米ロシア国防相が電話協議 ウクライナ侵攻後初めて米高官「いい兆候」 これまでロシアが拒否

米ロシア国防相が電話協議 ウクライナ侵攻後初めて
米高官「いい兆候」 これまでロシアが拒否
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN13ERY0T10C22A5000000/

※ 今日は、こんなところで…。

『【ワシントン=坂口幸裕】オースティン米国防長官は13日、ロシアのショイグ国防相と電話で1時間ほど協議した。米国防総省によると、オースティン氏はウクライナでの即時停戦を要求し、米ロの国防当局で意思疎通を維持する重要性を強調した。

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両氏が話し合うのは2月18日以来で、ロシアがウクライナに侵攻した2月24日以降初めてとなる。電話はオースティン氏が要請した。国防総省高官は13日、記者団に「ロシアがこのつながりを持ったことは良い兆候であり、オースティン氏はこれからも連絡を取り続けるよう望んでいる」と述べた。

ロシアの侵攻開始後、米国とロシア両政府の国防・軍トップの対話は途絶えていた。オースティン氏がショイグ氏に、ミリー米統合参謀本部議長がロシア軍のゲラシモフ参謀総長に何度も協議を呼びかけてきたものの、いずれもロシアが拒んできた経緯がある。

米ロは3月上旬、現場レベルでやりとりする「衝突回避(デコンフリクション)ライン」を設けた。両軍の日常の任務が偶発的な対立にならないよう避けるための措置で、米国はドイツに置く欧州司令部に設置した。

ただ、両国の高官による対話ができていなかったとみられる。双方が相手の出方が読めずに言葉の応酬が疑心を深め、軍事的なエスカレートを招きかねないとの懸念が強まっていた。』

米、トルコの方針把握急ぐ 北欧のNATO加盟巡り

米、トルコの方針把握急ぐ 北欧のNATO加盟巡り
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1406X0U2A510C2000000/

『【ワシントン=中村亮】トルコがフィンランドやスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟に難色を示したことをめぐり、米国のサキ大統領報道官は13日の記者会見で「トルコの立場を明確に知るために取り組んでいる」と述べた。トルコが反対に回れば北欧2カ国の加盟手続きが迅速に進まない可能性がある。

サキ氏は北欧2カ国の加盟について「NATO加盟国から幅広い支持があることに疑いの余地はない」と強調した。フィンランドが加盟申請した場合に米国や英国、フランス、ドイツは歓迎する意向を示している。

トルコのエルドアン大統領は13日、イスタンブールで記者団に対し、フィンランドやスウェーデンの加盟について「前向きに考えていない」と述べた。北欧諸国についてトルコがテロ組織として敵視するクルド系武装勢力などに近いことなどを理由にあげた。トルコはNATOに加盟している。』

「勝利」しかない専制主義 進む中国の現実離れ

「勝利」しかない専制主義 進む中国の現実離れ
風見鶏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM108X40Q2A510C2000000/

『5月初めの連休が明けてすぐ、中国でまたタガがはずれた音がした気がした。

新型コロナウイルスのゼロコロナ対策で混乱が続くなか、様々な省や市、区で相次ぎ緊急会議が開かれた。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が5日に共産党最高指導部の会議で演説し「わが国の防疫政策を疑い、否定するあらゆる言動と断固戦う」と厳命したことを受けたものだ。

事実上の都市封鎖(ロックダウン)下にある上海市でも急きょ市や区で「大上海防衛戦必勝動員会」を開いた。出席した幹部らは口々に習氏を称賛し、一層厳しい姿勢でゼロコロナに臨む決意を表明したという。

言葉だけでなく、実際に理不尽さは加速した。陽性者と同じ棟に住むだけで陰性でも隔離施設送りになる措置も出た。市民の不満は募る一方だが、上海に許されたゴールはひとつしかない。感染を抑え込み「上海市民の勝利」を皆でたたえ合う未来だ。

中国の人たちはなぜ政府の無理難題に唯々諾々と従うのか――。彼らの思いを推測する言葉として「ニラ」というネット用語がある。「刈っても刈っても生えてくる代替可能な存在」。庶民の自嘲表現だ。

中国で人民が政治に関わる機会はほぼない。そもそも中国には西側諸国のような「政治」もない。あるのは党内の権力闘争だけだ。

庶民も生活に直結する問題では時に声をあげる。党中央の耳に届けば地方の役人が処分されたりもする。

上海でも「食べものがない」「通院できない」という激しい怒りの声が現場の職員らにぶつけられた。これを受け、新型コロナ収束後は役人の処分が相次ぐだろう。だが、それだけだ。命を落とした人々や壊された生活が検証されることはおそらくない。市民らも政権の責任など追及することなく日常に戻っていく。

中国共産党を風刺し中国系の人々に大ヒットしたYouTubeの動画にはパンダがニラをザクザクと切る隠喩が出てくる(YouTube画面より)

人口学者のエマニュエル・トッド氏は中国の社会構造を「家父長を持つ農村の外婚制共同体家族」と説明した。「絶対的な父」に従う権威主義には伝統的になじみがあり、思考を止めて党の指導に従う体制への抵抗は少ないといえる。

それでも1989年6月、若者たちは自分たちの手で政治を変えられる時代が来たと考え天安門広場に集った。それは勘違いだった。党はまったく変わっておらず、敵でもなければ武装もしていない学生たちを戦車や銃で弾圧した。

だから、再び人々は「ニラ」になった――。生きていくため。家族のため。

今回の上海ロックダウンを受け、世界では中国経済が致命的な打撃を受けるとの見方が優勢だ。それも習氏にとっては必要な犠牲であり敗北ではないだろう。

中国政府は5.5%前後とした今年の経済成長目標を「堅持する」とし、インフラ・不動産投資の拡大に向け金融政策を積極投入する姿勢も示している。若者の失業率が2桁に達するなど不安材料は事欠かないがそれだけ強気な背景にはなにか秘策があるのだろう。

結局、勝利以外の結末は許されない。それは専制国家が抱える性(さが)といえるが中国ではゼロコロナを機にタガがはずれ現実との乖離(かいり)が加速したようにみえる。隣国には大きなリスク要因となる。

習近平国家主席(21年11月11日、中国中央テレビ放映)=共同

そして改めて感じるのは「負けた」と言える日本の恵まれた状況だ。だからといってそれで終わっていては意味がない。コロナ禍を通じてあらわとなった日本の数々の問題の検証と改革は進んでいるのだろうか。

加えてその改革を考えるプロセスには多くの市民も参画しなければ民主主義社会とはいえない。自由は責任と義務を伴う。それでも「ニラ」ではなく「考えるアシ」でいたいと思う。

(中国総局長 桃井裕理)』

南オセチア、ロシアへの編入問う住民投票を7月実施

南オセチア、ロシアへの編入問う住民投票を7月実施
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR13FAW0T10C22A5000000/

 ※ 『ビビロフ氏は5月8日の「大統領選決選投票」で敗れたばかりで、住民投票の実施を決めた真意も不明だ。』…。

 ※ 日本国で言えば、「政権党の「総裁選」に敗れた、某氏が、北海道知事になって、某国への編入を問う住民投票を実施する。」という感じか…。

 ※ 各権力機構間の「権限」の分配とか、そもそもの「住民投票」の位置付けとか、さっぱり分からんな…。

『【ブリュッセル=竹内康雄】旧ソ連南部ジョージア(グルジア)からの分離・独立を宣言している南オセチア地域は13日、7月17日にロシアへの編入の是非を問う住民投票を実施すると明らかにした。ロシアの通信社各社が伝えた。

ウクライナへの侵攻を続けるロシアの領土拡大の動きがジョージアに波及した形で、ジョージアとロシアの間で激しい対立に発展する可能性がある。

タス通信などによると、「南オセチア大統領」を称するアナトリー・ビビロフ氏が13日、ロシアへの編入を巡る住民投票を実施するとの命令に署名した。「大統領府」のインターネットサイトで公表した。実際に行われれば、圧倒的多数で編入が支持されるとみられる。

