オンキヨー破産申請、続いた誤算 資金や半導体不足
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF13DXV0T10C22A5000000/
※ 世の中(市場)の「変化」に、「適応」できないものは、「淘汰」される…。
※ 「人」も「組織」も「会社」も「国家」も、同じだ…。


『オンキヨーホームエンターテイメント(大阪府東大阪市)が大阪地裁に自己破産を申請した。高級オーディオメーカーとして一時代を築いた名門企業の歴史に幕が下りる。経営陣は会社存続へ「あらゆる可能性を模索した」ものの、いくつもの誤算が重なった。
ここ数年は資金調達の誤算が続いた。
2019年5月、虎の子の家庭向けAV事業を米音響機器大手サウンド・ユナイテッドに約80億円で売却すると発表したものの、交渉が頓挫して10月に破談になった。
20年7月、英領ケイマン諸島の投資ファンド「エボファンド」に8回にわたり新株を発行し総額46億円を調達する計画を公表。新株発行は4回で打ち切りになった。
21年1月、上場廃止の基準となる2期連続の債務超過を避けるため再びエボファンドに頼り新株予約権の割り当てを決めた。株式の現物出資も含め最大62億円相当を調達する計画だった。しかし新株予約権行使は一部で調達は12億円にとどまった。
同日中に債務超過が解消されないと上場廃止になる21年3月31日。夕方までファンドと予約権の行使を交渉した。オンキヨー側は「債務超過解消」のリリースも用意していたが、不調に終わる。21年3月期末時点で23億円の債務超過が決まった。
帝国データバンク大阪支社の昌木裕司情報部長は「ファンドなどに足元を見られた」とみる。
半導体不足も誤算だった。AV機器事業はシャープなどに売却したが、日本国内の販売代理店として他社のAV機器を販売して収益を上げるはずだった。しかし半導体不足と物流混乱でアンプやスピーカーの生産が滞った。
会見する破産管財人の小松陽一郎弁護士(大阪市)
このため22年3月、販売代理業務の主要子会社の破産を余儀なくされた。今回の破産手続きの申請理由にも「半導体供給問題解消の見込みが立たないこと」を挙げた。
最大の誤算は視聴スタイルの変化だ。スマートフォンなどの普及によるハードの変化と、「スポティファイ」など定額課金型(サブスクリプション)の楽曲配信サービスの普及による音源の変化が重なった。CDをミニコンポで聞くスタイルは廃れた。
電子情報技術産業協会(JEITA)によると、11年に1521億円あった国内の音響機器市場は21年に723億円に縮小した。オンキヨーホームエンターテイメントの林亨社長は21年の取材で「成長を支えてきたミニコンポ需要は消滅に近い」と語っていた。
ここ1~2年は新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要で、海外中心に家庭向けAV機器の需要は回復局面だった。だが資金も半導体も足りなかった。林社長は「製品を生産できる資金があればシェアを取り戻せる状態だった」と語る。
帝国データバンクの昌木氏は今回の破産申請について「日本の電機産業が隆盛を誇っていた時代からピークアウトした象徴的な事例」と語る。
(平嶋健人)』