消える緩衝地帯、膨らむ負担 北欧2カ国がNATO加盟申請

消える緩衝地帯、膨らむ負担 北欧2カ国がNATO加盟申請
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『フィンランドとスウェーデンが18日、米欧の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)への加盟を正式に申請した。NATOにとっては北方の守りを固めるうえで重要な意味を持つが、ロシアと接する境界が約2倍に増えることで有事の衝突リスクも高まる。膨らむ国防費をどう捻出していくかも課題となる。

「歴史的な瞬間だ。この機を逃してはならない」。北欧2カ国の加盟申請セレモニーでNATOのストルテンベルグ事務総長は述べた。ロシアのウクライナ侵攻で欧州の安全保障環境が揺らぐなか、冷戦後に東方へ拡大してきたNATOは北方にも拡大する。

フィンランド(左)とスウェーデン(右)のNATO大使から、加盟申請を受けたストルテンベルグ事務総長(18日)=ロイター

フィンランドのニーニスト大統領とスウェーデンのアンデション首相は19日、NATO盟主の米国を訪問し、バイデン大統領と会談する。手続き期間中の安全保障について協議するとみられる。

北欧2カ国の加盟はNATOにとって軍事作戦上の利点がある。バルト海に面する両国が加われば、ロシアの飛び地カリーニングラードを拠点とするロシアのバルト艦隊への圧力を強められる。

ロシア本土とカリーニングラード、ベラルーシに囲まれたバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の安全保障にも資する。

もっとも、ロシアとの国境が約1300キロメートルにも及ぶフィンランドの加盟が実現すれば、NATOが接するロシアとの境界線は現在の約2倍に達する。NATOとロシアを隔てていた「緩衝地帯」がなくなることで、両陣営が直接対峙する構図が強まる。

北大西洋条約の第5条は、NATO加盟国が武力攻撃を受けた場合、全加盟国に対する攻撃とみなして反撃する集団的自衛権を明記する。加盟国への攻撃に対する抑止力になる一方、加盟国と第三国の間に偶発的な衝突があれば、地域紛争が各国を巻き込む事態にエスカレートする可能性もある。

国際法を無視してロシアがウクライナ侵攻を続けるなか、NATO加盟各国が財政支出を増やして、軍備を厚くすることも求められる。

NATOは2024年までに各加盟国の国防費を国内総生産(GDP)の2%以上とする目標を掲げるが、NATO資料によると21年時点で条件を満たしたのは米国や英国、ポーランドなど8カ国にとどまる。

フランスのマクロン大統領は4月の大統領選公約で国防費増を掲げた。ドイツのショルツ首相も早期に2%以上とする考えを示している。とはいえ、新型コロナウイルス禍で講じた大規模な経済対策が財政を圧迫するなかで大幅な増額は容易ではなさそうだ。

スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、21年時点のフィンランドとスウェーデンの国防費のGDP比は2.0%と1.3%だった。

両国の加盟交渉の期間は数週間程度とみられるが、その後既存の加盟30カ国が批准する必要がある。両国の加盟については加盟国のトルコが慎重な姿勢を示している。加盟までは数カ月かかる可能性がある。

(竹内弘文)

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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別の視点

トルコの反対姿勢が予想以上に強硬で、北欧2か国のNATO加盟時期は見えていない。

NATOは18日に両国の加盟申請をうけて理事会を開いたが、「テロ組織支援」姿勢を理由にトルコが反対し、加盟交渉開始を決定できなかった。

クルド人の反政府武装組織「クルド労働者党(PKK)」のメンバーや、ギュレン運動(16年のトルコでのクーデター未遂事件に関与か)支持者をかくまっていると、エルドアン大統領は非難。

また、トルコがシリアに侵攻したことに対し、両国は19年に対トルコ武器禁輸を実施している。エルドアン大統領は交渉の結果、何らかの果実を得たいだけなのか。それとも、絶対拒否の姿勢なのか。現時点で見きわめはつかない。

2022年5月19日 8:03 』