イスラエルは何故、西側のロシア制裁に加わらないのか

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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和四年(2022)5月15日(日曜日)
        通巻第7333号  <前日発行>
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 イスラエルは何故、西側のロシア制裁に加わらないのか
  ロシアとウクナイナにはまだ数十万のユダヤ人がいる
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 『 国連のロシア非難決議にイスラエルは棄権した。国連人権委員会のメンバーからロシア排除決議には加わったが、その鵺的な行動はドイツに似ている。

 ドイツはノルドストリーム2のガス供給を中断させてまでウクライナへの武器支援に踏み切ったが、決断に数週間を要した。しかし供与した携行ミサイルなど倉庫に十年以上眠っていたので、なかには錆び付いて使い物にならない兵器もあった。また国防費をGDP2%にするとしたが、後日「四年間で」と修正している。

 評論家のアロン・ピンカスは『イスラエルの態度は不道徳で無礼だ』と批判した。イスラエル国内でもベンアミ元外相は「全面支援が不可能な場合、イスラエルが支払う代償はロシアがシリアに提供したS400ミサイル防空網によって空域の空航優越を失うたことだ」と述べ、ロシアの顔色を伺っている裡に失ったものが大きいとした。

 国際社会からイスラエルの決定は数週間も遅れていると批判が強まる中、ベネット政権はヘルメット、防弾チョッキの提供に踏み切った(日本とかわりない)。

 ウクライナが強く要請したアイアンドームの供与は断った。しかし人道援助に関しては積極的で野外病院、救急車、医薬品を提供し、またウクライナ難民24000名を引き受けた(このうちの三分の二は非ユダヤ人である)。

 国内的にはイスラエル人口の15%がロシア、ウクライナからの移民である。

統計によって数字はまちまちだが、ロシアにはまだ10万のユダヤ人が残り(60万という統計もある)、ウクライナには45000名(20万とも)。エルサレムポスト(5月12日)によれば『中核的ユダヤ人』(ユダヤの母親から生まれ、ユダヤ教を信ずるユダヤ人のこと)はロシア国内に15万人という。

 イスラエルの姿勢がウクライナ支援に傾斜するのはラブロフ外相が「ヒトラーにもユダヤ人の血がはいっていた」という発言からで、5月9日のクネセトに招かれていたロシア大使のアナトリー・ビクトロフに罵声が飛んだため、途中で退席するハプニングが発生した。
 
  ▲ロシアに残留しているユダヤ人はおよそ十五万人

戦争開始以後、ロシア在住ユダヤ人の若者の90%が海外へ出た(イスラエルと欧米のほか、ドバイに集中する。ロシアでハイテク企業を経営していたユダヤ人がドバイに拠点を移したため多くのエンジニアも随行移動した。

のこされたユダヤ人はATMが止まって、無一文の暮らしを強いられた家庭が四千世帯という。

 イスラエルがロシアに対し強硬な姿勢がとりにくいのは次の理由による。

 第一にロシア、ウクライナにのこるユダヤ人は『人質』なのである。ホロコーストはウクライナでも夥しい犠牲があり、ロシアではポグラムによって相当数のユダヤ人が殺害された。その記憶は依然として鮮明だからだ。

 第二にエネルギー安全保障から言えば、イスラエルは沖合油田開発でいまでは石油自給国であり、ドイツなどのようにガスをロシアに依存していない。その脆弱性はないが、経済関係でロシアとイスラエルの絆はオルガルヒの大活躍もあって非常に強い。

 第三は国家安全保障の観点からすべての政策を決めるイスラエルにとって、シリアとレバノンに巣くうヒズボラ、ハマスなどのテロリストがイランからの武器供与によってテロ攻勢を強める可能性がある。イランの背後にはロシアがいるからだ。
 ましてシリアに配備されS400によりイスラエルは空域優位を確保できないため、ロシアに強く出るのは得策ではないと判断してきた。

 ▲ゼレンスキー大統領の周りを囲む高学歴・弁護士出身のブレーンたち

 ゼレンスキー・ウクライナ大統領はG7の国々に加え、日本、イスラエルなどの国会でも演説の場を与えられ、同情を得るという望外の優位を得た。

宣伝戦争においてロシアに「圧勝」した。この演説草稿を書き、心理を分析し巧妙なプロパガンダを敷衍できたのも、周囲のブレーンが若くて、高学歴で、弁護士もしくは医者か学者から政治を志した人たちが多いからだろう。この新人脈に注目が必要だ。

 首相はデニス・シュミハリ。ユダヤ人だ。
 国防相はオレクシー・レズニュク。弁護士出身。
 軍司令官で大将はオレクシー・ザルジニー
 外相はドミトロ・クレーバー、父親はアルメニア、カザフスタン大使を歴任。
 国家安全保障局長官は、オレクシー・ダニーロフ(ルハンスク前知事)
大統領府長官はアンドリー・イニルマーク(弁護士、TVプロヂュサー)

閣僚クラスで、現時点でユダヤ人と分かっているのは首相と大統領顧問のアレクシー・アレストビッチだけだが、ほかも名前と履歴などからユダヤ人が多いと推定される。

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