[FT]ロシアの侵攻で友好国キューバの経済・外交が混乱

[FT]ロシアの侵攻で友好国キューバの経済・外交が混乱
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB162I40W2A510C2000000/

 ※ キューバに限らず、ロシアが支援していた国・勢力に共通する話しだろう…。

 ※ 自身も制裁食らって、アップアップ状態なわけだから、他国を支援している「余裕」なんか、無いだろう…。

『反政府デモや米国の経済制裁強化による財政難、また新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が引き起こした観光業の崩壊で揺らいでいるキューバに、友好国ロシアのウクライナ侵攻がさらなる問題をもたらしている。
ハバナのガソリンスタンドで列を作る人たち(2022年3月)=ロイター

輸入への依存度の高さと支払いに必要なドルの不足で、市民は2年以上も食料や医薬品など生活必需品の慢性的な不足と闘っている。共産党政権は価格が急騰しているガソリンやディーゼル油の確保に苦闘しており、燃料不足や頻繁な停電、公共交通機関の運行本数削減などが加わった。
「生活は悪くなる一方」と嘆きの声

「(ウクライナでの)戦闘のせいだ。もともと苦しかった生活が悪くなる一方だ」。首都ハバナのプラヤ地区のガソリンスタンドで、タクシーとしても使っている古ぼけた米国製の自家用車シボレーの給油を待っていたアントニオ・フェルナンデスさんは話した。

ロシアは5月、海辺のリゾート地バラデロで開催された国際観光見本市に主賓として招待される予定だった。しかし欧米各国がウクライナ侵攻への制裁としてロシア航空機の自国領空の通過を禁止したため、ロシアからキューバへの航空便が非常に高額になり、数千人のロシア人が訪問をキャンセルした。

キューバのフアン・カルロス・ガルシア・グランダ観光相は、政府がロシアの観光業者と対応を協議していると明らかにした。「パンデミックの間、経済を支えていた観光市場を救済したい」と話す。

観光業はキューバの主要産業だが、2021年に同国を訪れた外国人観光客はわずか57万5000人と、パンデミック前の400万人超から大きく減少した。21年の観光客の4分の1はロシアからだった。政府は22年に250万人の観光客が訪問すると期待していたが、最大の市場ロシアが失われたため実現は厳しい。

状況の悪化は、米メキシコ国境での移民問題にも飛び火している。21年10月以降、約10万人のキューバ市民が米国に渡った。直近でキューバから米国への移民が最も多かった1994年の人数をすでに上回り、過去最高だった81年に迫りつつある。米国はキューバ政府が国内の不満を抑える安全弁として移民を利用していると非難している。
電力の割り当て減少、燃料もほぼゼロに

キューバで事業を行う外国企業や投資家は数カ月間支払いを受けておらず、代金引換での支払いを求めている。19年以降、輸入は40%減少した。ある国内企業の経営者は「毎月使える電力の割り当てが減ったためすでに苦しい状況だったが、4月にはディーゼルもほぼ底をついた」と話した。

ウクライナ紛争は、21年の国内総生産(GDP)が前年比9%減少したキューバ経済の回復を妨げる恐れがある。通貨ペソの切り下げや品薄の物資への需要もあり、インフレ率は3桁に達している。通貨切り下げの後でもドルは闇市場で公定ルートの4倍で取引されている。

政府は商品価格や輸送コストの上昇への対応に苦慮しており、ウクライナ侵攻以降、支払いが滞ることが増えたと欧米のビジネス関係者は話す。ある貿易関係者は一部の欧州企業はロシアの銀行を経由して支払いを受けていたが、現在は行われていないと明らかにした。

ある海外投資家は「各省庁は海外との合弁会社に活動の継続に必要な最低限の資金の額を聞いている」と話し、自分もキューバ側パートナーから何カ月も資金を受け取っていないと付け加えた。

アレハンドロ・ヒル経済企画相は最近の出来事が「経済活動に大きな影響を与えている」と認め、燃料価格の高騰を例に挙げた。

元キューバ中央銀行エコノミストで現在は南米コロンビアの教皇庁立ハベリアナ大学カリ校で教壇に立つパベル・ビダル氏は、欧米の制裁によってロシアがキューバを援助する力が弱まり、「数年来危機的な状況にあった国際収支にさらなる問題が生じるだろう」と話した。

ロシアは21年に続き22年も食料や人道支援物資をキューバに送っているが、両国間の貿易や投資はソ連時代に比べ非常に低い水準にとどまっている。

ロシアのプーチン大統領とキューバのディアスカネル大統領は1月の電話会談で「戦略的協力」の強化で合意したが、ロシアが約束していたキューバへの投資案件はなかなか実現していない。
侵攻は厄介な外交問題、広がる困惑

ウクライナ侵攻はキューバにとって厄介な外交問題となっている。政府は米国と北大西洋条約機構(NATO)が紛争を引き起こしたと批判する一方で国際秩序の尊重を求めている。

元駐キューバ英国大使のポール・ヘア氏は、キューバが欧州連合(EU)との関係強化を望んでいた点を指摘し、他のロシア友好国と同様、侵攻に困惑していると述べた。「3月2日に国連総会がロシアへの非難決議を採択した際、キューバが反対票を投じず棄権したのはおそらくこれが理由だろう」

米ボストン大学パーディー・グローバルスタディーズ・スクールで上級講師を務めるヘア氏は、ウクライナ紛争によってキューバは、EUが戦略的脅威とみなす都合の悪い側を選ばざるを得なくなったとも指摘した。キューバ政府が21年の反政府デモに参加した数百人に厳しい懲役刑を下したことから、EUとの関係は紛争開始前から悪化していた。

「キューバは欧州の地図を塗り替え、世界秩序を転覆させようとするプーチン氏の試みに加担しているとみられるだろう」と同氏は述べた。

カナダの軍事史家でキューバに関する2冊の著書があるハル・クレパック氏によると、キューバ軍はソ連時代の装備とロシアの支援に大きく依存し続けている。前者はウクライナ侵攻で信頼性が傷つき、後者も軍事行動に多額の費用を費やしているロシアが継続するかは疑問だ。

問題が山積しているが、故フィデル・カストロ氏と弟のラウル氏が権力の座に就いたキューバ革命から63年たった同国で政治的変革が起きる可能性は低い。「海外への移民が市民の不満を抑える安全弁の役割を果たしている」と、ドイツ世界地域研究所のキューバ専門家バート・ホフマン氏は述べた。「支配層の間で大きな対立の兆候が見えない限り、政権は継続するというのが最も可能性の高いシナリオだ」

By Marc Frank

(2022年5月13日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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