今回の南オセチアの決定に関して、ロシア側の反応は明らかになっていない。ビビロフ氏は5月8日の「大統領選決選投票」で敗れたばかりで、住民投票の実施を決めた真意も不明だ。ただ、こうした重要な案件について、後ろ盾であるロシア側との事前調整がないとは考えにくい。

南オセチアはジョージア北部にあり、滋賀県ほどの広さだ。住民は約5万人で、カフカス地域の民族の一つ、オセット人が約9割を占める。南オセチアはソ連末期にロシア南部北オセチア自治共和国への編入を求めてジョージア政府側との軍事衝突に発展し、「共和国」の樹立を一方的に宣言した。

ロシアは2014年、ウクライナ南部クリミア半島で住民投票を仕掛け、圧倒的多数の賛成票を得たとして一方的に併合した。22年2月にはウクライナへの軍事侵攻に踏み切り、占領した同国南部ヘルソン州などを併合する動きを見せている。

南オセチアの住民投票が、ロシアがもくろむ領土拡大の影響を受けた動きであることは確実だ。南オセチアを巡っては08年にジョージアとロシアの間で激しい紛争となった。今回も地域情勢が急速に不安定になるリスクがある。

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中国元建て融資、4月7割減 コロナ封鎖で住宅ローン不振

中国元建て融資、4月7割減 コロナ封鎖で住宅ローン不振
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM141950U2A510C2000000/

『【北京=川手伊織】中国で銀行融資が落ち込んでいる。4月の人民元建て新規貸し出しは前年同月比72%減った。減少率は2010年3月以来、約12年ぶりの大きさとなった。新型コロナウイルスの感染を徹底して抑え込む「ゼロコロナ規制」で厳しい行動制限が広がり、ローンを組んで住宅や自動車を買う人が大幅に減った。

中国人民銀行(中央銀行)が13日、社会全体が銀行や市場から調達した資金を示す「社会融資規模」などを公表した。4月の新規調達額は9102億元(約17兆3000億円)で、前年同月から51%減った。このうち元建ての融資額は3616億元と、09年11月以来の低水準だった。

上海市の都市封鎖(ロックダウン)など厳しい行動制限で、住宅や自動車の販売が大幅に落ち込んだためだ。住宅や自動車向けの新規ローンはマイナスとなった。新たな借入額が返済額を下回ったことを示す。

社会融資規模の4月末の残高は前年同月末より10.2%増えた。地方政府によるインフラ債の発行が全体を押し上げた。政府債券を除いた残高は9.0%増だった。遡れる17年以降で最も低い伸びで、企業や家計の資金需要の弱さを示した。』

ロシア軍、ウクライナ東部で渡河作戦失敗 英国防省分析

ロシア軍、ウクライナ東部で渡河作戦失敗 英国防省分析
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR1395S0T10C22A5000000/

『【イスタンブール=木寺もも子】英国防省は13日、ロシア軍がウクライナ東部ルガンスク州のドネツ川で渡河作戦に失敗し、少なくとも1個大隊級の戦力を失うなどの大きな打撃を受けたとする分析を公表した。首都キーウ近郊から撤退して東部に戦力を集中する作戦は目立った戦果を挙げていないとも指摘した。

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ウクライナ国防省は11日、ロシア軍がドネツ川を渡るためにかけた浮橋を破壊したことを示す写真を公表した。英国防省の分析はこれを指しているとみられる。

英国防省の分析によると、ロシア軍は東部戦線でウクライナ軍を包囲し、西部にいる部隊との合流や補給路を断とうとしている。そのためにドネツ川に近いセベロドネツク周辺などに戦力を投入し、川から西方に位置するドネツク州クラマトルスクなどの掌握を目指しているとみる。

英国防省は戦場で川を渡るのが「きわめてリスクの高い作戦」だと指摘し、ロシア軍の司令官は東部戦線で戦果を挙げるために強い圧力を受けているとの見方を示した。

一方、ロシア国防省は13日、ウクライナ中部クレメンチュクの製油所を攻撃し、生産設備や貯蔵庫を破壊したと発表した。ウクライナはロシアによるインフラ攻撃などで燃料不足に苦しんでおり、状況が悪化する恐れがある。』

オンキヨー破産申請、続いた誤算 資金や半導体不足

オンキヨー破産申請、続いた誤算 資金や半導体不足
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF13DXV0T10C22A5000000/

 ※ 世の中(市場)の「変化」に、「適応」できないものは、「淘汰」される…。

 ※ 「人」も「組織」も「会社」も「国家」も、同じだ…。

『オンキヨーホームエンターテイメント(大阪府東大阪市)が大阪地裁に自己破産を申請した。高級オーディオメーカーとして一時代を築いた名門企業の歴史に幕が下りる。経営陣は会社存続へ「あらゆる可能性を模索した」ものの、いくつもの誤算が重なった。

ここ数年は資金調達の誤算が続いた。

2019年5月、虎の子の家庭向けAV事業を米音響機器大手サウンド・ユナイテッドに約80億円で売却すると発表したものの、交渉が頓挫して10月に破談になった。

20年7月、英領ケイマン諸島の投資ファンド「エボファンド」に8回にわたり新株を発行し総額46億円を調達する計画を公表。新株発行は4回で打ち切りになった。

21年1月、上場廃止の基準となる2期連続の債務超過を避けるため再びエボファンドに頼り新株予約権の割り当てを決めた。株式の現物出資も含め最大62億円相当を調達する計画だった。しかし新株予約権行使は一部で調達は12億円にとどまった。

同日中に債務超過が解消されないと上場廃止になる21年3月31日。夕方までファンドと予約権の行使を交渉した。オンキヨー側は「債務超過解消」のリリースも用意していたが、不調に終わる。21年3月期末時点で23億円の債務超過が決まった。

帝国データバンク大阪支社の昌木裕司情報部長は「ファンドなどに足元を見られた」とみる。

半導体不足も誤算だった。AV機器事業はシャープなどに売却したが、日本国内の販売代理店として他社のAV機器を販売して収益を上げるはずだった。しかし半導体不足と物流混乱でアンプやスピーカーの生産が滞った。
会見する破産管財人の小松陽一郎弁護士(大阪市)

このため22年3月、販売代理業務の主要子会社の破産を余儀なくされた。今回の破産手続きの申請理由にも「半導体供給問題解消の見込みが立たないこと」を挙げた。

最大の誤算は視聴スタイルの変化だ。スマートフォンなどの普及によるハードの変化と、「スポティファイ」など定額課金型(サブスクリプション)の楽曲配信サービスの普及による音源の変化が重なった。CDをミニコンポで聞くスタイルは廃れた。

電子情報技術産業協会(JEITA)によると、11年に1521億円あった国内の音響機器市場は21年に723億円に縮小した。オンキヨーホームエンターテイメントの林亨社長は21年の取材で「成長を支えてきたミニコンポ需要は消滅に近い」と語っていた。

ここ1~2年は新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要で、海外中心に家庭向けAV機器の需要は回復局面だった。だが資金も半導体も足りなかった。林社長は「製品を生産できる資金があればシェアを取り戻せる状態だった」と語る。

帝国データバンクの昌木氏は今回の破産申請について「日本の電機産業が隆盛を誇っていた時代からピークアウトした象徴的な事例」と語る。

(平嶋健人)』

プーチンは先週、ウクライナ情報をプーチンに上げる担当からFSBを外し、代わって、GRUに頼ることにした。

プーチンは先週、ウクライナ情報をプーチンに上げる担当からFSBを外し、代わって、GRUに頼ることにした。
https://st2019.site/?p=19515

 ※ 『エルドアンはフィンランドのNATO加盟はまずいようなことを口走っている。NATO30ヵ国のうち1ヵ国でも反対すれば、新加盟はできない仕組みである。』…。

 ※ トルコに限らず、いわゆる「西側(同盟)諸国」においても、「米国の勝ちすぎ」「ロシアの決定的弱体化」は、「ちょっと、困る」「それはそれで、好ましくは無い。」とする国が、ゴマンとあるだろう…。

