「鏡を見てみよ」 北欧のNATO加盟機運、侵攻で高まる

「鏡を見てみよ」 北欧のNATO加盟機運、侵攻で高まる
有事の欧州政治(3)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR130280T10C22A5000000/

『「戦争が欧州に戻ってきた」。5月初旬、デンマーク首相のメッテ・フレデリクセンはコペンハーゲン郊外で壇上から聴衆に語りかけた。そしてこう続けた。「デンマークは単独で防衛力を確保するには小さすぎる」

欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)に加盟するデンマーク。だが実はEUの安全保障・防衛政策に加わらなくてよい適用除外権をもつ。

デンマークでは、EU創設を定めたマーストリヒト条約の批准に向けた手続きが、1992年の国民投票でいったん否決された。安保・防衛政策や単一通貨ユーロへの参加免除の例外規定を設けて再び国民投票を実施し、93年に批准にこぎ着けた。

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、フレデリクセンは半身のEU加盟を前進させるべきだと判断。EUの安保政策への参加に道を開く国民投票を6月1日に実施すると表明した。「イエスと投票してほしい」。フレデリクセンは呼びかける。

北欧で安全保障政策を見直す大きなうねりが生まれつつある。バルト海という要衝を取り囲むように位置する北欧はロシアの脅威をじかに受ける。

「この事態を引き起こしたのはあなただ。鏡を見てみるがよい」。NATOへの加盟方針を表明する前日の11日、フィンランド大統領のサウリ・ニーニストは吹っ切れたようだった。
ロシアがウクライナに侵攻しなければ、NATO加盟は考えられなかった。そんな意味を込めたロシア大統領ウラジーミル・プーチンへのメッセージだ。

ロシアと1300キロメートルの国境を接するフィンランド。1939年から44年までの間、2回にわたって当時のソ連と戦った。領土の一部を喪失したものの独立は守り、その後は軍事的な中立をうたった。ロシアに配慮しつつ、議会民主制と自由主義経済を維持する知恵だった。

ナポレオン戦争以来約200年、不戦を貫いてきたスウェーデンも動く。与党の社会民主労働党はNATO非加盟が党是だったが、党首で首相でもあるマグダレナ・アンデションは15日、NATOへの加盟を支持してこう語った。

「バルト海地域でスウェーデンだけが非加盟では、我が国だけが脆弱になってしまう」

フィンランド首相のサンナ・マリンは言う。ロシアが侵攻した2月24日以降「すべてが変わったのだ」。(敬称略)

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