[FT]ウクライナ領スネーク島巡る攻防

[FT]ウクライナ領スネーク島巡る攻防、黒海支配にらむ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB185JL0Y2A510C2000000/

 ※ やっと、詳報が出たか…。

 ※ 「蛇島」とか、気にはしていた…。兵頭ブログでも、記事が載ってたな…。マップが出てくれて、ありがたい…。

『黒海北部のウクライナ領スネーク島は、ロシアがウクライナ侵攻を初めてからすぐ、国際社会の注目を集めた。この島の少数の守備隊が、降伏しなければロシア海軍の砲撃で確実に命を落とすと脅された時だ。守備隊の1人、ロマン・フリボフ氏が「ロシアの軍艦よ、くたばれ」と言い放ったという逸話が知られる。
ウクライナ領スネーク島の衛星写真(12日)=マクサー・テクノロジーズ/ロイター

それから3カ月がたったいまでも、面積が0.2平方キロメートルほどで岩礁よりは少し大きいという程度のスネーク島は、黒海の支配を巡るウクライナとロシアの激しい戦いの主な舞台で、この紛争を取り巻くプロパガンダ合戦の中心だ。

(ウクライナ側からスネーク島を奪った)ロシア軍は、ウクライナのドローン(無人機)による攻撃や空爆からこの島を守ることが十分にできないでいる。ウクライナ側も海軍力に限りがあり、スネーク島を奪還できないでいる。

この島を巡る攻防はいろいろな意味で、今回の戦争の縮図だ。ここに軍事基地を置けば、周囲の数百マイルに及ぶ地域を支配できるので、戦略上、重要だ。スネーク島を巡る攻防はウクライナ、ロシアの双方にとって、兵士の士気を高めるシンボルとしても大事だといえる。

■ウクライナの守備隊は投降

フリボフ氏は決然と降伏を拒んだが、ウクライナの守備隊は武器を捨てた。その後、ロシアとの捕虜交換を経て解放された。

米欧側の当局者の一人はスネーク島が「戦略上、有用だ」と語った。「そして、おそらくはそれ以上に、象徴的で重要な意味を持つ」と指摘する。

ギリシャ神話によると、海神ポセイドンは(スパルタ王妃)ヘレンらをかくまう場所としてスネーク島をつくった。いまでは樹木も淡水もないが、ヘリポートと2つの深い岸壁を持つX字型をしたスネーク島は、ウクライナの重要な海上交通路の中央にある。北大西洋条約機構(NATO)に加盟するルーマニアからも35キロメートルしか離れていない(ルーマニアはかつて、スネーク島の領有権を主張したが、国際司法裁判所が2009年に却下した)。

ウクライナからみれば、ロシアがスネーク島をミサイル・海軍基地として使用できないようにすれば、同国による「黒海封鎖」の克服につながる。ウクライナは穀物などの輸出国として世界最大規模だが、ロシアによる封鎖で海上輸送が滞っている。

■港湾都市オデッサを攻撃する拠点

ロシアはスネーク島を足がかりに、ウクライナ南部の港湾都市オデッサを攻撃し、モルドバや、同国における親ロシア派の支配地域である沿ドニエストル地方まで戦闘を広げる可能性もある。NATOの兵器や舞台をルーマニアから配備する動きを妨げることもできる。

ウクライナ国防情報局のキリーロ・ブダノフ局長は13日、「この島を支配すれば、あらゆる方向からウクライナ南部に向かう商業船舶の航行を阻止できる」と話した。

これまでのところ、ウクライナはスネーク島を安全基地にしようというロシアの試みをくじき、同国の防空システムや補給艦に対し、空爆やトルコ製軍用ドローン「バイラクタルTB2」による攻撃を加えている。このドローンで、ウクライナ軍は戦果をあげている。

■ウクライナ、ロシアがいずれも戦果を誇示

ウクライナ軍が8日に投稿した空撮映像には、スネーク島の上空を飛ぶロシアのヘリコプターがドローンの攻撃で撃墜される様子が映っている。その2日前にも、ドローンによる攻撃でロシアの巡視船が撃沈され、短距離ミサイルシステムが崩壊したと主張する動画が公開された。

テクノ音楽が流れるこの動画のタイトルには「スネーク島に招かれざる者はこのような目にあう」と書かれている。

ロシア側にも言い分はある。同国の国防省によると、その戦闘でロシアはウクライナの航空機4機、無人機約30機、少なくとも3機のヘリコプターを撃墜した。さらにウクライナの「妨害工作員」20人以上と同国海軍の副司令官、イホル・ベザイ大佐を殺害したという。ウクライナ側はベザイ氏の死亡を確認したが、どの戦闘で殺害されたかは明らかにしていない。
スネーク島は黒海の北部にあり、ルーマニア、モルドバにも近い(出所)Institute for the Study of War and AEI’s Critical Threats Project/FT

ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は「この冒険はウクライナにとって大失敗だった」との見解を示した。

米シンクタンク海軍分析センター(CNA)でロシア研究のトップを務めるマイケル・コフマン氏は十分に納得しているわけでない。

■組織化されていないロシア軍の動き

コフマン氏は軍事専門のオンラインメディア「ウォー・オン・ザ・ロックス」のポッドキャスト番組で「ロシア軍の作戦をみる限り、同国の部隊がスネーク島で何をしようとしているのか、まだわからない」と話した。「ロシア軍の動きは十分に組織化されておらず、その意味では際立っている。航空機による支援なしで(地上)部隊を送り込む。その作戦で敗れると、部隊を増派する。そしてヘリコプターで特殊部隊を投入し、(トルコ製のドローンに)殺害された」と説明する。

ロシア軍は、激戦地のウクライナ東部ドンバス地方でも、軍事作戦を組織的に展開できないでいる。

スネーク島は軍事上、その大きさと隠蔽性の低さから、防衛がほぼ不可能だと複数のアナリストが指摘する。軍事分析を手がけるロチャン・コンサルティングは15日付のリポートで、ロシアは防空システムをどうにか整えるか、同様の機能を持つ戦艦を近海に配備しない限り「スネーク島を拠点にし続けるのは不可能だ」と言い切る。「いずれの方法も、現時点では実行できると思えない」とも付け加えた。

ウクライナの当面の目標は、スネーク島を軍事力で奪還することではない。それではウクライナ軍がロシア軍と同じく、弱点をさらすからだ。それよりも、ロシアがスネーク島に要塞を築き、周辺地域の支配や海軍の作戦を可能にする長距離対空ミサイルを配備する事態を阻む構えだ。

ウクライナの国防相経験者で、安全保障について同国政府に助言するアンドリー・ザゴロドニュク氏は、ロシアがスネーク島を実効支配している現状について「ウクライナに到来するものをすべて破壊すれば、それほど重大な問題ではなくなる」と指摘した。

ザゴロドニュク氏によると、スネーク島の近くにある石油掘削装置(リグ)2基(現状ではロシアが制圧)も、ロシアが海上輸送を制限するための軍事プラットフォームとして使われているという。

「ウクライナは領海への敵の侵入を阻止する必要がある」とザゴロドニュク氏は強調した。「戦争が長引けば、ウクライナ経済は極めて厳しい状況に追い込まれる」

By Roman Olearchyk & John Paul Rathbone

(2022年5月17日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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