 ※ 逆に、米国は、そういうことは「百も承知」で、その「世界戦略」を、組み立てて行く…。いずれにせよ、「狐と狸の化かし合い」なんだ…。

 ※ 世界は、既に「ウクライナ後」のことを、考えている…。

 ※ 頭が単純なヤツは、「淘汰されて行く」…。それだけの話しだ…。

 『Andrei Soldatov and Irina Borogan 記者による2022-5-12記事「Putin Pulls Russian Spy Agency Out of Ukraine」。

   プーチンは先週、ウクライナ情報をプーチンに上げる担当からFSBを外し、代わって、GRUに頼ることにした。

 そのGRUのキーパーソンは、ウラディミル・アレクセイエフ。

 ウクライナ情報は従来、FSBの「第五課」の担当だった。「ロシア語を話す住民が一斉蜂起しますよ」などとプーチンに請合っていたが、まったく外れた。FSB長官のセルゲイ・ベセダは逮捕され、悪名高いレフォルトヴォ刑務所に一時ぶちこまれてしまった。
 アレクセイエフはスペツナズ出身で海外(西側)大使館勤務も重ねてきた。2011からGRUを仕切っている。 ショイグが国防大臣に就いたのが2012である。

 ※雑報によると、アゾフスターリ製鉄所に向けて露軍は、240ミリの誘導式の迫撃砲弾を撃ち込んでいるという。地下壕攻撃スペシャルと考えられる。

 また米国がウクライナ軍に、60ミリ軽迫撃砲の「M224」をすでに供給中であることも、写真投稿によって判明した。

 トルコはアゾフスターリの地下の負傷兵たちについて、トルコの船舶にて預かり、終戦まで戦場に戻さない、という提案をモスクワにしたのだが、プーチンが拒否した。

 エルドアンはフィンランドのNATO加盟はまずいようなことを口走っている。NATO30ヵ国のうち1ヵ国でも反対すれば、新加盟はできない仕組みである。』

55歳のガビドゥリン氏。元ワグネルの傭兵。今次ウクライナ戦争がスタートする数ヵ月前に、リクルーターから電話で「また現役に戻ってウクライナで戦わないか」と誘われたという。

55歳のガビドゥリン氏。元ワグネルの傭兵。今次ウクライナ戦争がスタートする数ヵ月前に、リクルーターから電話で「また現役に戻ってウクライナで戦わないか」と誘われたという。
https://st2019.site/?p=19515

『2022-5-10記事「’I quit the Wagner group after the Kremlin sent me to Syria ? here’s why’」。

   55歳のガビドゥリン氏。元ワグネルの傭兵で、ながらくシリアで戦闘してきたが、2019年に退職した。しかし、今次ウクライナ戦争がスタートする数ヵ月前に、リクルーターから電話で「また現役に戻ってウクライナで戦わないか」と誘われたという。

 その電話のリクルーターは、相手のウクライナ軍は未経験兵の寄せ集めだから楽勝だと語っていたという。ガ氏は、それを信じなかった。

 ガ氏は誘いを断った。

 氏は今、フランスに住んでいて、ワグネルで体験したことを本に書いて出版する予定である。彼は片方の腎臓を手術で摘出してしまっている。

 ※雑報によると、シリアに派遣されていた露軍が呼び戻されている。それは航空部隊も、なのか? 詳細は不明。』

敵軍の各種無人機を阻止する手段は現状ではまったく不十分である

敵軍の各種無人機を阻止する手段は現状ではまったく不十分である
https://st2019.site/?p=19515

『Zachary Kallenborn 記者による2022-5-12記事「Seven (Initial) Drone Warfare Lessons from Ukraine」。
   各種電子妨害装置や高性能防空ミサイルを国内で調達できる大国の軍隊であっても、敵軍の各種無人機を阻止する手段は現状ではまったく不十分であることが明らかになった。

 たとえばTB2は、開戦いらい数機が撃墜されているが、そのかわりに、露軍が投入した自走SAMの半数近くを逆に撃破してしまった。圧倒的に「歩」が良い。

 またこれら無人機が提供している戦場動画が、SNS投稿を通じてウクライナ側の善戦を世界に強調宣伝することになり、ウクライナ国民を心理的に鼓舞し、それを支持する与国の輿論を盛り上げるという無形の大貢献を果たしている。

 TB2は、ナゴルノカラバフ戦争時とは役割をかなり変更している。

 2020年のナゴルノカラバフ紛争のときは、TB2が、アルメニア軍の戦車120両、APC53両、牽引野砲143門などを撃破したとされる。

 今次ウクライナ戦争では、TB2は対戦車攻撃には全く使われていない。戦車を1両も撃破していないのだ。

 TB2というものがありながら、戦車の撃破は、地上軍のATGMや、安価なマルチコプタードローンからの小型弾薬の投下や、地雷によって分担されているところが、今次戦場の大きな特徴である。

 露軍は過去何年もシリアで、ドローンによる攻撃を受けている。だから、ロシア軍とドローンに詳しいサム・ベンデットは、不思議がっている。というのはウクライナに突入した露軍地上部隊には、対ドローン用のECM装備が皆無であるように見えるからだ。彼の結論。露軍は、敵のドローンなど脅威ではないという間違った評価を、シリアで得てしまったのだ。

 ※それではナゴルノカラバフの最新戦訓をどうして無視したかがちっとも説明されない。アルメニア軍が破壊された戦車やSAMはすべてロシア製だったのだから。

この謎は、プーチン体制下のロシア人の「情報適応」によってのみ、説明可能である。独裁者が「嘘による言い訳のプロ」で「自家宣伝中毒症」に懸かっているとき、とりまきの臣下も、被支配者人民も、その宣伝に逆らってはいけないのだ。軍事専門幕僚たるショイグやゲラシモフすらも。

 これについては米軍もあまり偉そうなことは言えないはずだ。将来の戦場で、敵が各種ドローンを多用してきたときに、それをすべて叩き落せるだろうか? 甚だ疑問である。
特に米陸軍に顕著なのだが、みずからドローンを多用しようという意欲も希薄だろう。装備や戦術体系を変更する「リスク」を、出世主義の(キャリア上の「減点」をおそれる)将校たちが、皆、回避している。

 対ドローンのECMは簡単な話じゃない。局所においてGPSを妨害することは常に可能である。露軍はそれには長けている。ところがドローンの側では、GPSに頼らない飛行も、いろいろと可能なのだ。

 ※マイクロ波をAESAで一点集中して、ドローンが内臓する姿勢制御チップを短絡破壊させる方式が最も有望視されている。その「地対空電波砲」の装備はしかし未だどの軍隊も制式化すらできていない段階。なにしろ専用のレーダーとセットだから、高額になる。それに、たぶんチップ素材を変更すれば、外からの電磁波をシールドできるようにもなるであろう。

 ※もうひとつのECM回避法として「有線化」が挙げられる。昔の対戦車ミサイルのように尻からワイヤーを繰り出す仕組み。今の光ファイバーケーブルはごく軽くなっているし、マルチコプター型ドローンによる超低空飛翔に限れば、そのラインはすぐに地面にまで垂れて、余計な重さ(抵抗)も生まない。最終攻撃段階で初めて高く上昇させればいい。そして帰路には、ワイヤーボビンを切り離して捨ててしまって、最後に有線のコマンドで受信した帰還点の方位情報(機体姿勢と相関)を記憶しておいて、そこへINS航法(ジャイロ頼み)で飛び戻ればいい。

 ※業務用級のマルチコプタードローンをATGM化できると「逆BILL」が可能になる。すなわち、地面スレスレの高さから、斜め上方に向けて自己鍛造弾を発射するのだ。
かつてチャレンジャー戦車の前方下面は、RPGによって貫徹されてしまった(操縦手、重症)。露軍戦車の側面下部は、それよりももっと脆く、すぐ裏側は、カルーセル弾庫である。貫徹ができなかったとしても、履帯は間違いなく爆破できるわけである。シリアとウクライナで、APS防禦装置など何の役にも立たないことが分かっただろう。この試みは世界中の兵器ベンチャーが、考えているはずである。

 2020年9月にホビー用のドローンがロサンゼルス市警のヘリコプターのローターにひっかかって、その有人ヘリは不時着を余儀なくされている。軽量なドローンの衝突には、バードストライク以上の破壊力がある。』

