中国、東ティモールに浸透 西太平洋に勢力拡大めざす

中国、東ティモールに浸透 西太平洋に勢力拡大めざす
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『東南アジアの小国、東ティモールは20日、隣国インドネシアから独立して20年を迎える。国内では独立前に混乱を極めた治安状況は回復し、民主主義も定着した。現地を歩くと、中国がインフラ支援をテコに影響力を強めていることが一目瞭然で、安全保障上の懸念も生じている。

首都ディリ中心部にある市内最大のショッピングモールでは、中国のスマートフォン大手「OPPO(オッポ)」の広告が目立っていた。店員によると、オッポがスマホの1番人気という。華人系のスーパーも入居し、中国の輸入食材を豊富にそろえる。

官庁街では漢字が書かれた看板を掲げる工事現場を見かけた。中国企業が地方裁判所の建設を手がけていた。これまでに大統領府や外務省、国防省などの主要官庁の建設も中国が支援した。

両国の関係は深い。冷戦構造下で西側諸国が1976年のインドネシアによる東ティモールの武力併合を事実上容認するなか、中国は独立を支持し、2002年の独立後は多くの国に先駆けて外交関係を結んだ。10年代に入ると、中国が広域経済圏構想「一帯一路」を打ち出し、協力を加速した。

「東ティモールは一帯一路の重要なパートナーだ」。中国の肖建国駐東ティモール大使は3月末、地元紙に寄稿した。発電所や道路、港湾など基幹インフラの建設を中国企業が支援していると訴えた。
中国企業が担う地方裁判所の建設はコロナ禍のためか完成予定日を過ぎていた(13日、ディリ)

肖氏によると、21年末までに約20の中国企業が東ティモールでの建設工事の契約を交わした。東ティモールは金融、通信、司法などビジネスの基盤が脆弱で、一般の民間企業にとって進出リスクが高い。中国共産党の1党支配体制のもと、官民一体の政治・経済体制をしく中国が間隙をつく。

日本が約53億円の円借款を供与したディリと第2都市バウカウを結ぶ国道1号線の整備工事が典型だ。日本企業が入札に加わらず、中国企業が受注した。道路脇の工事の概要を示す看板には、日本の国際協力機構(JICA)とともに中国国有企業の中国水利水電建設が名を刻む。

首都を抱え人口が集中する北部に比べ発展が遅れる南部に目を向けると、中国の戦略的な狙いが見えてくる。

東ティモール初の高速道路として南岸の町、スアイとベアスを結ぶ事業。中国企業が建設を担い、18年に第1期工事が完了した。東ティモール政府は隣国のオーストラリアと共同開発する近海の油田から自国南岸にパイプラインを引くことを念頭に、南部の開発に力を入れる。

「高速道路は確たる利用が見込めず、日本企業の参加はあり得ない」。現地の日系駐在員は指摘する。パイプラインをどちらの国に引くか、東ティモールと豪州で合意できていないためだ。既成事実化をもくろむ東ティモールを中国が後押しする構図で、ベアスの港湾化計画も持ち上がる。

中国の東ティモールへの浸透は習近平(シー・ジンピン)国家主席がめざす西太平洋への影響力の拡大策の一環でもある。東ティモール南岸と豪州のダーウィンの間の距離は600キロメートル強にすぎない。ダーウィンには豪軍の基地があり、米海兵隊も巡回駐留し、中国ににらみをきかせる。「東ティモール南岸に中国がかかわる港ができれば安全保障上の懸念は大きい」(日本政府関係者)

米豪軍の行動を監視するもう一つの拠点がソロモン諸島だ。豪州の北東部で東ティモールと豪州北部を挟み込むような位置にあり、ここを影響下に置けば西太平洋に抜ける米豪軍の監視が容易になる。中国は4月、ソロモンと安全保障協定を締結した。事前に流出した草案には中国軍派遣や中国艦船の寄港を認める内容が盛り込まれていた。

「地球は中米それぞれと共同の発展を受け入れるだけの十分な広さがある」。習氏は21年11月、バイデン米大統領とのテレビ電話協議で西太平洋での影響力拡大への意欲を隠さなかった。台湾有事をにらむ米豪や日本にとり東ティモールへの関与強化は喫緊の課題になる。(ディリ=地曳航也、北京=羽田野主)

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Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/China-looms-large-in-East-Timor-20-years-after-independence?n_cid=DSBNNAR 』