一帯一路「完全に支持」 東ティモール次期大統領に聞く

一帯一路「完全に支持」 東ティモール次期大統領に聞く
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『【ディリ=地曳航也】東南アジアの東ティモールで5代目の大統領に就くラモス・ホルタ氏は日本経済新聞のインタビューに応じた。

インフラ整備に向け中国の広域経済圏構想「一帯一路」への期待感を表明。2023年までに東南アジア諸国連合(ASEAN)への加盟を実現したい意向を示した。

東ティモールは20日に隣国インドネシアから独立して20年を迎える。ホルタ氏はジャーナリストなどを経て独立運動に尽力し、1996年に同国出身のベロ司教とともにノーベル平和賞を受賞した。今年3~4月の大統領選で当選し、20日に2度目の大統領職に返り咲く。

ホルタ氏は自らも大統領として携わった独立後20年の国づくりについて「平和と安定」を成果として強調した。「政治的過激派は存在せず、民族や宗教間の紛争もない」と述べた。大統領選や議会選を通じた政権選択が定着し「活気に満ちた民主主義が機能している」と訴えた。

東ティモールはオーストラリア北方、西太平洋の要所に位置する=共同

一方で民主主義の代償にも直面する。政党が議会での多数派争いを繰り返した結果、国政が停滞。歳入の9割を占める石油・天然ガスの収入に依存する経済構造から抜け出せていない。ホルタ氏は「経済面で良い結果を残せたとは言えない」と率直に認めた。

国際通貨基金(IMF)によると独立後、10%を上回ることもあった実質国内総生産(GDP)の成長率は2010年代半ばから鈍化し、20年は新型コロナウイルス禍で前年比8.6%のマイナスに陥った。国民の4割は貧困層とされ、ホルタ氏は新産業の育成に本腰を入れる考えを強調した。

「200億ドル(2兆6000億円)規模の石油基金があり、国家財政は向こう10年は余裕がある」と指摘。今後5年で農業と教育に集中的に投資する意向を表明した。食料の輸入依存を転換し、100%の自給率をめざすほか、デジタルや人工知能(AI)など最先端技術に精通した人材を育てる。

平均年齢が約20歳という若い人口構成をテコに外国から投資を呼び込む方針だ。ホルタ氏は「我々は地域や世界の対立には関わらない。あらゆる国からの協力、支援、貿易を歓迎する」と話した。

ASEAN加盟に関し「23年末にも実現したい」と語り、近隣の巨大市場への統合に期待感を示した。ASEANの新規加盟には参加全10カ国の承認が必要だ。東ティモールは11年に加盟申請したが、組織内の格差拡大や会議の運営能力などへの懸念から、一部の国で慎重論があがっている。

成長の基盤となるインフラの整備に向け、中国の一帯一路に賛意を表明した。「習近平(シー・ジンピン)国家主席の傑出したビジョンで、完全に支持する」と述べた。「米国も懐疑的になるのでなく、協力して北米、中南米を一帯一路でつなげるべきだ」と訴えた。
中国企業は東ティモールで発電所や港湾、高速道路など基幹インフラの建設を担う。

ホルタ氏は「中国への利払いはゼロだ」と語った。整備費用の大半を自国でまかなっていると主張し、中国が一帯一路を手がける一部の国が陥っている「債務のわな」への懸念を打ち消した。

中国と東南アジアの一部の国が対立する南シナ海の問題をめぐり、平和的解決を促した。
「南シナ海の軍事化は非常に危険で、中国は善意ある超大国になるべきだ」と指摘した。
ロシアのウクライナ侵攻に関し「国の利益を正当化するために武力に訴えるべきではない」と批判した。

同国ではホルタ氏のほか独立の英雄で初代大統領のグスマン氏や、初代首相のアルカティリ氏ら「建国世代」が、なお国政に強い影響力を持つ。

ホルタ氏は「若手は育てるのでなく育つものだ」と指摘。次世代の自発的な成長を促し、選挙を通じた世代交代を訴えた。

▼東ティモール 2002年にインドネシアの統治を脱却した21世紀最初の独立国で、人口約130万人、面積約1万5千平方キロメートルと、ともにおおむね岩手県と同じ規模。16世紀以来のポルトガル支配の終結を受け1975年に独立を宣言したが、翌76年にインドネシアが武力併合した。99年の住民投票で独立を決め、日本も国連平和維持活動(PKO)として陸上自衛隊を派遣し国づくりを支えた。キリスト教徒が99%で、地元のテトゥン語とポルトガル語を公用語とする。首相が行政権を担う一方、大統領は首相を任命し、立法府への拒否権を持つ。』