『エルサレム・ポスト』紙が、ロシア国内の軍需工場の惨状をリポートしている。

『エルサレム・ポスト』紙が、ロシア国内の軍需工場の惨状をリポートしている。
https://st2019.site/?p=19469

『シベリアの軍需工場の労働組合からロシア首相に当てた手紙。その内容だ。
 いわく。低賃金のうえにレイオフの嵐が吹き荒れていると。

 これが西側の経済制裁の直接の影響であることは、あきらかである。』

ブルガリアは、米国から2隻のLNGタンカーを6月に受け入れる。

ブルガリアは、米国から2隻のLNGタンカーを6月に受け入れる。
https://st2019.site/?p=19469

『ロイターの2022-5-11記事「Bulgaria to Receive US LNG Deliveries Starting in June」。
   ブルガリアは、米国から2隻のLNGタンカーを6月に受け入れる。

 ガスプロムはすでに4月27日に、ポーランド向けとブルガリア向けの天然ガス供給を止めている。ガス代金をルーブルで支払うことを拒否したというので。

 米国のLNGタンカーが届ける天然ガスの代金は、ガスプロムの料金よりも少し安いという。

 ブルガリアはもっか、アゼルバイジャンともLNG商談をしている。その天然ガスは、ギリシャとトルコまでパイプラインで運ばれ、その港からブルガリアへ、LNGタンカーで搬入される。』

トルコのエルドアン大統領「フィンランド、スウェーデンのNATO加盟は不快」

 ※ 『エルドアンは嘗てクーデターを寸前のところで脱出し、その機密情報をもたらしてくれたのがロシアの諜報筋であった。』…。

 ※ これは、初耳。

 ※ 『背後に米国に亡命したギュラン師の暗躍があった』…。
 
   これは、よく言われている話し…。(それで、「背後で、米国が糸を引いていたのでは…。」との疑惑があるわけだ。折から、トルコがロシア製のS400を導入する、という話しがあったしな…)。

「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和四年(2022)5月15日(日曜日)
        通巻第7333号  <前日発行>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『  トルコのエルドアン大統領「フィンランド、スウェーデンのNATO加盟は不快」
   「欧米は聞く耳がない、両国のNATO加盟は誤った判断だ」
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 西側のすべてが前向きではない。5月13日、トルコのエルドアン大統領は発言した。
「フィンランド、スウェーデンのNATO加盟は不快」、「欧米は聞く耳を持たないようだが、両国のNATO加盟は誤った判断だ」。

 エルドアンは「二番目の過ち」と指摘し、NATO総会では反対すると明言した。最初の誤断はギリシアの加盟で、トルコが猛烈に反対したが、ほかのNATO加盟国はエルドアンの反対に耳を傾けなかった。

 フィンランド、スウェーデンのNATO加盟への動きに衝撃を受けたロシアは露骨に反対した。実現するとしても一年後だが、トルコの反対理由はロシアとは異なり、「北欧はテロリストの温床であり、PKKとDHKP─Cの『ゲストハウス』のようだ」とする。
PKK(クルド労働者党(旧『民族解放軍』)はイラク北部に拠点がある。DHKP─C(革命人民解放戦線)はクルド族主体の過激テロリスト組織で、過去にエルドアン大統領暗殺未遂を試みた。各地でテロ行為を展開してきた。

エルドアンは嘗てクーデターを寸前のところで脱出し、その機密情報をもたらしてくれたのがロシアの諜報筋であった。背後に米国に亡命したギュラン師の暗躍があったとし、トルコは米国にギュランの身柄引き渡しを要求したがなしのつぶて、トルコは米国につむじを曲げているのである。

 □○◎○☆み○◎○や○☆△○ざ☆○◎☆◎き◎△☆□    』

イスラエルは何故、西側のロシア制裁に加わらないのか

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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和四年(2022)5月15日(日曜日)
        通巻第7333号  <前日発行>
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 イスラエルは何故、西側のロシア制裁に加わらないのか
  ロシアとウクナイナにはまだ数十万のユダヤ人がいる
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 『 国連のロシア非難決議にイスラエルは棄権した。国連人権委員会のメンバーからロシア排除決議には加わったが、その鵺的な行動はドイツに似ている。

 ドイツはノルドストリーム2のガス供給を中断させてまでウクライナへの武器支援に踏み切ったが、決断に数週間を要した。しかし供与した携行ミサイルなど倉庫に十年以上眠っていたので、なかには錆び付いて使い物にならない兵器もあった。また国防費をGDP2%にするとしたが、後日「四年間で」と修正している。

 評論家のアロン・ピンカスは『イスラエルの態度は不道徳で無礼だ』と批判した。イスラエル国内でもベンアミ元外相は「全面支援が不可能な場合、イスラエルが支払う代償はロシアがシリアに提供したS400ミサイル防空網によって空域の空航優越を失うたことだ」と述べ、ロシアの顔色を伺っている裡に失ったものが大きいとした。

 国際社会からイスラエルの決定は数週間も遅れていると批判が強まる中、ベネット政権はヘルメット、防弾チョッキの提供に踏み切った(日本とかわりない)。

 ウクライナが強く要請したアイアンドームの供与は断った。しかし人道援助に関しては積極的で野外病院、救急車、医薬品を提供し、またウクライナ難民24000名を引き受けた(このうちの三分の二は非ユダヤ人である)。

 国内的にはイスラエル人口の15%がロシア、ウクライナからの移民である。

統計によって数字はまちまちだが、ロシアにはまだ10万のユダヤ人が残り(60万という統計もある)、ウクライナには45000名(20万とも)。エルサレムポスト(5月12日)によれば『中核的ユダヤ人』(ユダヤの母親から生まれ、ユダヤ教を信ずるユダヤ人のこと)はロシア国内に15万人という。

 イスラエルの姿勢がウクライナ支援に傾斜するのはラブロフ外相が「ヒトラーにもユダヤ人の血がはいっていた」という発言からで、5月9日のクネセトに招かれていたロシア大使のアナトリー・ビクトロフに罵声が飛んだため、途中で退席するハプニングが発生した。
 
  ▲ロシアに残留しているユダヤ人はおよそ十五万人

戦争開始以後、ロシア在住ユダヤ人の若者の90%が海外へ出た(イスラエルと欧米のほか、ドバイに集中する。ロシアでハイテク企業を経営していたユダヤ人がドバイに拠点を移したため多くのエンジニアも随行移動した。

のこされたユダヤ人はATMが止まって、無一文の暮らしを強いられた家庭が四千世帯という。

 イスラエルがロシアに対し強硬な姿勢がとりにくいのは次の理由による。

 第一にロシア、ウクライナにのこるユダヤ人は『人質』なのである。ホロコーストはウクライナでも夥しい犠牲があり、ロシアではポグラムによって相当数のユダヤ人が殺害された。その記憶は依然として鮮明だからだ。

 第二にエネルギー安全保障から言えば、イスラエルは沖合油田開発でいまでは石油自給国であり、ドイツなどのようにガスをロシアに依存していない。その脆弱性はないが、経済関係でロシアとイスラエルの絆はオルガルヒの大活躍もあって非常に強い。

 第三は国家安全保障の観点からすべての政策を決めるイスラエルにとって、シリアとレバノンに巣くうヒズボラ、ハマスなどのテロリストがイランからの武器供与によってテロ攻勢を強める可能性がある。イランの背後にはロシアがいるからだ。
 ましてシリアに配備されS400によりイスラエルは空域優位を確保できないため、ロシアに強く出るのは得策ではないと判断してきた。

 ▲ゼレンスキー大統領の周りを囲む高学歴・弁護士出身のブレーンたち

 ゼレンスキー・ウクライナ大統領はG7の国々に加え、日本、イスラエルなどの国会でも演説の場を与えられ、同情を得るという望外の優位を得た。

宣伝戦争においてロシアに「圧勝」した。この演説草稿を書き、心理を分析し巧妙なプロパガンダを敷衍できたのも、周囲のブレーンが若くて、高学歴で、弁護士もしくは医者か学者から政治を志した人たちが多いからだろう。この新人脈に注目が必要だ。

 首相はデニス・シュミハリ。ユダヤ人だ。
 国防相はオレクシー・レズニュク。弁護士出身。
 軍司令官で大将はオレクシー・ザルジニー
 外相はドミトロ・クレーバー、父親はアルメニア、カザフスタン大使を歴任。
 国家安全保障局長官は、オレクシー・ダニーロフ(ルハンスク前知事)
大統領府長官はアンドリー・イニルマーク(弁護士、TVプロヂュサー)

閣僚クラスで、現時点でユダヤ人と分かっているのは首相と大統領顧問のアレクシー・アレストビッチだけだが、ほかも名前と履歴などからユダヤ人が多いと推定される。

      □○◎○☆み○◎○や○☆△○ざ☆○◎☆◎き◎△☆□   』

【詳しく】“ロシア人は強くて正しい”って?プーチン哲学とは

【詳しく】“ロシア人は強くて正しい”って?プーチン哲学とは
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220512/k10013620241000.html

『ロシアのプーチン大統領は正常な判断力を失ってしまったのか。
それとも、考え抜いた末の合理的な判断なのか。

ウクライナ侵攻に至る「なぜ」を、プーチン氏が20年以上にわたってロシアのトップとして紡いできた5つの言葉から読み解きます。

1.“ウクライナが国家でさえないことを分かっていないのか?”

