ウクライナ反攻3要素 NATO兵器と戦闘法、衰えぬ士気

ウクライナ反攻3要素 NATO兵器と戦闘法、衰えぬ士気
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM161980W2A510C2000000/

 ※ だんだん、ヒデーことになる可能性が出てきた…。

 ※ 事態は、極めて流動的なんで、よほど「情報収集」をしっかりやらないと…。

『ロシア軍によるウクライナ侵攻開始から間もなく3カ月を迎える。この間、ウクライナ軍は果敢に抵抗を続け、東部など一部地域では巻き返す動きも見せ始めた。

善戦の背景には、装備増強などハード面の新たな展開に加え、ソフト面での積み重ねもあった。短期制圧という当初のもくろみが崩れたロシア軍は今後「別次元の手荒さ」を見せ始める恐れがある。

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2月24日の侵攻開始後、ロシア軍は早期の首都キーウ(キエフ)制圧を狙ったが、ウクライナ軍の反撃を受け、撤収。

現在は東部ドンバス地域や南部での占領地拡大を企図しているもようだ。

ただ、これまでの戦闘で侵攻部隊は大幅に損耗。河川を渡ろうとしていたロシア軍部隊がウクライナ軍の攻撃でほぼ全滅し、約1000人の兵士が戦死したとの情報もある。

戦況を詳細に分析している英国防省は「ロシア軍は侵攻当初に投入した戦力の3分の1を失った」と見積もる。これが事実なら、投入戦力は約19万人と見積もられるので、6万人超が戦死ないしは負傷して戦闘不能になったことになる。

平原地帯のドンバス戦線で「ゲームチェンジャー」になっているのが、米欧がウクライナ軍に供与し始めた大砲の一種、155ミリりゅう弾砲だ。

緩やかな弾道を描いて数十㌔先の標的を破壊するりゅう弾砲は、一見地味だが「面」を制圧するのに適した兵器だ。ミサイルなどよりも安価なため、大量に撃ち込むことで地上の攻撃対象を無力化できる。

ウクライナ軍が供与を受ける北大西洋条約機構(NATO)標準のひとつである「M777」は最大射程40キロメートル。ウクライナ軍の従来型の倍以上、ロシア軍の砲よりも長いため、ウクライナ軍はロシア軍の反撃を気にせずに砲撃できる。

供給されている砲弾には、撃ちっぱなしの従来型に加え、誘導装置のついたスマート砲弾もあるようだ。

これらを偵察衛星や無人偵察機のもたらす敵の位置情報と組み合わせ、非常に効率よく目標を破壊できている。

こうした攻撃を受ければ、ロシア軍は後退せざるをえない。M777の前線配備は5月以降とみられ、ロシア軍の東部での進軍遅延や後退の時期と符合する。

米国防総省高官は18日、記者団に対し、ウクライナ軍が米国製155ミリりゅう弾砲の9割近くを実戦投入したと明らかにした。米国が供与を決めた90門のうち79門を戦闘で使っているという。20万発以上を供与する155ミリ砲弾も75%をウクライナ軍に引き渡した。

自爆機能を持つ無人機「スイッチブレード」は200機以上をウクライナ軍に供与済みだ。

ハード面での優位さをさらに引き立たせているのが、ウクライナ軍とNATO加盟諸国の軍部隊の連携強化だ。

ウクライナはクリミア半島をロシアに奪取された2014年以降、NATOとの軍事演習を重ね、情報収集から意思決定、兵たん確保、攻撃、攻撃効果測定に至る「NATO式の戦い方」を学んできた。

いわば「軍を動かすソフトウエア」をNATO式にバージョンアップしする積み重ねがウクライナ軍になかったら、いかに大量の兵器を供給されても効果的な戦闘はできなかったはずだ。

ハード、ソフト両面とあわせ見過ごせないのが「ハート(心)」すなわち士気の格差だ。国土を守るウクライナ側はゼレンスキー大統領から軍、国民まで一体感と旺盛な士気が如実なのに対し、ロシア側は、政権の戦争指導のずさんさが兵の士気を下げているもようだ。

そもそも相手を見くびっていたため、短期戦を見込んで補給体制はないに等しかった。補給が届かなければ士気は下がる一方だ。過去のチェチェン紛争などでは、粗暴なロシア兵がうとましい上官を戦闘のどさくさに射殺する事態が頻発するなど、軍紀という点でロシア軍は西側の軍隊とは非常に異質な集団だ。今回の侵攻では多数のロシア軍の将軍や将校が命を落としているが、そのすべてがウクライナの戦果ではない可能性もある。

一般に国内が戦場になると、守る軍隊は敵との戦闘と同時に、自国民を保護する二正面作戦を迫られる。ウクライナの場合、国内に多数の地下避難施設があるほか、最悪歩いてでも渡れる隣国との陸上国境もあり、国民の犠牲はある程度抑えられている。これがウクライナ軍を戦闘に集中させ、戦意を維持する効果をもたらしている。

今後の戦況をめぐる焦点は大きく3つある。ひとつは、米欧からウクライナ軍への兵器支援がペースダウンしないかどうかということだ。りゅう弾砲の砲弾はNATO軍標準で、欧州のNATO加盟国が常時備蓄しているとはいえその数は無尽蔵ではない。

実は日本の自衛隊や韓国軍なども、有事の際の米軍と共同作戦を想定している関係から、結果的に砲弾や銃弾はNATO標準を使っている。

日本のウクライナ軍支援は今のところ、防弾チョッキや化学防護服など「非攻撃型装備品」の提供にとどまっている。

ただ、米欧のウクライナへの砲弾供与が限界に近づいたとき、日本にも要請がくる可能性がある。現行法制で実行する余地の有無や、日本側の事情で断る場合の副作用などを考えておく必要がありそうだ。

ふたつ目の焦点は、戦闘が「面的な広がり」を示すかどうかだ。

目下、NATO非加盟のモルドバや加盟に動くフィンランドがロシア軍の攻撃を受ける恐れが指摘されている。

ただ仮にプーチン大統領が、本格的なNATO諸国との戦争を決意した場合、侵攻の標的になりやすいのは、ロシア系住民を抱える一方で国土面積の点で縦深の浅い(攻める側から見れば制圧しやすい)バルト3国だろう。

日本周辺の海空域でロシア軍と米軍の衝突が起きる展開も、日本は想定に入れておく必要がある。

第三の焦点は、戦闘の苛烈さが増すかどうかだ。

ロシア軍は既に化学兵器をいつでも使用可能な状態にしているもようだ。南東部マリウポリで既に化学兵器のようなものが使われた事案が起きている。兵士などの証言を踏まえると青酸ガスが使われた可能性があり「先々、サリンなど本格的な化学兵器の使用に備えたロシア軍の実験だったようだ」(元自衛隊情報系幹部)との指摘がある。

(編集委員 高坂哲郎)

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