敵軍の各種無人機を阻止する手段は現状ではまったく不十分である

敵軍の各種無人機を阻止する手段は現状ではまったく不十分である
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『Zachary Kallenborn 記者による2022-5-12記事「Seven (Initial) Drone Warfare Lessons from Ukraine」。
   各種電子妨害装置や高性能防空ミサイルを国内で調達できる大国の軍隊であっても、敵軍の各種無人機を阻止する手段は現状ではまったく不十分であることが明らかになった。

 たとえばTB2は、開戦いらい数機が撃墜されているが、そのかわりに、露軍が投入した自走SAMの半数近くを逆に撃破してしまった。圧倒的に「歩」が良い。

 またこれら無人機が提供している戦場動画が、SNS投稿を通じてウクライナ側の善戦を世界に強調宣伝することになり、ウクライナ国民を心理的に鼓舞し、それを支持する与国の輿論を盛り上げるという無形の大貢献を果たしている。

 TB2は、ナゴルノカラバフ戦争時とは役割をかなり変更している。

 2020年のナゴルノカラバフ紛争のときは、TB2が、アルメニア軍の戦車120両、APC53両、牽引野砲143門などを撃破したとされる。

 今次ウクライナ戦争では、TB2は対戦車攻撃には全く使われていない。戦車を1両も撃破していないのだ。

 TB2というものがありながら、戦車の撃破は、地上軍のATGMや、安価なマルチコプタードローンからの小型弾薬の投下や、地雷によって分担されているところが、今次戦場の大きな特徴である。

 露軍は過去何年もシリアで、ドローンによる攻撃を受けている。だから、ロシア軍とドローンに詳しいサム・ベンデットは、不思議がっている。というのはウクライナに突入した露軍地上部隊には、対ドローン用のECM装備が皆無であるように見えるからだ。彼の結論。露軍は、敵のドローンなど脅威ではないという間違った評価を、シリアで得てしまったのだ。

 ※それではナゴルノカラバフの最新戦訓をどうして無視したかがちっとも説明されない。アルメニア軍が破壊された戦車やSAMはすべてロシア製だったのだから。

この謎は、プーチン体制下のロシア人の「情報適応」によってのみ、説明可能である。独裁者が「嘘による言い訳のプロ」で「自家宣伝中毒症」に懸かっているとき、とりまきの臣下も、被支配者人民も、その宣伝に逆らってはいけないのだ。軍事専門幕僚たるショイグやゲラシモフすらも。

 これについては米軍もあまり偉そうなことは言えないはずだ。将来の戦場で、敵が各種ドローンを多用してきたときに、それをすべて叩き落せるだろうか? 甚だ疑問である。
特に米陸軍に顕著なのだが、みずからドローンを多用しようという意欲も希薄だろう。装備や戦術体系を変更する「リスク」を、出世主義の(キャリア上の「減点」をおそれる)将校たちが、皆、回避している。

 対ドローンのECMは簡単な話じゃない。局所においてGPSを妨害することは常に可能である。露軍はそれには長けている。ところがドローンの側では、GPSに頼らない飛行も、いろいろと可能なのだ。

 ※マイクロ波をAESAで一点集中して、ドローンが内臓する姿勢制御チップを短絡破壊させる方式が最も有望視されている。その「地対空電波砲」の装備はしかし未だどの軍隊も制式化すらできていない段階。なにしろ専用のレーダーとセットだから、高額になる。それに、たぶんチップ素材を変更すれば、外からの電磁波をシールドできるようにもなるであろう。

 ※もうひとつのECM回避法として「有線化」が挙げられる。昔の対戦車ミサイルのように尻からワイヤーを繰り出す仕組み。今の光ファイバーケーブルはごく軽くなっているし、マルチコプター型ドローンによる超低空飛翔に限れば、そのラインはすぐに地面にまで垂れて、余計な重さ(抵抗)も生まない。最終攻撃段階で初めて高く上昇させればいい。そして帰路には、ワイヤーボビンを切り離して捨ててしまって、最後に有線のコマンドで受信した帰還点の方位情報(機体姿勢と相関)を記憶しておいて、そこへINS航法(ジャイロ頼み)で飛び戻ればいい。

 ※業務用級のマルチコプタードローンをATGM化できると「逆BILL」が可能になる。すなわち、地面スレスレの高さから、斜め上方に向けて自己鍛造弾を発射するのだ。
かつてチャレンジャー戦車の前方下面は、RPGによって貫徹されてしまった(操縦手、重症)。露軍戦車の側面下部は、それよりももっと脆く、すぐ裏側は、カルーセル弾庫である。貫徹ができなかったとしても、履帯は間違いなく爆破できるわけである。シリアとウクライナで、APS防禦装置など何の役にも立たないことが分かっただろう。この試みは世界中の兵器ベンチャーが、考えているはずである。

 2020年9月にホビー用のドローンがロサンゼルス市警のヘリコプターのローターにひっかかって、その有人ヘリは不時着を余儀なくされている。軽量なドローンの衝突には、バードストライク以上の破壊力がある。』