<2008年4月/アメリカ・ブッシュ大統領に対する発言>

この言葉は、プーチン氏がアメリカのブッシュ大統領(当時)に伝えたとされています。この発言に続いてプーチン氏は「(ウクライナの領土の重要な部分は)私たちからの贈り物なのだ」と力説したといいます。

ウクライナとグルジア(当時)のNATO=北大西洋条約機構の加盟に強く反対していたのは、当時から変わっていません。

ロシアの有力紙が関係者の話として報じた記事は、「グルジアのことは冷静に話していたが、ウクライナのことになると正気でなくなった」というプーチン氏の姿を描写しています。そして「ウクライナがNATOに加盟したらもはやその国は存在しなくなるだろう」と示唆したといいます。

今のロシアの行動と一致します。

2.“後退できないラインまで追いやられている”

<2014年4月/国民との対話イベントでの発言>

このイベントでプーチン氏は、西側との関係改善と共存を望んでいるとする一方で、ロシア側が一方的に譲歩を強いられていると主張。具体的に何を譲歩しているのか言及はしませんでしたが、“NATOの東方拡大”が含まれていると考えて間違いはないでしょう。

今でこそ多くの人が知るキーワードですが、この15年ほどの間、プーチン氏はあらゆる機会でこの件に触れ、欧米批判を続けてきました。

冷戦がソビエトの崩壊という形で終わり、“敗者”としての烙印を押されたという屈辱感。そして傷口に塩を塗るように“勝者”としてふるまうアメリカへの反発。

負の感情がプーチン氏の中で入り交じっていたことは、この発言の直前の「(ロシアは)あちこちで譲歩し、沈黙し、何も気づかないふりをしなければならなくなっている」という言葉からも読み取れます。

3.“裏切り行為は、地球上で最も重い犯罪だ”

<2019年6月/イギリスメディアのインタビューで発言>

ソビエトのKGB=国家保安委員会の情報工作員だったプーチン氏の「哲学」とも言える言葉です。この時の質問は、前の年にイギリス南部でロシアの元スパイの男性が神経剤のノビチョクを使って狙われた事件に関連したものでした。

プーチン氏は「裏切り者は厳重に処罰されなければならない」と続け、ロシアメディアでも大きく報じられました。

今もプーチン氏は、軍事侵攻に反対するロシア人を「裏切り者」と呼び、「本物のロシア人であれば、真の愛国者と裏切り者を、口の中に入ったハエを吐き出すように区別できるだろう」と表現しています。

何より、プーチン氏にとって最大の“裏切り者”は、ウクライナでしょう。

かつては同じソビエトを構成し、特別な絆で結ばれていたはずのウクライナが、欧米志向を徐々に強め、ロシアに対抗するため軍事的な支援まで受け続けている姿は“地球上で最も重い犯罪”。

“厳重に処罰されなければならない”と独善的に考えているのでしょう。

4.“ロシア人は強く正しい ロシア人が正しいと感じたら無敵”

<2014年11月/国営メディアインタビューに対し発言>

プーチン氏は、この年に強行したクリミア併合について「戦略的な判断だった」と改めて正当化した上で、この発言を続けました。さらに「ロシア人が“正しい”と感じたとき、無敵になるのだ」とも発言しています。

かつてアメリカと世界を二分したソビエトが崩壊したことで、国民はアイデンティティを喪失しました。

プーチン氏にとっては、人々を束ねるための新たな思想が必要でした。

「ロシアはヨーロッパでもアジアでもない、ユーラシアに存在する唯一無二の存在だ」「ソビエトは、ナチス・ドイツに打ち勝った戦勝国で特別な存在である」。

プーチン氏は国民に愛国心を植え付け、鼓舞し続けてきました。

確かにロシアの人たちは、強い愛国心を持ち、民族の誇りも感じています。

ただ、この発言から見えるのは、自分たちが正しいと判断さえすれば、国際社会のルールなど無視して何をしても構わないという身勝手な考えです。

  1. “王座と処刑台は常に隣り合わせ”

<2018年3月/国営メディアのドキュメンタリー番組での発言>

このインタビューの中でプーチン氏は、祖国に奉仕することに憧れてKGBに勤め始めたことを明らかにし、「1人の人間や小さなグループが、何千人もの人々の運命や、戦いの行方を左右することもある」とその仕事の魅力を語りました。

そして「王座と処刑台」発言の意味について、プーチン氏は「人生はどう終わるのかが問題ではない。どう生きるかが大事なのだ」と説明しました。

大統領職を「王座」と表現する尊大さの一方で、その横に常にあるとした「処刑台」という表現は何を意図していたのでしょうか。

「王座」からいつ引きずり下ろされるかも知れないという「恐怖」や「覚悟」かもしれません。

プーチン氏が「王座」の上から出し続ける指示で、今も多くの人が命を落としています。
ここに挙げた5つのどの言葉より重い、”戦争を終わらせる発言”は、いつになったら聞くことができるのでしょうか。

(国際部デスク 松尾 寛)

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【詳しく】プーチン大統領なぜ執着?キエフ・ルーシの歴史とは
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220514/k10013622761000.html

『ウクライナ侵攻に踏み切ったプーチン大統領。ウクライナを“兄弟国家”と呼び「強い執着」があると指摘されています。そのよりどころとするのが、1000年前にあった「キエフ・ルーシ」と呼ばれる国の存在です。

いったい、どういう国なのか。元駐ウクライナ大使で『物語 ウクライナの歴史』の著者の黒川祐次さんに、キエフ・ルーシの歴史について話を聞きました。

プーチン大統領がこだわる「キエフ・ルーシ」とは?

《以下、黒川さん》

キエフ・ルーシは9世紀末から13世紀にかけて、今のウクライナやロシアなどにまたがる地域にあった国です。

「キエフ大公」と呼ばれる君主が支配し、最盛期はヨーロッパ最大の版図を誇った大国だったと言われています。

その中心的な都市だったのが、今のウクライナの首都キーウ(キエフ)でした。

そもそもキエフ・ルーシの成り立ちは?

キエフ・ルーシを形成したのは東スラブ人です。スラブ人は、ラテン、ゲルマンとともにヨーロッパを構成する三大民族のうちの1つですね。

12世紀に編さんされた『原初年代記』という歴史書の伝説によると、東スラブ人のポリャーネ氏族の3兄弟、キー、シチェク、ホリフとその妹が町をつくって、一番上の兄の名を取ってキーウ(キエフ)と名付けたそうです。これが今のウクライナの首都にもなっているキーウの始まりだとされています。

その後、実質的に国を作ったのは北欧から海を渡ってきたバイキングで、オレフ(ロシア語名オレーグ)という人物が創始者でした。882年にキエフ公となったオレフは首都をキーウに移しキエフ・ルーシを建国しました。

栄えたのはいつ?

