する量だ。需要が増加した結果、米国の新規LNG契約の液化加工費の相場はあがっているようだ。

LNGプラントは数兆円単位の開発資金が必要で、新規に稼働させる場合は15~20年の販売契約を結ぶ。予定する生産能力の7~8割分の販売先を長期契約で固めると銀行が融資し、投資決定と工事が進む。

21年後半から長期契約を相次いで締結している米ベンチャーグローバルLNGのマイク・セイブル最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞の取材に、ルイジアナ州で計画中の新プラント「プラクミンズ」について「近く投資決定をする。24年に生産を開始できる」と話した。計画する生産量の年2000万トンのうち8割の販売先を固めた。

同社は22年3月に同州の別のプラント「カルカシューパス」から出荷を始めたばかり。投資を決めてからわずか2年5カ月で生産にこぎ着けた「世界最速記録」(セイブル氏)を打ち立てた。通常の半分程度の期間だ。

4月下旬に「カルカシューパス」を訪れるとPGNiGに販売するLNGを運搬船に積み込んでいた。短期間で稼働した秘訣は米石油サービス会社ベーカー・ヒューズが開発したモジュール型の液化設備。プラントの年産能力は約1000万トンだが、液化設備は1系列あたり年産63万トンだけで、これを18個並べた。

従来の大型設備は年産500万トン級を2、3系列建造するが、同社はイタリアの工場で長さがわずか数十メートルの小型モジュールを建造。ルイジアナ州で据え付け、異例の早さで生産を開始した。

欧州はウクライナに侵攻したロシアのガスの購入を減らしていく方針で、LNG調達は待ったなしだ。ドイツの官民はLNGをすぐに導入するために浮体式の受け入れ基地(FSRU)を4隻導入するほか、カタールと調達交渉も開始した。

中国企業と米国企業による長期契約の合意も21年半ばから相次いでいる。中国はロシアと関係が深いが、国内のガス需要が急拡大しており21年は日本を抜いて世界最大のLNG輸入国となった。一方、米国は22年に世界最大のLNG輸出国となる見通しだ。

日本はLNG需要が頭打ちだが、日本の電力・ガス会社は欧州や中国に「買い負け」しないようにLNGを転売して取扱量を増やし、存在感を示したい構えだ。

三井物産と三菱商事などが手掛ける「キャメロン」だけでなく、JERAと大阪ガスなどが手掛けるテキサス州のLNGプラント「フリーポート」でも増産計画がある。関係者によると、計画する生産量の何倍もの購入希望があるという。

もっとも、欧州は再生可能エネルギーの導入や省エネで長期的にはガス需要を大幅に減らす方針で、LNG事業の先行きに不透明感もある。調査会社ライスタッド・エナジーによると、欧州のガス需要は40年に4割近く減少する。数十年にわたり販売を続けて投資を回収するLNG開発の難しさはむしろ増している。

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Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Business/Energy/Ukraine-war-fuels-European-and-Asian-scramble-for-U.S.-LNG?n_cid=DSBNNAR 』