最盛期を築いたとされるのは2人の君主です。

まず、キエフ大公の「ヴォロディーミル」(在位978~1015・ロシア語名ウラジーミル)は、公国をヨーロッパ最大の版図を持つ国にまで拡大したとされています。キリスト教を国教化したことから「聖公」とも呼ばれるほどです。

また、ヴォロディーミルの息子の「ヤロスラフ」(在位1019~1054)は内政や外交に優れた才能を発揮し「賢公」とも呼ばれた存在です。現在は世界文化遺産にも登録されている聖ソフィア大聖堂を建設しました。

どうして栄えたの?

キエフ・ルーシがヨーロッパ有数の大国となったのは、活発な貿易と商業の発達が関係しています。中世のヨーロッパは圧倒的に農村社会で、王侯や貴族たちは商業を低くみていたのに対し、キエフ・ルーシは商業を重視して富を得ていたと考えられます。

例えば、12世紀までにフランスに運ばれた絹織物は「ルーシ物」と呼ばれるほどで、貿易が盛んでした。これに伴い都市も発達し、領土の全人口の13%から15%ほどが都市に住んでいたと推計されています。

なぜキリスト教を取り入れたの?

かつてキエフ・ルーシはアニミズム的な多神教が支配的だったとされています。しかし、国の規模が大きくなる中、キエフ大公の統治を正当化し結束を強めるのに、一神教は都合がよかったのでしょう。

また、キリスト教国となることで、ビザンツ帝国を中心とした「文明国の共同体」の一員に認められ、ヨーロッパ各国との婚姻政策などの外交面でも役に立っていたと考えられます。

“栄光の国”がなぜ滅んだ?

最終的な要因は、13世紀にユーラシア大陸で猛威を振るっていたモンゴルの侵攻だと言われています。ただそれ以前にキエフ・ルーシは衰退過程に入っていたようです。

まず国の内部で制度が変わり、各地を治める地方の貴族が力を持ち始め、バラバラに動くようになった結果、公国全体の君主「大公」の力は低下していったと考えられます。

またヨーロッパやその周辺の勢力図が外部要因によって変化すると、キーウを通過する交易路の重要性が低下し、国の繁栄をもたらしていた経済の停滞を招いたと推察されます。
モンゴルの侵攻で1240年に首都キーウが陥落すると、キエフ・ルーシは事実上崩壊します。オレフが建国してからおよそ350年後のことでした。

モスクワが力を持ったのはなぜ?

これとは対照的にモスクワは森林地帯で、交易による収入もあまり見込めないことから、比較的モンゴル軍の攻撃を受けにくかったことなどもあり、力を蓄えていきました。

こうしたことがキーウとモスクワの力関係が逆転するターニングポイントになったと考えられます。

キエフ・ルーシは崩壊後はどうなったの?

ウクライナ側がキエフ・ルーシ崩壊後の継承国としているのが「ハーリチ・ヴォルイニ公国」です。

この公国は、キエフ・ルーシ崩壊後も1世紀にわたって現在のウクライナの西部で栄え、今の西部の主要都市のリビウもこのときに町が建設されています。

ウクライナの歴史家の1人は、ハーリチ・ヴォルイニ公国が今のウクライナの人口の9割が住む地域を支配していたとして「最初のウクライナ国家」だとしています。

《ここまでが黒川さんの話です》

プーチン大統領の考えは

では、こうしたキエフ・ルーシの歴史をプーチン大統領はどう考えているのでしょうか?
去年7月の論文では、ロシアとウクライナがともにキエフ・ルーシにルーツを持つとして両国は「兄弟」であり「一つの民族」と主張しています。

この中でプーチン大統領はロシアとウクライナは「精神的、人間的、文化的なつながりは数百年にわたって築き上げられた」として、両国民の一体性を強調しています。その結び付きの始まりこそキエフ・ルーシであり、「ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人は皆、かつてヨーロッパ最大の国家であった古代ルーシの子孫」と述べています。

また論文では、キエフ・ルーシは滅亡後、モスクワを中心とする東側とポーランド・リトアニアの支配下に置かれた西側に分かれたものの、17世紀に「モスクワが再統一の中心となって国家としての古代ルーシの伝統を受け継ぐことを定めた」とロシア側の正統性を強調しています。

「キエフ・ルーシは誰のものか」

一方のウクライナ側はキエフ・ルーシをどう考えているのでしょうか?

黒川さんはこう説明しています。

「さきほど指摘したように、キエフ・ルーシは滅亡後、西ウクライナに栄えたハーリチ・ヴォルイニ公国に継承されたという考えがあります。『最初のウクライナ国家』とも呼ばれるこの公国の系譜が現在のウクライナまでつながるとされています。そのため、ウクライナ側は“自分たちこそキエフ・ルーシの正統な継承者だ”と主張するのです」

「したがって、ウクライナはロシアの一地方などではなく、1000年以上前からの栄光の歴史を引き継ぐ国だと。一方のモスクワはこそキエフ・ルーシの一地方(東北地方)に過ぎず、民族も言語も違い、ロシア帝国やソビエト連邦に至っては非常に強い中央集権制でそのシステムは全く異なる、というのがウクライナ側の歴史の考え方ですね」

プーチン大統領の主張には、他の歴史研究者からも疑問の声もあがっています。

ウクライナ史に詳しい神戸学院大学の岡部芳彦教授は「ウクライナ側から見れば、ロシアのキエフ・ルーシ起源説は16世紀のモスクワ・ツァーリ国のイヴァン雷帝の頃に唱えられ始めたことで、その論理はいわば“後付け”です。ウクライナの歴史家が指摘するように、ロシアの起源はキエフ・ルーシまでさかのぼるよりも、むしろ13世紀後半以降に成立したモスクワ大公国が拡大してできたと思われる」と説明します。

そのうえで岡部教授は「ウクライナからみると“ロシアがルーシの名前を盗んだ”というんです。プーチン大統領は“キエフ・ルーシは自分たちの歴史だから自分たちのものだ、だから起源を取り返せ”というわけですが、それは起源の論争が侵略と拡大の理屈に使われているわけです。ウクライナ側からすると全く逆の解釈ですので、当然受け入れられないということになります」と話しています。

「キエフ・ルーシは誰のものか」

1000年前の国に起源を求める歴史論争は、今もまだ現実の政治の中に影を落としているようです。

(ウクライナの歴史については【詳しく】のシリーズで数回にわたってお伝えする予定です。次回は「コサック」を取り上げます。)』

尖閣沖 中国海警局の船4隻 日本の領海に侵入 海保が警告続ける

尖閣沖 中国海警局の船4隻 日本の領海に侵入 海保が警告続ける
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220514/k10013626021000.html

『 14日午前、沖縄県の尖閣諸島の沖合で中国海警局の船4隻が日本の領海に侵入し、海上保安本部は直ちに領海から出るよう警告を続けています。

第11管区海上保安本部によりますと、中国海警局の船4隻が14日午前10時30分ごろから45分ごろまでに相次いで尖閣諸島の沖合で日本の領海に侵入しました。

午前10時50分現在、4隻は南小島の沖合の日本の領海内を航行しているということです。

海上保安本部は直ちに領海から出るよう警告を続けています。』

「勝利」の道筋見えぬロシア:無謀な戦争で国際的な立場が失墜

「勝利」の道筋見えぬロシア:無謀な戦争で国際的な立場が失墜
政治・外交 2022.05.12
茂田 宏 【Profile】
https://www.nippon.com/ja/in-depth/a08104/

『 国連憲章に背くロシアの武力攻撃

ウクライナ戦争は国際法上違法な戦争であり、プーチンの暴挙である。このことをまずはっきりと認識する必要がある。

国連憲章は、第2条4項で「すべての加盟国は…武力の行使を、いかなる国の領土保全または政治的独立に対するものも、…慎まなければならない」と規定している。国連憲章は、武力攻撃があった際の自衛権の行使、国連安保理が許可した武力行使は許している。ロシアの今回の武力行使は自衛権の行使ではなく、国連安保理の決定に基づくものではない。

ロシアのウクライナ侵攻はルールに基づく国際秩序に反するという見解があるが、そうではなく、国連憲章に真っ向から反する。ここに中立や棄権の余地はない。

あり得ないウクライナのNATO加盟

上記の法的評価とは別に、ロシアの行動は政治的には正統性があるのではないかとの議論がある。よく言われるのはNATO拡大がロシアの安全保障上の懸念を深めたからとの議論である。

ミアシヤイマー・シカゴ大学教授は、NATO拡大を進めた米国などに今回の戦争の主たる責任があると言っている。この発言は全くの間違いである。

まず第1に、NATOはその第5条で「加盟国の一カ国が攻撃された場合、全加盟国がその国を防衛する」と決めてある防衛同盟である。それが拡大したからといって、NATO加盟国のどこにも攻め入る気のないロシアが安全保障上の懸念を持つことはない。

第2に、ウクライナのNATO加盟は現状では問題にならない。ロシアは2014年、ウクライナを攻撃してクリミアを併合し、東部ウクライナに二つの疑似「人民共和国」を作った。ウクライナは現に攻撃されている国であり、ウクライナの加盟を認めた途端、NATOはロシアとの戦争にならざるを得ない。このような状況では、加盟国の全会一致の承認は得られない。

ウクライナのNATO加盟を阻止するために、ロシアは今回の戦争を続けているわけではない。すでにウクライナはロシアが要求しているNATO不加盟、中立化は受け入れるとしている。それでも戦争が継続しているのである。

米のダルダー元NATO大使は、逆にNATO拡大が不十分であったことが今次戦争の原因であると指摘しているが、その通りである。2008年のブカレストでのNATO首脳会議で、ウクライナとジョージアの加盟が議論された。その直後にウクライナのNATO加盟が認められていたならば、2014年のクリミア併合も、東部ウクライナの親ロシアの「人民共和国」も、今次のウクライナ戦争もなかっただろう。

今回の戦争を契機に、中立国であったスウェーデンとフィンランドはNATO加盟を検討している。欧州の平和と安全、自国の安全はNATOの拡大によって保たれるということを念頭においた対応である。正しい判断であろう。

目的は「全土のロシア吸収」

今次戦争(ロシアは「特別軍事作戦」と称しており、戦争ではないとし、宣戦布告もしていない)でロシアはウクライナに中立化、非武装化、非ナチ化を要求している。中立化については、上に述べた通りであるが、戦争の相手側に非武装化を求めるのは降伏を求めることで、ウクライナが受け入れるはずはない。非ナチ化については、ゼレンスキー大統領はユダヤ人であり、ユダヤ人虐殺をしたヒトラーに何の共感も持っていないだろう。ウクライナ人はホロコーストを自分の経験として記憶している民族である。

プーチンは何のために今度の戦争をしているのか。プーチンは2005年4月25日、ロシア連邦連邦議会への年次教書で、ソ連邦の崩壊を「20世紀最大の地政的惨事」と述べており、ベラルーシとウクライナとロシアの三国だけの「ミニ・ソ連邦」であってもその再興を夢見ている可能性が高い。プーチンは昨年7月に発表した論文で、ウクライナ人はロシア人と同じ民族であると主張し、ウクライナが独自の民族であること、ウクライナが国家として存在することを否定している。ウクライナ全土をロシアに吸収合併することが当初のプーチンの戦争目的であったと言ってよい。プーチンのNATOへの被害妄想、旧ソ連の復活願望という誇大妄想が今の戦争の原因である。

東部、南部でも「圧倒」できず

2月24日の戦争開始後、ロシアは短期間でウクライナの首都キーウを占領し、ゼレンスキー大統領を拘束または殺害し、代わりに親ロシアの傀儡(かいらい)政権を作ることを狙っていたと思われる。しかし、その第1段階である首都攻撃はロシア側の敗北に終わった。兵站の失敗、ロシア兵の士気の低さ、ウクライナ軍の戦闘能力などが理由である。

それでロシアは首都周辺からは兵を引き、今は東部ドンバスと南部を制圧することに重点をおいている。

5月9日の第2次大戦の対独戦勝記念日に、プーチンはドンバスでの戦果を誇る演説をすると言われていたが、そうではなかった。演説はNATOがロシアの安全保障についての提案を拒否したので、ウクライナ「戦争」は避けられなかったと正当化し、ドンバスではロシア軍が祖国を防衛するために戦っていると述べるにとどまった。一部で取りざたされたロシアでの総動員を可能にする戦争宣言もなされなかった。他方、停戦の可能性のほのめかしもなかった。

ロシアが今後、ウクライナのドンバスと南部を早期に制圧する状況は考え難い。 理由はウクライナ軍が高い士気を維持し、NATO諸国からの武器支援も重火器を含め強化されていること、またロシア軍の士気は低く、兵力も不足気味であるからである。

南部については、特に黒海艦隊の旗艦「モスクワ」がウクライナ軍のネプチューン対艦ミサイルで攻撃を受け沈没したことで、オデッサ上陸作戦が不可能になった。黒海にいるロシアの大型艦は20隻もないが、ネプチューンの射程外、沿岸から150キロ以上離れている。こういう状況でオデッサ周辺への上陸作戦は困難である。南部にいるロシア軍が西に進み、 ムィコライウを掌握し、陸路でオデッサに向かうのには多大の困難が予想される。

「勝利」が見通せないロシア

ウクライナ戦争のもう一つの特徴はロシアがウクライナの民間施設を戦時国際法に違反して攻撃していることである。ロシア軍は戦争犯罪を犯している。ブチャでの民間人虐殺はベトナム戦争でのソンミ村虐殺のように戦争の狂気ではなく、今のロシアの戦争のやり方に内在している。

この戦争の帰趨(きすう)はどうなるだろうか。戦争継続中にその結果を見通すのは難しい。しかし、あえて言えばロシアが勝利することは見通しがたい。

戦争での勝利はその目的を達成した時に得られる。ロシアの当初の戦争目的はウクライナを国家としてなきものにし、ロシアに吸収合併することであった。この目的は首都が陥落せず、西部ウクライナは時折ミサイル攻撃の対象になっても、ウクライナは生き残ると見込まれるので、達成されないだろう。

ウクライナの戦争目的は防衛であり、国家の生き残りである。生き残れば、大きな被害を受けつつも戦争目的を達成し、勝利したということになるだろう。

戦争ではその戦略目標を「勝利にするか、敗北しないことにするか」であるが、ロシアとウクライナの間にはその戦略目標に非対称性がある。

国際的信用も経済も「大逆風」

この戦争はロシアの国際的な立場を大きく損なう結果をもたらすだろう。

プーチンは西側諸国の「経済電撃戦」は失敗し、ロシア経済は安定を取り戻したと主張しているが、ロシア中央銀行のナビウリナ総裁はこれからの経済的困難について懸念を表明している。ルーブルの下落は資本規制などで元に戻ったが、今は金融面よりも、実体経済に問題が出てきている。これまで輸入していた部品が入ってこないなど、サプライチェーン上の問題が出てきている。IMF(国際通貨基金)は、今年のロシアのGDPはマイナス8.5%になると予測している。民間では二桁のマイナスになるとの予測も多い。この戦争の前にも、ロシアのGDPはIMFの統計では韓国以下であった。

国際社会でのロシアの孤立は、ウクライナ侵攻についての国連総会決議、国連人権理事会からのロシアの追放、ウクライナへの武器支援を話し合う米主催会合に40カ国以上が参加したことからも明らかである。

英国、フランスが1956年のスエズ動乱でその国際的立場を大きく害したと同じように、プーチンはこの無謀な戦争でロシアの国際的立場を大きく損なう可能性が大きい。

こういう戦略的大失敗をしたプーチンがこれからもロシアの指導者にとどまりうるのか。これはロシア人が決める問題である。今のところロシア国内でのプーチン支持率は高止まりしていると報じられているが、プロパガンダと弾圧のもとでの支持率は砂上の楼閣である場合が多い。

バナー写真:軍事パレード終了後、「無名戦士の墓」の献花式に臨むロシアのプーチン大統領=2022年5月9日、ロシア・モスクワ(AFP=時事)』

ウクライナ侵攻の背景にあるロシアと中・東欧・バルト諸国の「記憶をめぐる戦争」

ウクライナ侵攻の背景にある
ロシアと中・東欧・バルト諸国の「記憶をめぐる戦争」
【橘玲の日々刻々】
https://diamond.jp/articles/-/303079

 ※ 『第二次世界大戦で米英仏の連合軍とソ連が、ドイツとイタリア・日本のファシズムを打ち倒したというのが、戦後の国際社会を支配した「正統な歴史観」だ。(ドイツではなく)ナチズムを「絶対悪」とすることは、西ヨーロッパ諸国にとっては自国内のナチ協力者を不問に付し、ソ連にとってはスターリンが行なった多くの暴虐行為を隠蔽できるため、すべての当事者にとって都合がよかった。

 西側とソ連は冷戦下で対立していたが、「ともにファシズムと戦った」という暗黙の前提を共有していた。だがこの「公式」の歴史観は、ソ連によって独立を奪われたり、衛星国として支配されていた国にとって、とうてい受け入れがたいものだった。

 ソ連が解体して冷戦が終わり、こうした国々が独立すると、「歴史の修正」を突きつけられたロシアだけでなく、中・東欧へと「ヨーロッパ」の境界を拡張したEUにとっても、新たな加盟国の「異議申し立て」をどのように取り扱うかが重大な問題になった。これが「記憶をめぐる戦争」の基本的な構図だ。』…。

 ※ これは、非常に鋭いところを「突いている」…。

 ※ さらには、日本国のナラティブ(神話)の文脈では、「大東亜共栄圏の大義」も語られるんで、もっと「複雑化」する…。

 ※ こないだの、ゼレンスキー政権から発信された「ヒトラー、ムッソリーニ、昭和天皇」三者の「ファシズム」三巨頭の肖像画像問題なんかも、その延長線上にある…。

『2014年にハンガリーのブダペストを訪れたとき、歴史展が行なわれていたらしく、街じゅうで「Double Occupation(二重占領)」と書かれたポスターを見かけた。最初はなんのことかわからなかったのだが、その後、ハンガリーの現代史を展示する「恐怖の館(House of Terror)」博物館を訪れて、これが20世紀におけるファシズム(ナチスドイツの傀儡政権である矢十字党=国民統一政府)と、その後の共産主義支配(ソ連の衛星国家)という「民族の悲劇」を表わす言葉だと知った。

左がファシズム、右が共産主義支配を表わす。2014年ハンガリー・ブダペスト (Photo:@Alt Invest Com)

 5月9日の(第二次世界大戦)戦勝記念日の演説で、ロシアのプーチン大統領は、「世界からナチスらの居場所をなくすために戦っている」とウクライナ侵攻を正当化した。ところがそのプーチン政権を、歴史家ティモシー・スナイダーは「ポストモダンのファシズム」だとする。

[参考記事]
●ウクライナ侵攻の背景にあるプーチンの「ロシア・ファシズム」思想。ロシアは巨大な「カルト国家」だった

 だとしたら、いったいどちらが「ファシズム」なのだろうか。マルレーヌ・ラリュエルの『ファシズムとロシア』(翻訳:浜 由樹子/東京堂出版)はまさにこの問題を扱っている。

 ラリュエルはフランス出身の歴史学者で、現在はアメリカのジョージ・ワシントン大学ヨーロッパ・ロシア・ユーラシア研究所長。ロシアおよび旧ソ連地域のイデオロギーとナショナリズムが専門だ。

 ただし、本書の主題である「ロシアとファシズム」を論じるためには、その前提として、日本ではあまり知られていない、ロシアと中・東欧やバルト諸国の「記憶をめぐる戦争」について、その概略だけでも理解しておく必要がある。なぜなら、ロシアのウクライナ侵攻はそれ以前の「歴史戦」の延長だから。なお、本稿はロシアの侵略行為に何らかの正当性があると主張するものではない。

中・東欧とバルト諸国が「ヨーロッパ」の一員になったことで「記憶をめぐる戦争」が起こった

 2020年1月、ウクライナのゼレンスキー大統領は、アウシュヴィッツ強制収容所解放から75周年の記念行事を受けて、「ポーランドとポーランド国民は、全体主義体制の共謀を最初に体感した。これが第二次世界大戦の勃発につながり、ナチが破壊的なホロコーストを実行することを可能にしたのである」と述べた。

「全体主義体制の共謀」という表現で、ナチズムとスターリニズムを同列に扱うこの発言は、「ロシア国民に大変なショックを与えた」。プーチンは、「ロシアとその前身であるソ連邦に(間接的であっても)ホロコーストの責任を帰そうとする試みを、激しく非難した」とラリュエルは書く。

 ゴルバチョフ政権でソ連が解体をはじめると、1988年から90年にかけてエストニア、ラトヴィア、リトアニアのバルト三国とジョージアが次々と独立を宣言し、91年12月には(ソ連から独立したロシア共和国の)ボリス・エリツィン大統領がウクライナとベラルーシの独立を認め、ソ連に代わる独立国家共同体(CIS)を創設した。

 ソ連が解体すると同時に、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーなどの中欧諸国が「民主化」を達成してソ連の影響から離脱した。これらの国々は、ウクライナとベラルーシを除いてEUとNATOに加盟し、「ヨーロッパ」の一員になった。

 この大きな動乱が一段落した2000年代はじめから、旧ソ連圏の国のあいだで、これまでとは異なる歴史の語り(ナラティブ)が登場した。それに対してロシアは、これを「歴史修正主義」と見なして強く批判するようになる。

 EU創設によって、第二次世界大戦に関していえば、西ヨーロッパは共通の歴史観の構築に成功した。戦後の経済復興(アメリカの援助)と冷戦(ソ連の核の恐怖)という現実の下、フランスと(西)ドイツが勢力圏を競ったり、戦勝国と敗戦国が賠償問題で争う余地がなくなったからだ。イギリスを含め、西ヨーロッパのひとたちは、ソ連の脅威に対抗するには団結するほかないことを当然の前提として受け入れた。こうして、ユダヤ人へのホロコーストを除いて、さまざまな歴史的対立は解決済みとされた。――その後、2014年のユーロ危機のときにギリシアがドイツに対して第二次世界大戦の賠償を求めた。

 だがこの「平和」は、中・東欧諸国やバルト三国がEUに加入すると揺らぎはじめる。その事情を、ラリュエルはこう述べている(改行を加えた)。

 西欧諸国にとって終戦は、平和な戦後の再建設と30年間の実り多い経済成長に道を拓いた。中・東欧諸国にとっては、強制的な社会主義ブロックへの編入の始まりであり、バルト三国にとっては国家の独立を失うことをも意味した。

 ヨーロッパの枠組みの「外側」に置かれた40年間を経験したこれらの国々は、1989年のベルリンの壁崩壊と、その後の2000年代のEUとNATOへの加盟をもって初めて「正常」への回帰を体感した。

 だから、中・東欧諸国がEUに入ると、その10年間の後半にロシアとの記憶をめぐる戦争がエスカレートしたのは偶然ではない。彼らにとっては、20世紀のナショナル・ヒストリー、特に第二次世界大戦史を書き直すことは、「ヨーロッパの一員としての運命」を再確認し(略)、「ヨーロッパの記憶を助ける地図」に影響を及ぼすことと、密接につながっている。

 第二次世界大戦で米英仏の連合軍とソ連が、ドイツとイタリア・日本のファシズムを打ち倒したというのが、戦後の国際社会を支配した「正統な歴史観」だ。(ドイツではなく)ナチズムを「絶対悪」とすることは、西ヨーロッパ諸国にとっては自国内のナチ協力者を不問に付し、ソ連にとってはスターリンが行なった多くの暴虐行為を隠蔽できるため、すべての当事者にとって都合がよかった。

 西側とソ連は冷戦下で対立していたが、「ともにファシズムと戦った」という暗黙の前提を共有していた。だがこの「公式」の歴史観は、ソ連によって独立を奪われたり、衛星国として支配されていた国にとって、とうてい受け入れがたいものだった。

 ソ連が解体して冷戦が終わり、こうした国々が独立すると、「歴史の修正」を突きつけられたロシアだけでなく、中・東欧へと「ヨーロッパ」の境界を拡張したEUにとっても、新たな加盟国の「異議申し立て」をどのように取り扱うかが重大な問題になった。これが「記憶をめぐる戦争」の基本的な構図だ。』